不動産(土地や建物)を購入したときや担保にしてローンを組むときなどは、不動産の所有権などの権利関係を明らかにするために登記申請という手続きを行います。
何度も手続きすることは少ないものの、いざ登記申請を行う必要が生じたときは、登記費用がいくらかかるのか気になることでしょう。
そこでこの記事では、不動産登記費用の相場を紹介します。登記費用を安く抑えるための方法もわかるので、ぜひ費用を抑えるためにお役立てください。
目次
不動産登記費用の相場
主な不動産登記費用の相場を以下の表にまとめました。詳しくは後述しますが、建物を新築した場合は所有権保存登記、中古不動産を購入したときは所有権移転登記を行います。
また、不動産の購入にあたってローンを組んだ場合、抵当権が設定されるため、このときの費用も借入れた人が負担することが一般的です。
登記の種類 | 法定費用(登録免許税) | 司法書士報酬 | |
---|---|---|---|
課税標準 | 税率 | ||
所有権保存登記 | 建物の価額 | 0.4% | 1~6万円 |
所有権移転登記 | 土地の価額 | 令和5年3月31日まで1.5% 本則税率2.0% |
2~12万円 |
建物の価額 | 2.0% | ||
抵当権設定登記 | 債権額 | 0.4% | 2~8万円 |
※登録免許税の課税標準は1,000円未満の端数切捨てで、税額は100円未満の端数切捨て
※司法書士報酬は課税標準額1,000万円の場合の目安
※所有権移転登記は売買によるものを前提
※マイホームの軽減税率は未考慮
参照:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
参照:日本司法書士会連合会「司法書士の報酬」
不動産登記の種類とは?
不動産登記に必要な費用を把握するうえでは、まず登記の種類を知っておかなければなりません。登記の種類は多数ありますが、ここでは主な種類に絞って紹介します。
登記の種類 | 内容 |
---|---|
所有権保存登記 | 新築で建物を購入したときなどに行う |
所有権移転登記(売買) | 不動産を購入したときなどに行う |
抵当権設定登記 | ローンを組んだときに行う |
そもそも不動産登記とは、不動産の現況と権利関係を公示する制度です。簡単にいうと、不動産のデータベースのようなものといえます。これにより、不動産の所有者は例えば「この土地と建物は自分の不動産だ」と主張することができます(第三者対抗要件の取得)。
引用元:法務省「登記事項証明書(不動産登記)の見本(区分建物・PDF形式)」
また、抵当権とはいわゆる担保のことで、もしローンの返済が滞れば金融機関は裁判所に競売を申立てることにより債権回収を図ることができます(担保権の実行)。
引用元:法務省「登記事項証明書(不動産登記)の見本(区分建物・PDF形式)」
所有権や抵当権は不動産に関する重要な権利であるため、所有権の保存と移転、抵当権の設定について概要を把握しておきましょう。
不動産登記費用は2つに分類できる
不動産の登記費用は、法定費用(登録免許税)と専門家報酬(司法書士報酬)の2つに分類できます。記事の前半で税率や相場を簡単に紹介しましたが、それぞれどのような費用なのか詳しく確認していきましょう。
不動産登記の法定費用
不動産登記の法定費用とは、登録免許税のことを指します。登録免許税は所得税や住民税、消費税などと比べるとあまり聞き慣れない税金ですが、不動産登記のほか、株式会社や合同会社の設立登記などでも負担する税金です。
不動産登記においては記事の前半で紹介したとおりの税率が設定されており、登録免許税額は下式のとおり計算します。課税標準は市町村が決定する固定資産税評価額です。
登録免許税額の計算方法
※課税標準額は1,000円未満端数切捨て
※登録免許税額は100円未満端数切捨て
抵当権設定登記の場合は債権額が課税標準になります。いずれにしても、不動産を購入した価格(購入代金)ではないことに注意しておきましょう。
なお、司法書士に見積もりを取った場合、登録免許税は実費として取り扱われます。
不動産登記の専門家報酬
不動産登記の専門家報酬とは、司法書士報酬などが挙げられます。その他の業務もありますが、司法書士は登記の専門家です。
司法書士報酬の金額や、金額の設定方法には明確な基準はなく、基本的には各司法書士に任されています。そこで一定の目安として参考にできるものが、日本司法書士会連合会が2018年1月に約1,200人の司法書士から回答を得たアンケート結果です。
記事前半で紹介した司法書士報酬の目安は、このアンケート調査の結果を参照しています。司法書士報酬は、一般に固定資産税評価額や売買価格をもとに決められることが多いようです。
不動産登記費用を安く抑えるためには?
不動産登記費用には、法定費用(登録免許税)と専門家報酬(司法書士報酬)があることを紹介しました。そこで、登録免許税と司法書士報酬それぞれについて、費用を安く抑える方法を紹介していきます。
法定費用を安くすることはできない
まず法定費用(登録免許税)については、税金であるため、基本的には安くすることはできません。課税標準である固定資産税評価額または債権額をもとに、一定の税率を乗じて税額を求めます。
なお、特例(租税特別措置法)によって税率が軽減される場合もありますが、「当該個人の居住の用に供した場合」とされており、つまりマイホームが対象です。そのため、第三者に賃貸をして収入を得る不動産投資では適用されません。
なお、マイホームに関する軽減特例は令和4年(2022年)3月31日までが対象とされていますが、令和4年度税制改正では2年延長する旨が盛り込まれています。
司法書士報酬は相見積もりを取るか自分で登記手続きを行う
安くすることができない法定費用(登録免許税)に対し、司法書士報酬は安くすることも可能です。前述のとおり、司法書士報酬の相場には幅があります。つまり、同じ登記であっても司法書士によって報酬が大きく変わります。
具体的には、複数の司法書士に見積もりを取って比較しつつ、報酬の低い司法書士に登記を依頼すると司法書士報酬を抑えることが可能です。ただし、不動産会社から司法書士を紹介される場合もあります。その場合、不動産会社との関係性を重視するために複数の見積もりを取らない場合も考えられます。
なお、抵当権が設定されない限り登記申請を自分で行うことも不可能ではありません。しかし、不動産登記は利害関係上、大きな責任を伴うものであり、通常は信頼できる第三者(司法書士)に依頼することが無難です。
まとめ:不動産登記費用の相場を把握して準備しておきましょう
不動産登記費用は、負担する登録免許税と、司法書士に依頼した場合に負担する司法書士報酬の2つに分けられます。
登録免許税は固定資産税評価額または債権額を課税標準として一定税率をかけ算することによって計算されるため、安くすることはできません。一方、司法書士報酬は複数の見積もりを取って比較することで、費用を抑えることも可能です。
とはいえ、ローンを組んで不動産投資を行うのであれば、抵当権設定登記などの関係もあり、司法書士報酬を抑えることは難しい場合もあります。
登記費用は見積もりを取るまで総額が分からないことが多いですが、ぜひこの記事を参考にある程度の相場感を把握し、準備しておきましょう。