ワンルーム投資で1戸目の運用が軌道に乗ると、2戸目、3戸目と物件を増やして家賃収入を伸ばしたいと考える人は少なくありません。ただし複数所有は収入が増える一方で借入も同じだけ膨らむため、買い増すタイミングと融資の枠、物件の組み合わせを誤ると、1戸目の利益まで失う結果になります。
ワンルーム投資で複数所有を考えるときは、次の4点を押さえておくと判断を誤りません。
- 2戸目を買ってよい状態かどうかを判断する基準
- 年収に対してどこまで融資を受けられるか
- 何戸から確定申告の扱いが変わるか
- エリアと築年数をどう組み合わせるか
記事では複数所有のメリットとリスクを整理したうえで、2戸目を買うタイミングと融資の考え方、審査で求められる書類を具体的に示します。10室以上で事業的規模と認められる基準や、同時購入で他の借入を申告しないことの危険性まで解説します。


ワンルーム投資で複数所有するメリット
ワンルームを複数持つ最大の利点は、1戸あたりの小さな利益を積み重ねて収入と資産を増やせることと、空室の影響を分散できることです。物件ごとに入居者の入れ替わる時期が異なるため、1戸が空室になっても他の物件の家賃で返済を支えられるようになります。
複数所有のメリットを、1戸だけ持つ場合と比べて整理すると次のとおりです。
| 項目 | 1戸だけの場合 | 複数所有の場合 |
|---|---|---|
| 家賃収入 | 1戸分に限られる | 戸数に比例して増える |
| 空室の影響 | 家賃収入がゼロになる | 他の物件の家賃で補える |
| 相続税の評価 | 1戸分の評価減 | 戸数分の評価減が重なる |
| 出口の選択肢 | 売るか持つかの二択 | 1戸を売って残りを完済するなど組み合わせられる |
家賃収入と資産が戸数に比例して増える
ワンルーム1戸から得られる手取りは月数千円から1万円程度にとどまりますが、戸数を増やせば同じ構造の収益が戸数の分だけ積み上がります。月5,000円の黒字が出る物件を3戸持てば年間18万円の手取りになり、ローンの完済が進むにつれて返済額の分まで手取りが増えていきます。
ローンで購入した物件は返済が進むほど残債が減り、家賃から返した元金の分だけ純資産が増えていきます。複数の物件で同時に元金が減っていくため、1戸だけ持つ場合と比べて純資産が増えるペースは戸数の分だけ速くなります。
1戸の手取りを繰り上げ返済に回して完済を早め、完済した物件の家賃で次の物件の返済を支えるという進め方も取れます。完済した物件が1戸あれば、家賃収入がまるごと手取りになるため、残りの物件の手出しを吸収する余力が生まれます。
戸数を増やすほど収入の総額は大きくなりますが、1戸あたりの利益が赤字であれば戸数を増やすほど損失も大きくなる点を忘れてはいけません。複数所有で資産が増えるのは、1戸ずつが家賃収入で返済と経費をまかなえている場合に限られ、赤字の物件を増やしても資産は増えません。
空室と災害のリスクを分散できる
1戸だけ持っている場合は入居者が退去した時点で家賃収入がゼロになり、空室の間はローンの返済をすべて給与から払うことになります。3戸持っていれば1戸が空室になっても残り2戸の家賃が入り続けるため、収入が途絶える事態を避けながら次の入居者を待てます。
異なるエリアに物件を持っていれば、地震や水害で1つの地域が被害を受けても、他の地域の物件から家賃収入を得られます。人口の減少や大学の移転といった地域ごとの需要の変化に対しても、複数のエリアに分けておけば影響を一部の物件にとどめられます。
ただし分散の効果が働くのは、物件ごとに立地や入居者の層が異なっている場合に限られます。同じ駅の近くに同じ築年数の物件ばかり集めても、空室や災害は同時に起きるため、戸数を増やしてもリスクは分散されません。
ワンルームの平均的な入居期間は2年から4年で、3戸持っていれば毎年どれか1戸で入れ替わりが起きる計算になります。退去の時期がずれていれば空室の損失と原状回復費は毎年少しずつ発生する形になり、1年に集中して家計を圧迫する事態を避けやすくなります。
相続税の評価額を圧縮できる
