マンション投資など、投資用不動産ローンの借り換えは、現在の金融機関との関係や、借り換えるための手続きが複雑などの理由から敬遠されがちです。たしかに借り換えは慎重に検討しなければ、かえって損する可能性もあります。
しかし、しっかり利益を手元に残すためには、借入金の返済利息を抑えることが重要なポイントのひとつです。
この記事では、不動産投資ローンを借り換えるメリットとデメリット、借り換えの流れをわかりやすく解説します。返済負担を抑えて利益をより多く確保するために、ぜひ役立てて下さい。
目次
不動産投資ローンの借り換えとは
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不動産投資ローンの借り換えとは、簡単にいえば現在借入先となっている金融機関のローンから、ほかの金融機関のローンに変更することです。
低金利のローンに変更すれば、現在より金利を低く抑えられます。すると、これまでよりもキャッシュフロー(現金収支)の利回りがよくなるなど、さまざまなメリットを得られます。一方で、どのようなケースでも簡単にできるわけではなく、リスクも少なからずあります。
不動産投資ローンの借り換え7つのメリット
借り換えをすることで、多くのメリットが発生します。主なメリットを7つ紹介していきます。
金融情勢(金利局面)に応じた金利方式を選択できる
不動産投資ローンの借り換えをすることで、金融情勢(金利局面)に応じた金利方式を選択できるメリットがあります。具体的には次のとおりです。
不動産投資ローンの借り換えは金融情勢(金利局面)に応じた金利方式を選択可能
- 固定金利を選んでしまったが、市場金利が下落している場合:変動金利で市場金利に合わせる
- 変動金利を選んでしまったが、今後市場金利が上昇しそうな場合:固定金利で金利上昇リスクを回避する
なお、後者は同じ金融機関でも固定金利特約手数料などを負担することによって可能な場合がありますが、前者は困難です。そのため、市場金利の下落局面で既存のローン契約は固定金利という場合に借り換えは特に有効といえるでしょう。
金利が下がれば総返済額を減らせる
民間の金融機関から融資を受ける場合、不動産の場合は変動金利がよく適用されます。金利は借入先によって異なるため、金利の低いローンにすれば、トータルの返済額を削減することが可能です。
一方で、日本政策金融公庫など固定金利で借りられるローンもあります。しかし、固定金利は変動金利よりも金利が高めに設定されていることが多く、変動金利への借り換えにより金利を抑えられる可能性が高くなります。
例えば、借り換え前のローン残高が2,000万円で金利が年1.5%の全期間固定、返済期間は残り20年だったとします。これから向こう20年間、完済までの総返済額は2,316万2,045円です。
一方、変動金利にして金利が年0.5%に下がったとすれば、完済までの総返済額は2,102万706円となり、つまり総返済額を214万1,339円も減らせます。
キャッシュフロー(現金収支)を改善できる
返済期間が同じであることが前提ですが、借り換えによって適用金利が低くなれば、毎月返済額も減ります。そのため、毎月・毎年のキャッシュフロー(現金収支)を改善する効果も期待できます。
例えば、先ほど紹介したローン残高2,000万円で金利が年1.5%、返済期間が20年の場合、元利均等返済であれば毎月返済額は9万6,509円です。一方、金利が年0.5%に下がれば毎月返済額も8万7,586円となります。
つまり月間8,923円、年間10万7,076円もキャッシュフローに余裕を持たせることが可能です。
ローン借り換えの特典を受けられることがある
借り換えを行うことで、さまざまな特典を受けられる場合もあります。また、借り換えに限定しなくても、ローン契約をすることで特典が受けられる金融機関も少なくありません。
たとえば、年会費無料でゴールドカードを利用できたり、特定の場所での商品購入が5%オフになったりするなどの特典を提供する金融機関もあります。ライフスタイルにマッチした特典であれば、借り換える価値が高いといえるでしょう。
信用力が向上する
大手の金融機関に乗り換えられれば、自身の信用力向上につながります。信用力が向上すれば、新規の不動産を購入する際に、審査が通りやすくなるなど、さまざまなメリットが派生的に生まれます。
特に、いわゆるメガバンクと呼ばれる三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行で取引できれば、ステータスともなります。今後、投資先を増やすために、新規で借入をしたいと考えている場合、信用力の向上は大きなメリットです。
