東京23区の中古ワンルームの平均成約価格は2017年の1,466万円から2024年の2,254万円まで上がり、8年間で1.54倍になりました。同じ期間に家賃は1.13倍しか上がっていないため、値上がりの大半は物件が稼ぐ力ではなく、投資家が受け入れる利回りの水準が下がったことで生まれています。
ワンルーム投資の値上がりを判断するには、次の3点を押さえておく必要があります。
- 価格と家賃がそれぞれどれだけ上がったか
- 値上がりを生んだ要因が今後も続くかどうか
- 値上がり益を売却して手取りに変えたときに残る金額
記事では東京23区の成約データをもとに値上がりの中身を分解したうえで、金利が上がった場合に価格がどこまで下がるかを利回り別に試算します。値上がりしやすい物件の条件や、売却益にかかる税金を差し引いた手取りの計算まで具体的な数字で解説します。


ワンルーム投資の物件価格はどれだけ値上がりしたか
株式会社TOCHUが東京23区の専有面積40平方メートル未満の成約事例2,304件を集計した調査では、2017年から2024年にかけて平均成約価格が一貫して上昇しています。新型コロナウイルスの影響で2020年に一時的に下がった以外は毎年値上がりが続き、2022年以降は上昇の勢いがさらに強まりました。
一方で平均賃料の伸びは緩やかで、価格と家賃の差が年々広がっていった結果、表面利回りは6%台後半から5%を割り込む水準まで低下しています。年ごとの推移を並べると、価格と家賃の上がり方の違いがはっきりと見えてきます。
| 年 | 平均成約価格 | 平均賃料(月額) | 表面利回り |
|---|---|---|---|
| 2017年 | 1,466万円 | 7万8,316円 | 6.88% |
| 2019年 | 1,604万円 | 8万1,206円 | 6.39% |
| 2021年 | 1,642万円 | 8万3,974円 | 6.13% |
| 2022年 | 1,876万円 | 8万5,168円 | 5.45% |
| 2023年 | 2,015万円 | 8万6,847円 | 5.17% |
| 2024年 | 2,254万円 | 8万8,361円 | 4.99% |
東京23区の中古ワンルームは8年で1.54倍
2017年に1,466万円だった平均成約価格は2024年に2,254万円となり、7年間で788万円、率にして54%値上がりしました。とくに2021年から2024年の3年間だけで612万円上がっており、値上がりの8割近くが直近の3年間に集中しているのが今回の上昇局面の特徴です。
より長い期間で見ると、東京23区の中古ワンルームの成約価格は2013年上期の約1,300万円から2倍近い水準まで上がっています。首都圏の中古マンション全体でも平方メートル単価は2013年比でほぼ2倍となっており、ワンルームだけが特別に上がったわけではありません。
築10年を超えた物件でも新築で分譲されたときの価格を上回って取引される例が出ており、中古は新築時より安くなるという従来の常識が当てはまらなくなっています。ただし上昇したのは市場全体の相場であり、個別の物件の価値が築年数とともに下がっていく構造は変わっていません。
築年数が同じ物件どうしで比べれば、2024年に取引された築15年の物件は2017年に取引された築15年の物件より高く売れています。値上がりの恩恵を受けているのは、相場が上がる前に買って相場が上がったあとに売った所有者だと整理すると分かりやすくなります。
家賃の上昇は1.13倍にとどまる
価格が1.54倍になった同じ期間に、平均賃料は7万8,316円から8万8,361円へ上がっただけで、伸び率は1.13倍にとどまっています。家賃が1万円あまり上がったことで説明できる価格の上昇は200万円前後にすぎず、残りの約600万円は家賃以外の要因によって生まれた値上がりです。
入居者が支払える家賃は給与の水準に縛られるため、物件価格のように短期間で大きく上がることはありません。単身世帯の実質賃金が伸び悩むなかで、家賃が価格と同じペースで上がり続けると考えるのは現実的な前提とはいえません。
家賃が伸びない状態で価格だけが上がると、新たに購入する投資家にとっては同じ金額で得られる家賃収入が少なくなります。値上がりは売る側には追い風ですが、今から買う側にとっては収益性の低下を意味している点を押さえておく必要があります。
家賃が伸びない理由には、単身者向けの新しい物件との競争や、在宅勤務の広がりで広めの部屋を求める入居者が増えたことも挙げられます。狭いワンルームほど家賃を上げにくい環境にあるため、価格の上昇に見合った家賃の上昇は期待しにくいと考えておきます。
