入居率の目安とは?アパートやマンション経営の空室対策の具体案

不動産投資を行うにあたって、入居率という指標を理解することは重要です。例えば、入居率はどのように計算されているのか、また、目安はどのくらいなのかご存知でしょうか。

実は、入居率にはさまざまな計算方法が存在し、統一された計算方法はありません。そのため、入居率が提示されている場合にはその計算方法を把握し、適切にその数字を見極める必要があります。

そこでこの記事では「入居率とは何か」「どのような計算方法があるのか」などを紹介します。また、アパートやマンション経営で気をつけたい空室リスクに対する具体的な対策も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

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アパートやマンション経営(不動産投資)における入居率とは?

アパートやマンションの経営(不動産投資)における入居率には様々な計算方法があります。最も一般的で理解しやすいものは、次のような式で計算されます。

入居率の計算式の例(イメージ)

(管理戸数-空室戸数)÷管理戸数

仮に、ある管理会社の管理戸数が100戸、そのうち空室戸数が10戸であれば、入居率は90%と計算できます。このように管理会社が入居率を提示している場合、入居率は管理会社の入居付けの力(仲介力)を測る指標として認識すべきです。

その他、同じエリアの類似物件の入居率を参考にする場合もありますが、この記事では管理会社が提示する入居率を前提として解説を進めます。

入居率と空室率の違い

入居率と空室率の違いは、その名のとおり入居戸数に着目しているか空室戸数に着目しているかの違いです。一般的に、入居率が90%なら空室率は10%と計算できます。

入居率と空室率の関係

  • 入居率=1-空室率(100%-空室率)
  • 空室率=1-入居率(100%-入居率)

入居率と稼働率の違い

入居率と稼働率は同じ意味という場合もありますが、後述する稼働入居率(もしくは入居稼働率)の意味で用いられることもあります。

不動産投資における入居率の3つの計算方法

入居率の計算方法は統一されていないことを前述しました。ここでは、入居率の計算方法を3つ紹介します。管理会社などが提示する入居率は、どのような計算方法で求めた入居率なのか確認しておきましょう。

入居率の3つの計算方法

  • 時点入居率
  • 稼働入居率
  • 賃料入居率

時点入居率

時点入居率は、ある一定時点における入居率です。管理会社として都合の良い数字を出しやすいため、不動産投資家は注意しなければなりません。

稼働入居率

稼働入居率は、年間稼働日数(月数)に占める入居日数(月数)の割合です。仮に10戸(10部屋)あったとすると、全戸が全日入居している場合、3,650日・戸(10戸×365日)で稼働入居率100%となります。

この物件で2戸が60日間空室となったとすれば、稼働入居率は(3,650-120)÷3,650により約96.7%です。

賃料入居率

賃料入居率は、満室時の賃料に対する賃料(満室賃料-空室分)の割合です。仮に10戸のうち7戸が6万円、3戸が5万円の賃料だったとします。満室時の月額賃料は57万円(7戸×6万円+3戸×5万円)となり、年間にして684万円(月額57万円×12ヶ月)です。

月額賃料6万円の2部屋が2ヶ月間空室となれば、賃料は24万円減る(月額6万円×2部屋×2ヶ月)ため、賃料入居率は「(満室賃料684万円-空室分24万円)÷満室賃料684万円」により約96.5%です。

一方、仮に月額賃料5万円の2部屋が2ヶ月間空室となった場合は「(満室賃料684万円-空室分20万円)÷満室賃料684万円」により約97.1%となります。

賃貸住宅の入居率は全国平均でどのくらい?