賃貸中のワンルームは相続税の計算で市場価格より低く評価され、建物は借家権割合の30%を、土地は貸家建付地として評価を差し引けます。市場価格2,000万円の物件が600万円から900万円程度の評価に収まることもあり、複数持つほど評価の差額が積み重なって相続税の負担を抑えられます。
物件が複数あれば、相続人ごとに1戸ずつ分けて引き継ぐことができ、1つの物件を共有する形を避けられます。共有にすると売却や修繕のたびに相続人全員の同意が必要になるため、分けやすいことは相続の場面で大きな利点になります。
ただし相続税の評価が下がっても、物件の実際の価値が下がって損をしていれば意味がありません。相続対策を主な目的に複数所有を進める場合でも、1戸ずつ家賃収入で返済と経費をまかなえるかどうかを確認したうえで購入します。
相続税の評価額は路線価と固定資産税評価額から計算されるため、同じ価格の物件でも立地によって評価の下がり方が異なります。
空室の分散が効くのは、立地や入居者の層が異なる物件を組み合わせた場合です。同じエリアに集めても分散にはなりません。
ワンルーム投資を複数所有するリスク
複数所有は収入が増える一方で、借入と管理の手間、修繕の負担も戸数の分だけ増えていきます。1戸では小さかった問題も、複数の物件で同じ時期に重なると家計を一気に圧迫するため、リスクの大きさは戸数に比例して増えると考えておく必要があります。
物件を増やす前に、1戸目の運営でどのような手間と出費が発生したかを振り返り、同じことが戸数の分だけ起きたときにも対応できるかを確かめておきます。
とくに同じ時期に同じ販売会社から続けて買った場合は、エリアや築年数が似た物件ばかりになり、リスクが1つの方向に偏りやすくなります。
複数所有で注意すべきリスクは、次の3つです。
- 修繕や管理の費用と手間が戸数の分だけ増える
- 空室や家賃の下落が重なるとキャッシュフローが一度に悪化する
- 同じエリアや同じタイプに集中すると共倒れになる
修繕や管理の費用と手間が増える
物件が増えれば、管理組合から届く総会の資料や修繕積立金の改定の通知、管理会社からの入退去の連絡も戸数の分だけ増えていきます。退去が重なった年は原状回復費と広告料がまとめて発生し、1戸あたり30万円近い退去費用が2戸、3戸と重なれば1年で100万円近い出費になることもあります。
給湯器やエアコンの交換は10年から15年に1回の頻度で発生し、同じ時期に購入した物件では交換の時期もそろってしまいます。設備の交換費用は1回あたり8万円から15万円かかるため、複数の物件で重なる前提で修繕用の資金を分けて確保しておく必要があります。
確定申告の作業も物件ごとに収入と経費を集計する必要があり、戸数が増えるほど書類の整理に時間がかかります。管理会社から届く明細と管理組合の請求書を物件ごとにまとめて保管する仕組みを、1戸目の段階から作っておくと負担を抑えられます。
管理の手間を減らすには、複数の物件を同じ管理会社にまとめて任せる方法があります。窓口が1つになれば入退去の連絡や明細の受け取りが一本化され、確定申告の集計も楽になる一方で、エリアを分けて持つ場合は地域に強い管理会社を別に選ぶ必要があります。
キャッシュフローが一度に悪化する
複数の物件で空室や家賃の下落、修繕積立金の値上げが同じ時期に重なると、毎月の収支が一度に大きくマイナスへ振れます。1戸あたり月1万円の手出しでも3戸で月3万円、年間36万円となり、給与から補填する金額が家計の余力を超えると返済が滞る原因になります。
複数所有では、すべての物件が満室という前提ではなく、1戸が常に空室という前提で収支を試算しておきます。3戸のうち1戸が空室でもローンの返済と経費を給与の範囲でまかなえるかどうかが、買い増してよいかを判断する基準になります。
金利が上がる局面では、変動金利で借りている物件の返済額が同時に増えるため、影響は戸数の分だけ大きくなります。すべての物件を変動金利で借りている場合は、一部を固定金利に借り換えて金利上昇の影響を分散しておく方法も検討します。
変動金利は5年ごとに返済額の見直しが行われ、見直しの際の増加幅は直前の返済額の1.25倍までに抑えられる仕組みを採る金融機関が多くなっています。返済額が急に増えなくても、増えなかった分は元金の返済が後ろにずれているだけなので、残債の減り方を返済予定表で確認しておきます。