金利交渉が可能なこともある
ローンの借り換えによりキャッシュフローに余裕が出れば、返済も同様に安定し、自身の実績につながります。運用実績が評価されれば、ほかの金融機関から借り換えをすすめられることもあるでしょう。このような状況で借り換えを行う場合、借りる側に有利な金利で交渉できる場合もあります。
特に、借入金額が大きくなればなるほど、金融機関にとっても利益が大きくなるので、金利交渉がしやすくなるといえます。
自分をより評価してくれる金融機関が見つかる
不動産投資家としての実績を評価してもらうことは、融資の審査を受ける際に非常に重要です。不動産投資ローンの借り換えによって返済がより安定すれば、自身をより高く評価してもらえます。その後の利益をより高く見積もることができるので、金融機関も心強い味方となってくれるでしょう。
自分を評価してくれる金融機関を見つけ、良好な関係を築いていけば、次の投資も積極的に行うことができます。
不動産投資ローン借り換え5つのデメリット
借り換えにはメリットがある一方で、デメリットもあります。主なデメリットを5つ紹介します。
借り換えローンには審査があるので必ず利用できるわけではない
借り換えローンといっても、審査を含め契約手続きはほとんど新規借り入れと同じように進んでいきます。すでに他の金融機関から融資を引いているという実績があるからと言って、必ずしも借り換えローンの審査に通るとは限りません。 特に、ローン返済が滞っている場合や賃貸経営がうまくいっていない場合など、借り換えローンの審査に通らないこともあるので注意しておきましょう。
付き合いのあった金融機関からの信用を損なう可能性がある
不動産投資ローンの借り換えは、すでに付き合いのあった金融機関からの信用を損なう可能性があることに注意しましょう。不動産投資家を始めさまざまな事業を経営する経営者からすると、金融機関は重要な事業のパートナーです。
借り換えができそうだからといってすぐに借り換えてしまうと、金融機関から見れば計画どおりの利息収入を見込めません。また、一度悪い印象を与えてしまうと従来どおりの付き合いをするのは難しくなる可能性があります。
もし今後長期的な視点で金融機関との関係を重視したいのであれば、安易に借り換えを行わないほうが無難といえるでしょう。
一括繰り上げ返済手数料などの諸費用が発生することがある
不動産投資ローンの借り換えにあたって、手数料などの諸費用の負担は避けられない問題です。また、手数料のほかにも保証料、印紙代、登録免許税(抵当権抹消登記・抵当権設定登記)、登記報酬料、団体信用生命保険料などの費用がかかります。
これらの諸費用の総額が、借り換えによる利息額の削減額を上回っている場合、借り換えをしても意味がありません。むしろ、マイナスとなってしまうので、借り換えはしないほうが無難といえます。本当にプラスになるのか、事前にしっかり確認することが重要です。
ローン借り換えの手続きに手間と時間がかかる
借り換えの手続きには、手間と時間がかかります。特に、副業で不動産投資を行っている人は、手続きのための時間が取れないというケースも少なくありません。
返済総額を削減できる金融機関を見つけて審査を受けても、必要書類をまとめる手間もかかりますし、それでも審査に落ちてしまう場合もあります。仮に通ったとしても、今度は現在取引がある金融機関との解約手続きを進めなければならないなど、多くの手間と時間が必要です。
毎月の返済額が増える可能性もある
不動産の場合、変動金利が採用されている場合がほとんどなので、今後金利が上昇した際に毎月の返済額が増えてしまうリスクがあります。直近の金利が低いからといって、安易に借り換えを進めてしまうと、景況感の変化であっという間に高金利になって損をするケースもあるのです。
何十年単位で社会の流れを読み切るのは非常に難しいですが、金利が上がる可能性もあるということは、頭に入れておきましょう。
不動産投資ローンの借り換えをすべきかどうかの判断基準
不動産投資ローンの借り換えは、メリットもあればデメリットもあることを紹介してきました。現時点で借り換えをすべきかどうか迷っている人もいるでしょう。
そこでここでは、不動産投資ローンの借り換えをすべきかどうかの判断基準をひとつの目安として紹介します。結論、以下の条件に複数当てはまる場合は借り換えを検討したほうがよいでしょう。
- 10年以内に物件を購入した
- 現在のローンが金利2.7%以上である