賃貸住宅の入居率は、地域によって異なるものの、全国平均では93%程度です。政府統計「住宅・土地統計調査」と日管協短観による入居率を紹介します。

総務省「住宅・土地統計調査」によると賃貸用住宅の入居率は93.1%

政府統計の1つで総務省が取りまとめる「住宅・土地統計調査」によると、賃貸用住宅の入居率は93.1%(空き家率6.9%)でした。

空き家の内訳をみると,「賃貸用の住宅」が 432 万7千戸(総住宅数に占める割合 6.9%)となっており,「売却用の住宅」が 29 万3千戸(同 0.5%),別荘などの「二次的住宅」が 38万1千戸(同 0.6%),「その他の住宅」が 348 万7千戸(同 5.6%)となっている。

引用元:総務省「平成30年住宅・土地統計調査 結果の概要」(PDF)

ただし、この調査は5年ごとに行われるものであり、直近は平成30年(2018年)10月1日現在の調査です。そのため、やや情報が古い点も否めません。あくまでも参考としておきましょう。

日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」によると93.5%程度

日本賃貸住宅管理協会が発行する「日管協短観」によると、入居率の全国平均は2020年下期で93.5%(委託管理)でした。前述した住宅・土地統計調査では93.1%でしたので、大まかに入居率の目安は約93%と捉えて良いでしょう。

なお、委託管理ではなくサブリースの場合は、2020年下期の全国平均は98.0%と高めです。

不動産管理会社の入居付けの力を見るための6つのポイント

不動産管理会社の入居付けの力(仲介力)を見るためのポイントには、定量的なものや定性的なものなど多数あります。

もちろんこれまでに紹介してきた入居率もその1つですが、ここでは以下6つのポイントを紹介していきますので参考にしてみてください。

入居付けの力(仲介力)を見るための6つのポイント

  • 管理戸数や賃貸仲介件数
  • 地域店舗数(エリアネットワーク)
  • 物件掲載サイト数
  • 築古物件の管理実績
  • 滞納率
  • 各種サービスの充実と入居者満足度

①管理戸数や賃貸仲介件数

管理戸数や賃貸仲介件数を見ると、不動産管理会社(賃貸仲介会社)としてどれだけオーナーに選ばれているのかがわかります。極端ですが、管理戸数が10戸の管理会社と1万戸の管理会社とでは、当然に後者のほうが信頼できるといえるでしょう。

もっとも、実績が少ないからといって入居付けの力(仲介力)がないとは限りません。

②地域店舗数(エリアネットワーク)

地域店舗数が多いほど、その地域における入居付けの力(仲介力)の高さがうかがえます。なぜなら、店舗は入居者を募集するための大切な基盤の1つだからです。

前述した管理戸数や賃貸仲介件数が少なくても、ある特定の地域に強い場合もあります。

③物件掲載サイト数

物件を探すとき、最初から店舗に訪れる人もいますが、不動産の賃貸サイトなどから物件探しを始める人が多いです。そのため、店舗と同様に入居者との接点(タッチポイント)となる物件掲載サイトの数も入居付けの力(仲介力)を測る指標の1つといえます。

④築古物件の管理実績

築古物件の管理実績が良好であることも、入居付けの力(仲介力)を見るための指標の1つです。当然ながら新築・築浅物件より築古物件のほうが入居付けは難しくなります。

それにもかかわらず築古物件を適切に管理して空室を出していない管理会社は、管理能力が高いと判断できるでしょう。管理会社を選ぶ際は、築古物件の管理実績について質問してみることも1つの手です。

⑤滞納率

入居率が高くても、滞納率が高ければ家賃収入が滞ってしまいます。極端な例として入居率が100%でも、滞納率が100%なら家賃収入はありません。

そのため、管理会社の管理物件における滞納率はどうか、入居者審査はどのような方針なのかなどを事前に聞いておくと安心です。また、必要に応じてサブリース(マスターリース)契約も検討してみましょう。

⑥各種サービスの充実と入居者満足度

家賃のクレジットカード決済や外国語対応、連帯保証人不要制度、入居者サポートサービス、オンライン重要事項説明などの各種サービスが充実しているかどうかも入居付けの力(仲介力)を見るうえでの1つの目安です。

上記のような各種サービスが充実しており、入居者からの満足度が高いほど入居率は高くなる傾向にあります。

入居率を高めるコツ(空室リスク対策)は?