同じエリア・同じタイプに集中すると共倒れになる
同じ販売会社から続けて購入すると、同じエリアの似た物件ばかりが手元に集まり、分散のつもりが1つのリスクに集中していることがあります。同じ駅の近くに3戸持っていれば、周辺で大型の新築が完成したときに3戸すべてで家賃の引き下げを迫られ、収支が同時に悪化します。
同じマンションの複数の部屋を持つ場合は、大規模修繕の一時金や修繕積立金の値上げが全戸に同時にかかるうえ、管理組合の運営が滞れば全戸の資産価値が下がります。1棟のなかで戸数を増やすのは分散ではなく集中であり、リスクを大きくする選び方だと理解しておく必要があります。
新築の物件ばかりを続けて購入した場合も、新築時の家賃の上乗せが同じ時期に剥がれて、複数の物件で一斉に家賃が下がります。購入の時期や築年数を分けておけば、家賃の下落や修繕の時期がずれて、収支への影響をならすことができます。
複数所有の収支は、全戸満室ではなく1戸が常に空室という前提で試算します。空室が1戸ある状態でも給与からまかなえるかが判断基準です。
ワンルーム投資の2戸目を買うタイミング
2戸目を買う時期に決まった正解はありませんが、1戸目の収支が安定しているかどうかと、手元に予備資金が残っているかどうかで判断できます。購入のタイミングは大きく分けて、1戸目が黒字化したあと、1戸目と同時、1戸目の完済や売却のあとという3つの考え方があります。
3つのタイミングの特徴を整理すると次のとおりです。
| タイミング | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1戸目の黒字化後 | 多くの会社員 | 確定申告で1〜2期分の実績が必要 |
| 1戸目と同時 | 自己資金と年収に余裕がある人 | 他の借入を申告せずに申し込まない |
| 1戸目の完済・売却後 | リスクを最小にしたい人 | 資産を増やすペースは遅くなる |
1戸目の収支が黒字化してから買う
最も一般的なのは、1戸目の運用を1年から2年続けて収支が黒字で安定していることを確認してから2戸目を買う方法です。確定申告で不動産所得が黒字になっていれば、金融機関は賃貸経営の実績として評価するため、2戸目の審査で有利に働きます。
1戸目の収支が赤字のまま2戸目を買うと、赤字の物件を2つ抱えることになり、手出しが倍になります。2戸目を検討する前に、1戸目の毎月の収支と年間の不動産所得がどちらもプラスになっているかを確認します。
購入後に手元に残しておく予備資金の目安は、持っている物件の家賃の6か月分程度です。2戸目を買うと予備資金の必要額も増えるため、頭金を入れたあとでも2戸分の予備資金が残るかどうかを確かめてから申し込みます。
1戸目の運用期間中に、空室期間の長さや退去時の費用、修繕積立金の改定といった実際の数字を記録しておけば、2戸目の収支を試算する際の精度が上がります。販売会社が示すシミュレーションより、自分の物件で実際に起きた数字のほうが、2戸目以降の判断材料として信頼できます。
同時購入という選択肢と他の借入の申告
自己資金と年収に余裕がある場合は、2戸を同時に購入して資産を増やすペースを早める方法もあります。ただし複数の金融機関に同時に申し込み、他の金融機関からの借入を申告しないまま融資を受けることは、審査の前提を偽る行為として契約違反を問われる可能性があります。
信用情報に新しい借入が登録されるまでには時間差があり、登録される前に複数の融資を通す手口が一部で勧められてきました。発覚すれば期限の利益を失って残債の一括返済を求められる可能性があるため、申込書にはすべての借入と申込み中の融資を正確に記載します。
同時購入をする場合は、2戸分の返済額を合わせても年収に対する返済比率が無理のない範囲に収まるかを先に計算しておきます。1戸目の実績がない状態で2戸分の借入を抱えるため、空室が出たときの余力は1戸ずつ買う場合より小さくなる点に注意します。
販売会社から同時購入を勧められた場合は、どの金融機関にいつ申し込むのか、他の借入をどう申告するのかを確認し、説明があいまいであれば応じないことが大切です。
1戸目の完済や売却のあとに買う
