ワンルーム投資の契約日には、手付金として現金を用意する必要があります。フルローンを組む場合でも、手付金だけは自己資金から支払うことになります。
融資が実行されるのは決済日のため、契約の時点では借入金をあてにできないからです。相場は物件価格の5〜10%で、2,500万円の物件なら125万円から250万円が目安になります。
手付金について、次の4点を整理して解説します。
- 手付金が持つ3つの性質と相場
- 支払うタイミングと必要な現金の内訳
- 返還されるケースと違約金になるケース
- 保全措置と税務上の扱い
ワンルーム投資の手付金とは何か
手付金は、売買契約を結ぶ際に買主が売主へ渡すお金で、契約が成立した証拠として授受されます。決済日には売買代金の一部へ充当されるため、手付金を払っても購入総額が増えるわけではありません。
2,500万円の物件で手付金150万円を払えば、決済時に用意する残代金は2,350万円まで下がります。法律で義務づけられた制度ではなく、不動産取引の慣行として定着してきた仕組みです。
契約書に手付金の記載がない売買も理論上は成立しますが、ワンルームの取引で手付金なしの契約はほとんど見られません。売主にとっては契約の実効性を担保する手段であり、買主にとっては契約を解除する権利を確保する意味があるからです。
手付金は売買代金の一部に充当される
手付金は決済日に売買代金へ振り替えられます。買主が別途負担する費用ではなく、いずれ支払う総額の前払い分にあたります。
2,500万円のワンルームで手付金150万円を払った場合、決済日の残代金は2,350万円です。融資額2,350万円で残代金をまかない、手付金150万円を自己資金から出す組み立てです。
販売会社の資料に「自己資金10万円から」と書かれている場合、手付金を10万円に設定した前提で計算されています。売主が承諾すれば手付金の額は当事者間で自由に決められますが、少額の手付金が買主に有利とは限りません。
手付金が少ないほど解除のハードルが下がり、売主の側から契約を解除されやすくなるためです。契約時に必要なお金は手付金だけではなく、印紙税や仲介手数料の半金も同じ日に支払います。
2,500万円の売買契約書なら印紙税は1万円で、仲介手数料の半金を求められるケースも珍しくありません。契約日に持参する現金の内訳を、事前に仲介会社へ確認しておきましょう。
手付金には3つの性質がある
手付金が持つ性質は、次の3つに分かれます。
- 証約手付
- 解約手付
- 違約手付
不動産の売買契約で使われるのは、原則として解約手付です。証約手付は契約が成立した事実を証明する性質を指し、契約書を交わした証拠として機能します。
解約手付は、契約を解除する権利を当事者の双方に与える性質です。買主は手付金を放棄すれば解除でき、売主は手付金の倍額を返せば解除できます。
理由を問われずに解除できる点が解約手付の特徴で、期日までなら一方的な意思表示で十分です。違約手付は契約違反があった際の違約金として扱われる性質を指し、残代金を支払わないなどの債務不履行があった場合に没収されます。
実務では、売買契約書に「解約手付とする」と明記するのが一般的です。3つの性質は排他的ではなく、1つの手付金が複数の性質を兼ねる場合もあるため、契約書の条文で確認しておきます。
手付金は決済日に売買代金へ充当されます。2,500万円の物件で手付金150万円なら、決済時の残代金は2,350万円です。
| 手付金の性質 | 意味 | 契約解除時の扱い |
|---|---|---|
| 証約手付 | 契約成立の証拠 | 解除の根拠にはならない |
| 解約手付 | 解除権を当事者に与える | 買主は放棄、売主は倍返し |
| 違約手付 | 違約金として機能 | 債務不履行があれば没収 |
ワンルーム投資の手付金の相場と上限
手付金の相場は物件価格の5〜10%で、2,000万円のワンルームなら100万円から200万円が目安になります。実際の取引で多いのは5%前後で、価格帯が2,000万円から3,000万円に集中する投資用ワンルームでは100万円から150万円が中心です。
上限については、売主が宅地建物取引業者の場合に限って法律で定められています。業者売主の取引では、売買代金の20%を超える手付金を受け取れません。
個人が売主となる中古ワンルームには20%の上限規制がかからず、当事者の合意だけで金額が決まります。相場から大きく外れた高額な手付金を求められたら、理由を確認しましょう。
物件価格の5〜10%が目安
手付金の額は、売主と買主の交渉で決まります。売主が個人の中古ワンルームでは、100万円前後で合意する例が目立ちます。
端数を切った切りのよい金額に設定するのが慣行で、2,180万円の物件なら手付金100万円という形が典型です。新築ワンルームを販売会社から買う場合には、手付金10万円という設定も見られます。
販売会社は自社で在庫を抱えているため、契約の取り付けを優先する事情があるからです。手付金が少ないほど買主は契約を解除しやすくなりますが、売主も倍返しの負担が軽く、解除に踏み切りやすくなります。
人気物件では、手付金を厚くして本気度を示す買主が有利です。売主が複数の申込みを比較する場面では、金額の差が判断材料になります。