利回りは6.88%から4.99%まで低下
価格と家賃の伸び方の差は表面利回りの低下として表れ、2017年の6.88%から2024年には4.99%まで下がりました。利回りが1.89ポイント下がったことは、投資家が同じ家賃に対して以前より4割近く高い価格を払うようになったことを意味しています。
年間家賃が同じ106万円の物件でも、利回り6.88%で評価されれば1,541万円、4.99%で評価されれば2,125万円になり、差は584万円に達します。値上がり益の大半は家賃の増加ではなく、市場が求める利回りの低下によって生まれていると理解しておく必要があります。
表面利回り5%は、管理費や修繕積立金、固定資産税などの経費を差し引いた実質利回りでは3%台半ばにとどまる水準です。ローン金利が2%前後であれば手元に残る利ざやは1%台しかなく、家賃収入だけで見た投資の妙味は以前より大きく薄れています。
価格は8年で1.54倍、家賃は1.13倍です。値上がりの大半は家賃の上昇ではなく、利回りの低下によって生まれています。
ワンルーム投資で値上がりが起きた3つの理由
ワンルームの価格を押し上げた要因は1つではなく、金融環境と供給の制約、建築コストの上昇という3つの流れが同じ時期に重なった結果です。どの要因が今後も続き、どの要因が反転しうるのかを見分けておけば、値上がりが続くかどうかを自分で判断できるようになります。
要因ごとの影響の大きさと今後の見通しを分けて把握しておけば、ニュースで金利や建築費の話題が出たときに自分の物件への影響を読み取れます。
値上がりの要因と、今後の見通しを整理すると次のとおりです。
| 要因 | 価格への影響 | 今後の見通し |
|---|---|---|
| 低金利による利回りの低下 | 最も大きい | 金利上昇で反転する可能性 |
| 新築の供給制限 | 中程度 | ワンルーム条例により継続 |
| 建築費の上昇 | 中程度 | 高止まりが続く見込み |
低金利で投資家の求める利回りが下がった
日本銀行が長く続けた金融緩和によって不動産投資ローンの金利は1%台から2%台まで下がり、投資家は低い利回りでも利ざやを確保できるようになりました。借入金利が下がれば同じ家賃から返済できる借入額が増えるため、買い手が払える価格の上限が押し上げられ、市場全体の利回りが下がっていきます。
預金金利がほぼゼロの状態が続いたことで、利回り5%前後のワンルームは個人の資産運用の選択肢として相対的に魅力的に映りました。国内の個人投資家に加えて海外の投資家も東京の不動産に資金を振り向けたことが、需要をさらに厚くしています。
利回りの低下が価格上昇の主な原因である以上、金利が上がる局面では逆の力が働くことになります。2024年以降に日本銀行が政策金利を引き上げ始めたことは、ワンルームの価格にとって最も大きな反転要因になりえます。
政策金利が0.25ポイント上がっても、不動産投資ローンの金利がすぐに同じ幅で上がるわけではなく、変動金利の見直しは半年ごとに行われるのが一般的です。影響が価格に表れるまでには時間差があるため、金利の動きを先回りして売却時期を考える余地は残されています。
新築の供給が細り中古に需要が集まった
東京23区ではワンルーム条例によって1住戸あたりの最低専有面積が25平方メートル前後に定められており、狭小なワンルームの新築は建てにくくなっています。新築の供給が絞られる一方で単身世帯は増え続けているため、駅に近い中古ワンルームに投資家と入居者の需要が集中しました。
供給の制限は条例によるものなので、金利のように短期間で状況が変わることはありません。値上がりを支える要因のなかでは最も持続性が高く、都心の駅近物件の価格を長期的に下支えする材料になります。
東京圏への転入超過は年間10万人前後で推移しており、進学や就職で上京する若い単身者が賃貸需要の厚みを保っています。人口が減る地方と比べて入居者が確保しやすい環境が続いていることも、都内のワンルームに資金が集まる理由の1つです。
単身世帯の割合は今後も上昇すると国立社会保障・人口問題研究所が推計しており、ワンルームの賃貸需要は中長期的に底堅いと見込まれています。需要が保たれる一方で新築の供給は条例で抑えられるため、都心の駅近物件では需給の引き締まった状態が続きます。
建築費の上昇が新築価格を押し上げた
鉄筋や生コンクリートといった資材の価格と建設現場の人件費は2020年以降に大きく上がり、新築マンションの分譲価格を押し上げています。新築が高くなれば割安に見える中古へ買い手が流れるため、建築費の上昇は新築だけでなく中古ワンルームの価格も連動して引き上げます。