リスクを最も小さくしたい場合は、1戸目のローンを繰り上げ返済で完済してから2戸目を買う方法があります。完済した物件の家賃がまるごと手取りになれば、2戸目で手出しが出ても1戸目の家賃で吸収できるため、家計への負担を抑えながら規模を広げられます。
1戸目を売却して得た資金を2戸目の頭金に回し、より条件の良い物件に買い替える方法もあります。売却して利益が出る場合は、所有期間が5年を超えてから売れば譲渡所得税の税率が39.63%から20.315%に下がるため、売却の時期を調整して手取りを増やします。
完済や売却を待つ方法は資産を増やすペースが遅くなるため、年齢や目標とする資産額によっては時間が足りなくなることがあります。いつまでに何戸持ちたいかという目標から逆算して、完済を待つか黒字化の段階で買い増すかを決めます。
40歳で1戸目を完済して2戸目を買う場合と、35歳で黒字化を確認して2戸目を買う場合では、定年までに完済できる戸数が変わります。
複数の金融機関に同時に申し込む場合も、他の借入は必ず申告します。申告しないと契約違反として一括返済を求められる可能性があります。
ワンルーム投資を複数所有するときの融資
ワンルームを何戸まで持てるかは、年収と自己資金、そして金融機関が認める融資の枠によって決まります。1戸目の借入があるだけで2戸目の審査では返済の余力を厳しく見られるため、融資の枠がどう計算されるかを知っておく必要があります。
融資の枠は一度使うと返済が進むまで回復しないため、どの物件に枠を使うかという判断が投資の成否を大きく左右します。借入の余力を1戸目で使い切ってしまうと、条件の良い物件が見つかっても買えなくなるため、枠の使い方は長期の計画で考えます。
2戸目以降の融資で金融機関が確認するポイントは、次のとおりです。
- 年収に対する借入総額の倍率
- 1戸目の家賃収入と返済の実績
- 確定申告書に記載された不動産所得の推移
- 手元の金融資産の額
融資の上限は年収の何倍か
投資用ローンの借入総額は、年収の7倍から10倍程度が上限の目安とされ、金融機関や本人の属性によって幅があります。年収500万円の会社員であれば借入総額の上限は3,500万円から5,000万円程度となり、1戸2,000万円の物件なら2戸前後が1つの目安になります。
上限の倍率は勤務先の規模や勤続年数、職業によって変わり、公務員や上場企業の社員は高い倍率で評価される傾向があります。同じ年収でも自己資金を多く入れて借入額を抑えれば、1戸あたりの融資額が減るぶん持てる戸数を増やせます。
住宅ローンを組んでいる場合は住宅ローンの残高も合算して評価されるため、マイホームを持っている人は投資用ローンの枠が小さくなります。マイホームの購入を予定しているなら、投資用ローンを増やす前に住宅ローンを先に組むほうが、両方の借入を無理なく確保できます。
借入総額の上限に近い状態まで借りると、空室や金利上昇が起きたときに対応できる余力がなくなります。上限いっぱいまで借りるのではなく、年収の7倍程度を自分の上限として決めておくと、想定外の出来事にも慌てずに対応できます。
1戸目の実績の見られ方
2戸目の審査では、1戸目の家賃収入が返済を上回っているかどうかが確定申告書と賃貸借契約書で確認されます。1戸目が黒字であれば家賃収入の一部を返済能力として年収に加算して評価する金融機関もあり、実績があるほど次の融資を受けやすくなります。
反対に1戸目が赤字であれば、2戸目の返済能力は給与だけで判断され、借入の余力がないとみなされることがあります。1戸目の空室期間が長かったり家賃を大きく下げていたりすると、物件を選ぶ力や運営する力が不足していると評価される原因になります。
返済の遅れが一度でもあると信用情報に記録が残り、2戸目以降の審査で大きく不利になります。口座の残高不足による引き落としの失敗を防ぐため、返済用の口座には常に2か月分程度の返済額を残しておきます。
1戸目の管理会社から発行される入出金の明細や入居状況の報告書も、運営の実績を示す資料として審査で提出を求められることがあります。空室率や家賃の推移を示せれば、物件を運営する力があることを金融機関に伝えられるため、明細は毎月保管しておきます。
審査で求められる書類