入居率を高めるコツ(空室リスク対策)は多数ありますが、ここでは主なものを紹介していきます。

入居率を高めるコツ(空室リスク対策)

  • 賃貸需要が高く入居率が高めの立地を選ぶ
  • 設備などを競合物件より魅力的にする
  • 入居付けの力がある複数の管理会社に仲介を依頼する
  • 広告料(AD)を支払って紹介されやすくする
  • 家賃保証やサブリース契約を検討する

①賃貸需要が高く入居率が高めの立地を選ぶ

不動産は立地を変更することができず、立地に左右されることが多い資産です。いくら魅力的な物件で入居付けの力(仲介力)がある管理会社に依頼をしたとしても、立地が悪ければ入居者が付くかどうかわかりません。

一方で、賃貸需要の高い立地であれば、多少条件が悪くても入居者が付くことがあります。このように、入居率を高めるためには需要のある立地を選ぶことが効果的です。

ただし、賃貸需要が高い立地の物件は入居率が低くなるリスクが相対的に低いため、利回りが低くなりがちであることに注意しなければなりません。

②設備などを競合物件より魅力的にする

同じ立地(エリア)であれば、その物件の家賃や設備などが物件選びの大きなファクターとなります。当然、家賃が低いほど入居者は付きやすいですが、家賃収入を減らすことは避けたいものです。

そのため、類似する競合物件よりも設備などの条件を魅力的にする必要があります。もし物件の魅力が著しく低いようであれば、リフォームを検討してみても良いでしょう。

ただし、リフォームは類似物件と比較しつつ、さらにリフォームの利回りを考慮しなければならないため、不動産会社に相談しながら慎重に進めることをおすすめします。

③入居付けの力がある複数の管理会社に仲介を依頼する

立地や設備などの条件が良くても、物件情報を入居者にリーチできなければ入居者は付きません。そのため、入居付けの力(仲介力)がある複数の管理会社に仲介を依頼しましょう。

これにより、賃貸サイトや仲介店舗で物件情報を入居者にリーチすることができ、入居率を高めることが期待できます。

④広告料(AD)を支払って紹介されやすくする

宅建業者(不動産会社)が受け取ることができる仲介報酬の額は、国土交通省の告示で定められているとおり、賃貸人と賃借人あわせて家賃の1.1ヶ月分(税込み)です。

ただし、この定めとは別に、一般にADと呼ばれる広告料を支払うことも入居率を高めるコツの1つです。

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し、第二から第八までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によつて行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。

引用元:国土交通省「昭和45年建設省告示第1552号」(PDF)

ADがあると、仲介会社の営業担当者が物件を紹介するインセンティブとして働きます。他にも、物件の現地にキーボックスを設け、営業担当者が管理会社に立ち寄る手間なく物件を紹介できるような工夫も有効です。

⑤家賃保証やサブリース契約を検討する

空室リスク対策の観点からは、空室が発生したときの手立ても考慮しておかなければなりません。その手立てとしては、家賃保証やサブリース(マスターリース)契約が考えられます。

家賃保証とサブリース契約

サブリースは、不動産会社に物件を貸し、さらにその不動産会社が入居者に転貸する形のことです。実際に入居者が付かなくても不動産会社からの賃料を受け取ることができるため、家賃保証と称されることがあります。
一方、家賃保証会社が提供する家賃保証は、入居者が滞納したときに入居者に代わって家賃を支払ってもらえる(代位弁済)契約(機関保証)です。保証料は入居者が負担することがオーナーにとってのメリットといえますが、この負担が入居率の低下につながる可能性も考えられます。

サブリース契約については、保証料や保証率、保証期間、減額可能性など契約内容に注意しながら検討してみましょう。

まとめ:不動産投資の入居率を理解して空室リスク対策をしましょう

入居率にはさまざまな計算方法があり、同じ状況であっても計算方法によっては数値に差異が生じます。そのため、入居率が提示されている場合はその計算方法を把握し、適切にその数字を見極めなければなりません

入居率の目安は全国平均で93%程度ですが、入居率は地域によって大きく異なる場合があるためあくまでも目安としておきましょう。

不動産投資家(オーナー)にとって、入居率を理解することは重要です。ぜひこの記事を参考にしながら適切に管理会社の実力を見極めるなど、空室リスク対策にお役立てください。

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