- 借入れ総額が、年収の10倍以内である
- 借り換え前と後の金利差が1%以上である
- ローンの返済残高が500万円以上である
- 返済期間の残りが10年以上である
以上に2つ以上当てはまる場合は、借り換えることでメリットが発生する可能性が高くなります。
不動産投資ローン借り換えの手続きの流れ
ここでは具体的な手続きの流れを見ていきます。本当にメリットがあるのか、しっかり確認しながら手続きを進めましょう。
現在のローンの諸条件を確認する
まずは、現在利用しているローンの条件を細かく整理しておきましょう。ローン残高、返済期間、融資金利のほか、契約状態の確認なども大切です。たとえば、夫婦で収入合算をして契約を結んでいる場合、ほかの金融機関では収入合算は認められず、借り換えができないという場合もあります。
現在のローンの状況をあらゆる方向から確認して、問題点があれば早目に解決しておきましょう。
借り換えが得なのか計算する
借り換えをして、損失を出してしまっては意味がありません。どの程度、支払い利息が減らせるのか、詳細な金額を計算しておきましょう。
計算方法がわからない場合は、自動で支払い利息を計算してくれるサイトを利用する方法もあります。その際には、借り換えを行った場合の諸費用も計算に入れることを忘れないようにしましょう。計算の結果、マイナスにならなければ借り換えを検討してもよいでしょう。
ただし、借り換えによる利息の低減効果が手数料や諸費用を合計した額よりもわずかに大きい程度であれば、借り換えをしないほうが得という考え方もあります。
仮に手数料や諸費用で100万円支払って利息を120万円抑えられるとしても、100万円はすぐに支払いますが、利息低減効果の120万円はすぐには得られないからです。
新規で融資を受ける時と同様の審査を受ける
借り換えといっても、基本的には新しく融資を受けるということになるので、新規で融資を受けるときと同じように審査を受けなければいけません。年収、年齢、勤務先、勤続年数、物件に関する情報などの属性をもとにした金融機関の審査が行われます。
無料で事前審査も受けられるので、審査が通るか不安なら事前審査を利用するのもおすすめです。審査の結果を受けて借入条件の詳細がわかったら、現在の条件と比べて有利なのか見極めます。提示された条件が良ければ、正式に申込をしましょう。
なお、不動産投資ローンの申込みに必要な書類などは次のとおりです。金融機関によって異なるため、あくまでも参考として確認してみてください。
不動産投資ローンの申込みに必要な書類(一例)
- 住民票の写し(原本)
- 印鑑証明書2通(原本)
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなどの原本)
- 所得関係書類(直近3年分の源泉徴収票原本や直近3年分の確定申告書コピーなど)
- 金融資産を確認できるもの(預貯金・有価証券・生命保険など)
- 借入中のローン償還予定表
- 借入中の返済口座通帳
- 実印
- 返済用口座通帳と銀行取引印
- 借入対象不動産の売買契約書と重要事項説明書のコピー
- 工事請負契約書のコピー
- 事業計画書のコピー
- 賃貸契約書のコピー
- 登記事項証明書・公図・実測図・住宅地図のコピー
- 物件パンフレット・チラシ・販売図面のコピー
- 建築確認済証・間取り図・平面図・配置図のコピー
- 検査済証のコピー
現在利用している金融機関で手続き
金融機関による審査が通ったら、現在利用している金融機関に借り換えの旨を伝え、解約の手続きに移ります。
その際に現在利用している金融機関から、さらに金利引き下げの条件や、何かしらの特典を提示される場合もあります。そのときは改めて検討し、よりメリットがあるほうを冷静に選びましょう。借り換えの審査を受ける前に借り換えの意思を伝えて、現在利用中の金融機関と交渉するのも一つの方法です。
融資実行と抵当権抹消書類の手続き
新たな金融機関から融資を受けたら、自分の口座を経由して、これまで利用していた金融機関へ入金を済ませて完済します。
その際に重要なのは、抵当権抹消書類の手続きです。完済日当日に抵当権抹消書類を受け取れるように手配しておくとスムーズです。受け取り方法の確認なども事前に済ませておきましょう。
最後に、新たに抵当権を設定すれば、借り換えの手続きは完了です。
まとめ:不動産投資ローンの借り換えは専門家に相談するのがおすすめ
不動産投資は、ローンの借り換えに限らず迷うことが多くあります。大きな金額を動かすため、特に初心者は不安に思うことも少なくないでしょう。