建設業では時間外労働の上限規制が2024年から適用され、工期が長くなるとともに現場の人件費も上がり続けています。職人の高齢化が進んで担い手が減っていることもあり、建築費が以前の水準まで下がる見通しは立っていません。
新築マンションの分譲価格は首都圏で過去最高の水準が続いており、単身者向けの新築でも1戸3,000万円を超える物件が珍しくなくなりました。新築との価格差が広がるほど築浅の中古に割安感が生まれ、中古ワンルームの価格を下から支える力として働きます。
建築費の上昇は、同じ場所に同じ建物を建て直すのにかかる費用である再調達価格を引き上げることにつながります。再調達価格が上がれば既存の建物の価値も下がりにくくなるため、中古物件の価格を下支えする力として長く働き続けます。
供給の制限と建築費の上昇は続く見込みですが、低金利という最大の要因は反転し始めています。3つの要因は分けて考えます。
ワンルーム投資の値上がりが止まる・下がる条件
ワンルームの価格は家賃を投資家の求める利回りで割って決まるため、家賃が変わらなくても利回りが上がれば価格は下がります。金利の上昇、築年数による家賃の低下、新築で買ったときの価格の目減りという3つの条件が、値上がりを打ち消す方向に働きます。
2024年の平均賃料8万8,361円の物件について、市場が求める利回りごとに価格を計算すると次のようになります。
| 市場の利回り | 物件価格 | 2024年比 |
|---|---|---|
| 4.5% | 約2,356万円 | 約11%上昇 |
| 4.99%(2024年) | 約2,125万円 | — |
| 5.5% | 約1,928万円 | 約9%下落 |
| 6.0% | 約1,767万円 | 約17%下落 |
| 6.88%(2017年) | 約1,541万円 | 約27%下落 |
金利が上がると価格は下がる
日本銀行が政策金利を引き上げれば不動産投資ローンの金利も上がり、投資家が利ざやを確保するために求める利回りも上がっていきます。家賃が同じでも市場の利回りが4.99%から5.5%へ0.5ポイント上がるだけで、物件価格は約9%、金額にして約200万円下がる計算になります。
利回りが2017年の水準である6.88%まで戻れば、価格は約1,541万円となり2024年比で約27%下がります。値上がり益を前提に保有を続けている場合は、金利の動きが売却価格にどれだけ影響するかを利回り別の表で確認しておく必要があります。
金利が上がっても家賃が同じ割合で上がれば価格は保たれますが、家賃の伸びは年1%から2%程度にとどまるのが一般的です。金利上昇のペースが家賃の伸びを上回る局面では、価格の下落は避けられないと考えて出口の計画を立てます。
固定金利でローンを組んでいる所有者は金利上昇の影響を返済額では受けませんが、売却する際の価格には買い手の金利を通じて影響が及びます。自分の返済が変わらないからといって、物件の価値が保たれるわけではない点に注意が必要です。
築年数による価値の目減りは続く
市場全体の相場が上がっていても、個別の物件は築年数が進むにつれて家賃が下がり、同じ相場の中での評価は少しずつ下がっていきます。相場の上昇が築年数による目減りを上回っている間は値上がりしているように見えますが、相場が横ばいになった瞬間から物件の価格は下落に転じます。
ワンルームの家賃は築年数が1年進むごとに0.5%から1%程度下がるのが一般的で、築20年の物件は新築に比べて1割から2割低い水準に落ち着きます。家賃が下がれば利回りで割り戻した価格も同じ割合で下がるため、築年数の影響は長く保有するほど大きくなります。
築年数が進むと金融機関が融資できる期間も短くなり、買い手が組めるローンの条件が悪くなる点も価格を押し下げます。法定耐用年数の47年から築年数を差し引いた期間しか融資を受けられない金融機関が多いため、築25年を超えると買い手の層が狭まります。
築年数による目減りを抑えるには、退去のたびに内装や設備を更新して家賃の水準を保つことが効果的です。浴室乾燥機やインターネット無料といった入居者に人気の設備を導入すれば、築年数が進んでも周辺相場並みの家賃で募集を続けられます。
新築で買うと値上がりの恩恵を受けにくい
新築ワンルームの分譲価格には販売会社の広告費や利益が上乗せされており、購入した直後から中古の相場で評価し直されることになります。新築で買った物件は購入直後に中古相場の70%から80%の評価まで下がる傾向があり、相場全体の上昇で目減りした分を埋めるには数年から10年近くかかります。
2013年に2,500万円台で分譲された新築ワンルームが、10年後の2023年に2,610万円で取引された例があります。10年間の相場上昇が大きかったにもかかわらず値上がり幅は60万円から90万円にとどまり、新築で買った人が受け取れた恩恵は限られていました。
