早期リタイアとは、定年前に仕事を退職(引退)すること。早期に労働から解放される新しい生き方として、若い世代を中心に注目が集まっています。しかし、実現するには計画性をもって確実にステップを踏んで行くことが大切です。
この記事では、早期リタイアを目指す方が知っておくべき情報を解説します。
早期リタイアまでの流れ
退職前の早期リタイアといっても、具体的に「いつ」「どのタイミング」で実行するかは自由です。とはいえ、思いつきで早期リタイアを実行しても成功はむずかしいでしょう。
早ければ40代、堅実に行うなら50代など、人それぞれ考え方はさまざまです。現在、日本の雇用制度では定年が60歳から65歳へと引き上げられつつあることを考えると、60歳でも早期リタイアといえるかもしれません。
自分に適したタイミングを知るには、まず早期リタイアまでの流れを押さえておくことが大切です。ここでは、早期リタイアの実現前後の流れをお伝えします。
早期リタイア前
早期リタイアの考え方として、完全に職から離れるリタイアと、必要最低限の仕事を続けるセミリタイアのふたつがあります。早期リタイアは、いままでのように安定した収入を得られなくなるため、リタイア後にかかる生活費を準備しておくことが必要です。
そこで、早期リタイア後から平均余命までの年数を予測し、想定される生活のシミュレーションを行いましょう。
現在の貯金とリタイアまでに目標とする貯金額に加え、退職金や資産運用、年金などを含めたリタイア後も続く収入、そして生活費に娯楽費や臨時費を含めた出費をできるだけ正確に試算します。
このとき、希望するライフプランを送るために必要な支出を計算しましょう。貯金や収入が不十分であれば、早期リタイアは成立しません。そのため、もし収入に不安があるようなら、リタイア後も不労所得を得られるマンションや株式、FX、投資信託などの資産保有によって得られる収入の確保がおすすめです。
早期リタイア後
厚生労働省のデータによると、50歳時点での平均余命は男性で約33年、女性で約39年となっています(※)。仮に50歳で早期リタイアしたとすれば、平均30~40年、人によってはさらに多くの年数を働かずに過ごすことになります。
余暇が増えればそれだけ楽しみが増え、思わぬ出費も考えられます。また、年齢を重ねるうちに病気やケガの治療費がかさむことも考えられます。また、当てにしていた不労所得が思うように得られなくなるリスクもあります。
そこで、早期リタイア後に必要となるのが、定期的な収支バランスの見直しです。どれだけ計画的に早期リタイアしたとしても、どこかでズレが生じるでしょう。そのズレを早めに修正することが、早期リタイアを成功させるカギとなるのです。
早期リタイアに必要な貯金額と支出
早期リタイアを成功させる根拠となる貯金額やリタイア後の支出を把握していなければ、先述のライフシミュレーションや収支バランスの把握は正しく行うことができません。
ここでは、早期リタイアに必要とされる貯金額やリタイア後に生じる予想支出額について解説します。
【年代別】早期リタイアに必要な貯金額
早期リタイアを実施すれば、それ以降の出費は貯蓄や不労所得などで賄うことになります。そこでまず考慮すべきなのが、早期リタイア後に必要な貯金額です。
リタイアする年代によってその後の年数は異なります。そこで早期リタイアする年齢を35歳、45歳、55歳として貯金額のシミュレーションを行ってみましょう。
計算の前提として、総務省のデータ(※)より生活費は65歳までが年間360万円、65歳からは年間300万円とします。90歳までの寿命と仮定すると、35歳で早期リタイアした場合の必要な資金は1億8,300万円、45歳で1億4,700万円、55歳で1億1,100万円です。
この金額をみると早期リタイアの実現がシビアに感じられますが、勤務年数により受け取れる年金額を差し引くと実際に必要となる金額は軽減されます。
会社員が65歳で受給を開始するとした場合の年金予想額は、35歳で年間180万円を25年で4,500万円、45歳で5,000万円、55歳で5,600万円です。ちなみに、基礎年金80万円の2段階、厚生年金の平均標準報酬額30万円で計算しています。