2戸目の融資を申し込む際は、本人の収入を示す書類に加えて、1戸目の運営状況を示す書類の提出を求められます。源泉徴収票と直近2期から3期分の確定申告書、1戸目の賃貸借契約書、返済予定表の4点をそろえておけば、多くの金融機関の審査に対応できます。
確定申告書は収支内訳書や青色申告決算書まで含めて提出を求められることが多く、不動産所得の内訳が見られます。経費を過大に計上して赤字を大きく見せていると、節税にはなっても審査では返済能力が低いと判断されるため注意が必要です。
預貯金や株式などの金融資産の残高を示す書類も、自己資金の余力を確認するために求められることがあります。書類は申込みの直前にそろえるのではなく、1戸目を買った時点から毎年の確定申告書と通帳の写しを保管しておくと手続きが早く進みます。
2戸目以降は1戸目と同じ金融機関に申し込むと、すでに取引の実績があるぶん手続きが早く進むことがあります。
経費を多く計上して赤字を大きく見せると、節税にはなっても2戸目の審査では不利になります。節税と融資は引き換えの関係です。
何戸から事業的規模になるか:税金と確定申告
ワンルームを複数所有すると、一定の戸数を超えた時点で不動産の貸付が事業的規模と認められ、確定申告での扱いが変わります。事業的規模になると青色申告特別控除の上限が上がるなど税金面の利点が増える一方で、赤字の扱いには戸数にかかわらず注意すべき点があります。
戸数が増えるほど確定申告の内容も複雑になるため、税金の扱いを知ったうえで買い増す計画を立てることが大切です。
事業的規模かどうかで変わる主な点は、次のとおりです。
| 項目 | 事業的規模でない場合 | 事業的規模の場合 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 10万円 | 最大65万円 |
| 家族への給与 | 経費にできない | 青色事業専従者給与として経費にできる |
| 取り壊しなどの損失 | 所得の範囲内でのみ経費 | 全額を経費にできる |
10室で事業的規模と認められる基準
国税庁の通達では、アパートや貸間などは独立した室数がおおむね10室以上、独立した家屋はおおむね5棟以上あれば事業的規模と判断されます。ワンルームは1戸が1室として数えられるため、10戸以上を所有して貸し付けていれば事業的規模の基準を満たすことになります。
事業的規模になると、e-Taxで申告するなどの要件を満たせば青色申告特別控除として最大65万円を所得から差し引けます。事業的規模に満たない場合の控除は10万円にとどまるため、所得税と住民税を合わせた税率が30%の人では年間16万5,000円の差になります。
戸数が増えて所得が大きくなった場合は、個人のまま所有するより法人を作って所有するほうが税負担を抑えられることがあります。法人化の判断は所得の水準や相続の方針によって変わるため、10戸に近づいた段階で税理士に相談して比較します。
10戸という基準はあくまで目安であり、室数が少なくても賃料の収入が大きく、管理の実態が事業といえる場合には事業的規模と認められることがあります。判断に迷う場合は、所轄の税務署や税理士に確認してから青色申告の控除額を決めます。
赤字の損益通算で注意すべき土地の借入利子
不動産所得が赤字になった場合は給与所得と損益通算して税金を減らせますが、赤字のうち土地を取得するための借入の利子にあたる部分は損益通算の対象から外れます。ワンルームの借入は建物と土地の持分の両方に使われているため、利子のうち土地の持分に対応する部分は赤字から除いて計算する必要があります。
複数所有で借入が大きくなるほど土地の借入利子も増え、損益通算できない金額が大きくなります。購入時の売買契約書で建物と土地の価格の内訳を確認し、借入の利子を建物と土地に按分して計算できるようにしておきます。
損益通算で給与の税金が戻ることを前提に買い増していると、土地の借入利子の制限によって想定していた還付額が得られないことがあります。複数所有の収支を試算する際は、損益通算による還付を当てにせず、家賃収入だけで返済と経費をまかなえるかを基準にします。
ワンルームは1戸が1室と数えられ、10戸以上で事業的規模の目安を満たします。青色申告特別控除は10万円から最大65万円に上がります。