築浅の中古を相場どおりの価格で買っていれば、新築時の上乗せ分を負担せずに相場上昇の恩恵を丸ごと受けられていた計算です。値上がりを期待して購入するなら、新築の上乗せ分を払うよりも築5年から10年の中古を選ぶほうが合理的な選択になります。
市場の利回りが0.5ポイント上がるだけで、価格は約9%下がります。値上がり益は金利の動きに大きく左右されます。
ワンルーム投資の値上がり益を手取りに変えるために確認すること
値上がりした価格は売却してはじめて手取りになり、売却時には仲介手数料などの諸費用と譲渡所得税が差し引かれます。値上がりしやすい物件を選ぶことと、売却したときに残る金額を事前に計算しておくことの両方がそろって、値上がり益を実際の利益に変えられます。
値上がりしている局面ほど売り時を逃さないことが大切で、市場の利回りが上がり始めてから動いても、買い手が減って思った価格では売れなくなります。
値上がりしやすいワンルームに共通する条件は次のとおりです。
- 最寄り駅から徒歩10分以内で、複数路線が使える
- 東京23区の中でも都心や副都心へのアクセスが良い
- 専有面積が20平方メートル以上ある
- 管理組合の運営が安定しており修繕積立金が不足していない
値上がりしやすい物件の条件
値上がりしやすいのは、家賃が下がりにくく買い手の数も多い物件であり、条件の大半は立地と建物の管理状態で決まります。駅から徒歩10分以内で複数路線が使える物件は入居者が途切れにくく、市場が下がる局面でも買い手が付きやすいため、価格の下落幅も小さく抑えられます。
専有面積が20平方メートルを下回る狭小な物件は、入居者からの人気が落ちやすく、ワンルーム条例によって新たに建てられない規格でもあります。希少性はあるものの家賃が頭打ちになりやすいため、値上がりを狙うなら20平方メートル以上の物件のほうが有利です。
管理組合の運営が安定していて修繕が計画どおりに行われている物件は、築年数が進んでも建物の状態が保たれ、買い手からの評価も下がりにくくなります。重要事項調査報告書で修繕積立金の残高と滞納の状況を確認し、将来の一時金のリスクが小さい物件を選びます。
購入後に値上がりを実現できるかどうかは、買った時点の価格が相場に対して適正だったかどうかで大きく左右されます。周辺の成約事例と比べて割高な価格で買えば、相場が上がっても含み益が出るまでに時間がかかるため、購入時の価格交渉が結果を分けます。
売却益にかかる税金と手取りの計算
売却して得た利益には譲渡所得税がかかり、所有期間が5年を超えていれば税率は20.315%、5年以下なら39.63%が適用されます。譲渡所得は購入価格から減価償却費の累計を差し引いた取得費をもとに計算するため、値上がりした金額より課税される金額のほうが大きくなります。
2017年に1,466万円で買った物件を2024年に2,254万円で売った場合、建物部分の減価償却累計を約139万円とすると取得費は約1,327万円になります。仲介手数料などの譲渡費用を90万円とすれば譲渡所得は約837万円、長期譲渡の税額は約170万円で、値上がり788万円に対して手元に残る利益は約528万円です。
所有期間の5年は売却した年の1月1日時点で判定されるため、購入から丸5年が経っていても短期譲渡として扱われる場合があります。売却の時期を決める際は、引渡日から数えて何年目の1月1日を越えたかを確認し、長期譲渡の税率が適用される時期を選びます。
値上がり788万円のうち手元に残るのは約528万円です。減価償却で取得費が下がるため、課税される金額は値上がり幅より大きくなります。
まとめ|ワンルーム投資の値上がりは利回りの低下が生んだもの
東京23区の中古ワンルームは2017年から2024年にかけて1.54倍に値上がりしましたが、家賃の伸びは1.13倍にとどまり、表面利回りは6.88%から4.99%まで下がりました。値上がりの大半は低金利によって市場の求める利回りが下がったことで生まれており、金利が上がる局面では反対の力が働きます。
値上がりを前提に保有や購入を判断する際に確認する項目は次のとおりです。
- 市場の利回りが0.5ポイント上がった場合の価格
- 築年数による家賃の低下を織り込んだ将来の価格
- 新築の上乗せ分を払っていないか
- 売却時の諸費用と譲渡所得税を差し引いた手取り
供給の制限と建築費の上昇は今後も価格を下支えする一方で、金利の上昇は値上がりを打ち消す最大の要因になります。保有している物件があれば、現在の家賃を利回り5.5%と6%で割り戻した価格を計算し、売却した場合の手取りと比べてみましょう。