たとえば、55歳の早期リタイアで必要な貯金額は、年金の受給額を差し引くと、実際には5,600万円ということになるのです。退職金に加え、不動産投資などの不労所得を追加すれば、不足額を補うことは十分現実的です。
※出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)」
早期リタイア後の支出を把握して収入源を確保する
出費を補うだけの収入源を確保できるかどうかで、早期リタイア後の生活は変わります。早期リタイアを目指す方のほとんどは、悠々自適な生活を夢見ていることでしょう。
ゆとりあるリタイア生活を送るためには、支出の把握と収入源の確保を具体的に計画することが大切です。
早期リタイア後の支出先ほどの計算根拠となった年間360万円(60歳まで)の生活費は、あくまでも総務省が公表する平均的なデータによるものです。人によってライフスタイルは違いますから、支出額も千差万別といえます。
そこで、自身が早期リタイアを行った際に実際にどれくらいの支出になるのか、ライフスタイルに見合ったリアルな数値で予測しておきます。
誰もが払う必要のある国民健康保険、所得税や住民税といった税金のほか、賃料や修繕費といった住宅費、旅行や趣味などの娯楽費、医療や介護の費用など、思いつくだけでもこれだけの支出が考えられます。
早期リタイア後の収入先述のとおり、早期リタイアしても60歳以降から年金を受け取ることができます。とはいえ、多くの識者から指摘されているとおり、年金額は老後の生活費を賄うには心もとない金額です。
さらに、もしリタイア後の収入が年金頼りなら、年金の受給開始までは無収入であることを考えると、苦しい生活になることが十分に考えられます。とはいえ、お金のためだからと現役のように働けば、早期リタイアの意味がなくなります。
そこで大切なのが、不動産や株式などへの投資など、年金以外にも頼れる不労所得の確保です。リスクの大きな一攫千金を狙うのではなく、会社員時代のように長期間安定して受け取れる不労所得をおすすめします。
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早期リタイアを上手に迎えるためのポイント
ここまで、早期リタイアする流れや必要な貯金額などをお伝えしてきました。これらの情報を踏まえて、理想的な早期リタイアを実現するためのポイントを2つにしぼって紹介します。
ライフプランを細かく立てる
先述の通り、55歳で早期リタイアするとしても5,600万円ほどの資金が必要です。実現不可能な金額ではないものの、定年まで、あるいは再雇用で定年後も働き続ける方に比べると、計画的な資金計画が必要です。
また、リタイア年齢や想定するライフスタイルで必要な貯金額が変わることも、早期リタイアを考えるときの重要なポイントです。まずは自分自身の生涯について、貯金額を含めて、細かくシミュレーションしてください。
その際は、年齢ごとに想定されるイベント(たとえば車の購入や子どもの結婚、海外旅行など)の費用予算に組み入れることも必要です。
新しい収入源を確保する
仕事のストレスから解放される大きなメリットの一方で、社会的信用が下がる、周囲との関わりが減って評価される機会を喪失するなどのデメリットもあることを覚えておかなければなりません。
ほかにも、貯金額を増やせないまま早期リタイアをすれば、生活水準を落とすことになるでしょう。また、一度早期リタイアしてしまうと、貯金額を増やすために働こうと考えても再就職はむずかしいといわれます。
こうしたデメリットを考慮したうえで、早期リタイアするときにはこれまでの定収に代わる新たな収入源の確保が欠かせません。不動産や株式への投資を中心とした不労所得など、仕事から離れる喜びをそのままに収入を得られる方法を手にしておくのがおすすめです。
まとめ
早期リタイアには、リタイア後の生活を支えるじゅうぶんな貯金額を準備しておくことが大切です。そのためにも、まずは細かなライフプランをもとに、不足する金額を補えるだけの収入源を確保するようにしておきましょう。