マンションが地震で倒壊する可能性は?オーナーが負う責任やリスク対策も解説

マンションが地震で倒壊する可能性はどれくらいあるのか不安に感じていないでしょうか。結論から言えば、1995年の阪神・淡路大震災や2016年の熊本地震から考察すると、マンションが地震で倒壊する可能性は高くありません

ただし、倒壊にまでは至らなくても何らかの被害が生じる可能性はあります。また、賃貸マンションのオーナーとしては、地震リスクに対して何らかの対策を講じておかなければなりません

そこでこの記事では、マンションが地震で倒壊してしまう可能性について事例をもとに紹介し、マンションオーナーが地震リスクに備える方法も紹介します。

ぜひ地震リスクへの対策を検討するうえでお役立てください。

目次

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マンションが地震で倒壊してしまう可能性は?事例をもとに紹介

マンションが地震で倒壊してしまう可能性は高くありません。しかし、倒壊してしまう可能性は建築年によって変わりますし、中高層マンションでは長周期地震動による影響があります。

それぞれ解説していきますので、確認しておきましょう。

倒壊する可能性は建築年によって変わる

マンションが倒壊する可能性は、建築年(耐震基準)によって変わります。

旧耐震基準 新耐震基準
阪神・淡路大震災(1995年) 14.0% 3.0%
熊本地震(2016年) 13.3% 0.0%

参照:一般財団法人 日本建築防災協会「耐震診断・耐震改修のススメ」(PDF)
参照:国土技術政策総合研究所「平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)」(PDF)

もっとも、熊本地震において新耐震基準なら100%無被害というわけではなく、約11%のRC造建物は中破以下の被害を受けたようです。

耐震基準とは?

耐震基準の違いによって倒壊する可能性に大きな差が出ていました。それでは、旧耐震基準と新耐震基準の違いは何でしょうか。

それぞれ簡潔にまとめると次のとおりです。新耐震基準では震度6でも耐えますが、旧耐震基準では耐えきれず倒壊してしまう可能性があります。

旧耐震基準と新耐震基準

  • 1981年5月以前は旧耐震基準であり、震度5程度の揺れで倒壊しないように設計されている
  • 1981年6月以後は新耐震基準であり、震度6~7程度の揺れで倒壊しないように設計されている

中高層マンションでは長周期地震動が起こる

倒壊には至らないものの、中高層マンションでは長周期地震動が問題になることがあります。

長周期地震動とは?

長周期地震動とは、ゆっくりとした大きな揺れが長く続く地震動のことです。東京や大阪、名古屋など堆積層の厚い平野部で大きな影響が出やすいと考えられており、さらに60m超えの超高層建築物への影響が大きいと言われています。

長周期地震動の他、中高層マンションではエレベーターの停止や給排水設備の損傷、高層階住民の孤立などが懸念されています。

参照:新宿区「中高層マンションの防災対策マニュアル」(PDF)

マンションの地震で入居者が被った損害をオーナーが賠償する責任はある?

特に1981年6月以降に適用される新耐震基準で建てられたマンションなら、マンションが倒壊する可能性は低いことを紹介してきました。しかし、倒壊にまで至らなくても、地震で入居者が損害を被ったらオーナーに賠償責任が生じるのかどうかが気になるところです。

結論から言えば、建物の設置や保存に瑕疵があった場合には損害賠償責任(土地工作物責任)を負う可能性があります。ここでいう瑕疵というのは、裁判例によると「通常有すべき安全性を有しているかどうか」が1つのポイントとされます。

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索「民法第717条」

マンションオーナーが地震リスクに備える方法

マンションオーナーは地震リスクを負っています。そのため、必ず地震リスクへの対策(備え)が必要となります。マンションオーナーが地震リスクに備える方法を紹介します。

マンションオーナーが地震リスクに備える方法

  • 1981年6月以降の新耐震基準に適合する物件を選ぶ
  • 旧耐震基準の物件なら耐震診断を実施する
  • 保有物件を複数の地域に分散してリスクを分散させる
  • 火災保険(地震保険)に加入してリスクを転嫁(分担)する