ワンルーム投資の複数所有で失敗しない物件の組み合わせ
複数所有の効果を引き出せるかどうかは、どの物件を組み合わせるかで決まり、同じような物件を集めてもリスクは分散されません。エリアと築年数、購入の時期をずらして組み合わせれば、空室や修繕の負担が同じ時期に重なる事態を避けられます。
1戸目を買った時点で2戸目以降の組み合わせまで考えておけば、物件を選ぶ段階で立地や築年数の重なりを避けられます。何戸まで増やすかという目標を先に決め、各物件がどの役割を担うかを整理しておくと、買い増しの判断がぶれにくくなります。
組み合わせを考える際の基準は、次のとおりです。
- 最寄り駅や沿線が重ならないエリアを選ぶ
- 築年数を5年以上ずらして修繕の時期を分散する
- 単身の社会人向けと学生向けなど入居者の層を分ける
エリアを分けて選ぶ
2戸目以降は1戸目と最寄り駅や沿線が重ならないエリアを選ぶと、地域ごとの需要の変化や災害の影響を分散できます。東京23区の物件を持っているなら2戸目は別の区や別の沿線を選び、首都圏と関西圏のように都市圏をまたいで分ける方法も取れます。
遠方の物件を持つ場合は、現地の状況を自分の目で確認しにくくなるため、地域の賃貸事情に詳しい管理会社を選ぶことが欠かせません。管理会社の入居者の募集力や退去時の対応の早さを比べ、実績のある会社に任せることで遠方でも運営の質を保てます。
エリアを分けるといっても、需要の弱い地域の物件を分散のためだけに選ぶのは避けます。どのエリアの物件も単体で家賃収入が成り立つかどうかを確認したうえで、立地の異なる物件を組み合わせることが前提になります。
エリアを選ぶ際は、人口が増えているかどうかと、単身者向けの新築がどれだけ供給されているかの2点を区や市の統計で確認します。人口が増えていて新築の供給が少ないエリアであれば、空室期間が短く家賃も下がりにくいため、複数所有の土台になる物件として適しています。
築年数と修繕の時期をずらす
築年数が近い物件ばかりを持つと、大規模修繕の一時金や設備の交換、修繕積立金の値上げが同じ時期に重なります。築年数を5年以上ずらしておけば、1戸で大きな出費が発生しても他の物件は落ち着いた時期にあたり、家計への影響をならすことができます。
購入前に各物件の長期修繕計画を取り寄せ、大規模修繕と積立金の値上げの予定年度を1つの表に並べておくと、出費が重なる年を事前に把握できます。重なる年が分かっていれば、重なる年の前年までに修繕用の資金を積み立てておくことができます。
築浅の物件と築年数の進んだ物件を組み合わせれば、利回りと資産価値の維持のバランスも取れます。築浅の物件は家賃が下がりにくく売却しやすい一方で利回りが低く、築年数の進んだ物件は利回りが高い代わりに修繕の負担が大きいため、両方を持つことで互いの弱点を補えます。
築年数の進んだ物件を組み合わせる場合は、1981年6月以降の新耐震基準で建てられているかを必ず確認し、融資の期間が短くなる点も収支に織り込みます。
各物件の長期修繕計画を1つの表に並べると、出費が重なる年が分かります。重なる前年までに資金を準備しておきます。
まとめ|ワンルーム投資の複数所有は1戸が空室でも回るかで判断する
ワンルームの複数所有は、家賃収入と資産を戸数に比例して増やし、空室や災害のリスクを分散できる方法です。一方で借入と修繕の負担も同じだけ増えるため、1戸が常に空室という前提でも給与の範囲で返済と経費をまかなえるかどうかが、買い増してよいかの判断基準になります。
2戸目以降を検討する際に確認する項目は次のとおりです。
- 1戸目の毎月の収支と年間の不動産所得がどちらも黒字か
- 借入総額が年収の7倍から10倍の範囲に収まっているか
- 2戸分の予備資金として家賃の6か月分を確保できるか
- エリアと築年数が1戸目と重なっていないか
同時に複数の融資を申し込む場合でも、他の借入を申告しないまま融資を受けることは避けなければなりません。10戸を超えると事業的規模として税金の扱いが変わるため、戸数が増えてきたら税理士に相談しながら、まずは1戸目の確定申告書と返済予定表を手元にそろえてみましょう。