1981年6月以降の新耐震基準に適合する物件を選ぶ

前述のとおり、1981年6月以降の新耐震基準に適合する物件であれば、震度6~7程度の揺れで倒壊しないように設計されているため、倒壊する可能性を抑えられます。

地震を避けることはできませんが、地震によって倒壊してしまうリスクを抑えることは可能です。もっとも、国土交通省によると、住宅の耐震化率は平成30年時点で約87%、共同住宅は約94%とほとんどが耐震化物件となっています。

参照:国土交通省「住宅の耐震化率」(PDF)

旧耐震基準の物件なら耐震診断を実施する

旧耐震基準の物件をすでに保有している場合などは、耐震診断を実施して耐震改修が必要かどうかを判定しましょう。特に、L字型やコの字型、細長い形状のマンションは地震に弱いといわれています。

耐震診断とは?

耐震診断とは、旧耐震基準による建物の耐震性が十分かどうかを判断するものです。現地調査や図面から構造性能(Is値)を求め、目標耐震性能と比較して耐震改修が必要かどうかを判定します。

参照:一般財団法人 日本建築防災協会(指定耐震改修支援センター)「マンション(共同住宅)耐震診断・改修Q&A」(PDF)

なお、実際に耐震診断を行う際は一級建築士が所属する建築設計事務所に調査を依頼しますが、事前に市役所等で相談することも可能です。

費用助成制度が適用される場合もあるため、耐震診断を行う場合は事前に相談してみましょう。

保有物件を複数の地域に分散してリスクを分散させる

保有物件を複数の地域に分散すると、不動産ポートフォリオから見たリスクを低減することができます。空室リスクの低減にもつながりますが、維持管理の面で不都合が生じる場合もあることに注意が必要です。

火災保険(地震保険)に加入してリスクを転嫁(分担)する

地震保険に加入してリスクを転嫁(分担)する方法もあります。保険加入によって保険料を負担する必要はありますが、実際に地震が発生したときには保険金によって経済的損失を抑えることが可能です。

損害の程度 保険金 状態
全損 100% 主要構造部の損害額が建物時価の50%以上
または焼失・流失した部分の床面積が70%以上
大半損 60% 主要構造部の損害額が建物時価の40%以上50%未満
または焼失・流失した部分の床面積が50%以上70%未満
小半損 30% 主要構造部の損害額が建物時価の20%以上40%未満
または焼失・流失した部分の床面積が20%以上50%未満
一部損 5% 主要構造部の損害額が建物時価の3%以上20%未満
または床上浸水(または45cm超えの浸水)

なお、地震保険は必ず火災保険とあわせて契約しなければなりません。地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30~50%の範囲内かつ5,000万円(居住用建物)が限度です。

ちなみに、地震保険は店舗や事務所のみに使用されている建物は対象外とされています。

参考:マンションオーナー向けの主な保険特約

地震と深い関係にあるわけではありませんが、マンションオーナー向けに次のような保険特約があるのでご紹介します。

マンションオーナー向けの主な保険特約

  • 家賃収入補償特約:火災や床上浸水によって家賃収入がなくなった場合の補償
  • 家主費用補償特約:死亡事故が発生した場合の家賃損失や復旧のための費用等の補償
  • 建物管理賠償責任補償特約:建物の偶発的な事故により損害賠償責任を負った場合の補償

まとめ:マンションが地震で倒壊する可能性は高くないがリスク対策を検討しましょう

マンションが地震で倒壊する可能性は高くないものの、地震リスクへの対策は必須です。この記事では、新耐震基準に適合している物件を選ぶことや、旧耐震基準なら耐震診断を検討すること、保有不動産の地域を分散させること、地震保険に加入することなどリスクへの対策を紹介しました。

この記事で紹介したリスク対策を参考にしながら、地震への備えを検討してみてください。

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