手付金は決済時に売買代金へ充当されるため、多めに払っても損はしません。手元資金に余裕があるなら5%以上を提示し、自己資金が乏しいなら10万円から50万円で交渉します。
手付金の額は仲介会社を通じて売主へ打診し、契約日までに合意します。申込書に希望額を記入する欄を設けている会社も多く、内見の段階で相談しておくと調整がスムーズです。
手付金の額を理由に申込み自体が断られるケースは、ほとんど見られません。
売主が宅建業者なら20%が上限
宅地建物取引業法は、業者が売主となる取引に手付金の上限を設けています。売買代金の20%を超える手付金は受領できないと定められています。
2,500万円の新築ワンルームなら上限は500万円で、買主を保護するための規制です。個人間の売買には適用されず、個人が売主になる取引が大半を占める中古ワンルームは規制の外にあります。
とはいえ、20%を超える手付金を求める個人売主はほとんどいません。仲介会社が間に入って相場の範囲へ調整するためです。
上限に近い手付金を提示された場合、資金繰りに不安を抱えた売主である可能性があります。契約前に登記簿を取得し、抵当権の設定状況を確認しておきましょう。
残債が売却価格を上回る物件では、抵当権を抹消できず決済が成立しないリスクがあります。手付金を払った後で契約が流れると、返還を受けるまでに時間が必要です。
業者売主の手付金上限は売買代金の20%です。個人売主の中古ワンルームには上限規制がなく、当事者の合意で決まります。
| 物件価格 | 手付金5% | 手付金10% | 業者売主の上限20% |
|---|---|---|---|
| 1,500万円 | 75万円 | 150万円 | 300万円 |
| 2,000万円 | 100万円 | 200万円 | 400万円 |
| 2,500万円 | 125万円 | 250万円 | 500万円 |
| 3,000万円 | 150万円 | 300万円 | 600万円 |
ワンルーム投資の手付金を支払うタイミング
手付金を渡すのは売買契約を締結する場で、契約書に署名押印した直後に授受します。契約日より前の振込を求められるケースもあります。
融資の事前審査を通してから契約に進む流れが一般的です。事前審査に落ちた状態で契約すると、手付金を失うリスクが高まります。
申込みから契約までは1週間から2週間、契約から決済までは1か月から2か月が目安です。契約後の期間に本審査と金銭消費貸借契約を済ませるため、手付金の準備は申込みの時点で始めておきましょう。
決済日には金融機関の融資が実行され、残代金の支払いと所有権移転登記を同時に行います。手付金を渡してから物件が自分のものになるまで、およそ2か月かかると考えておきます。
売買契約の締結時に支払う
手付金の授受は、売買契約の締結と同時に行われます。契約書への署名押印と手付金の受け渡しは、同じ席で完結します。
仲介会社の店舗か売主の事務所で実施するのが一般的ですが、遠方の場合に選ばれるのが持ち回り契約です。契約書を郵送で回して手付金は振込で処理する形で、現金の持ち歩きが不要になります。
契約の席では、宅地建物取引士から重要事項説明を受けてから署名します。物件の権利関係や管理状況の説明を聞いて疑問が残るなら、署名を保留する判断も可能です。
署名した後で手付金だけ返してもらう対応は受けられません。契約が成立した時点で、解除には手付金の放棄が必要になるためです。
重要事項説明書は事前にメールで送ってもらいましょう。当日読むだけでは、管理費の滞納や修繕積立金の残高までは精査できず、管理組合の状態が収益を左右するワンルームでは判断を誤ります。
契約書には売買代金や引渡し日など、取引の条件が細かく記載されます。読み合わせの時間を含めて、契約の席は2時間ほどかかると見ておきましょう。
印鑑は実印ではなく認印で足りる契約が大半ですが、本人確認書類は必ず持参します。代理人が出席する場合には、委任状と印鑑証明書が別に必要になります。
現金と振込のどちらで払うか
手付金の支払方法は現金か振込のどちらかです。契約日が金融機関の営業時間外なら、現金の持参を求められます。
100万円を超える現金を持ち運ぶ負担は小さくないため、振込で処理できないか仲介会社へ相談します。振込の場合は契約日の午前中までに着金させ、確認が取れてから契約書に署名する流れです。
振込手数料は買主の負担になります。大口の振込では、金融機関が設定する1日あたりの上限に注意が必要です。
インターネットバンキングの上限が50万円に設定されていれば、100万円を1回で送金できません。事前に上限額の引き上げを申請しておきましょう。
窓口での振込なら上限はなく、本人確認書類と印鑑を持参すれば手続きできます。手付金を渡したら必ず領収書を受け取り、取得費の証明として確定申告まで保管します。
| 段階 | 時期の目安 | 支払うお金 |
|---|---|---|
| 物件の申込み | 内見から数日 | なし(申込証拠金を求める会社もある) |
| 融資の事前審査 | 申込みから3〜7日 | なし |
| 売買契約 | 申込みから1〜2週間 | 手付金・印紙税・仲介手数料の半金 |
| 融資の本審査 | 契約後2〜4週間 | なし |
| 決済・引渡し | 契約から1〜2か月 | 残代金・登記費用・固定資産税の精算金 |
フルローンでもワンルーム投資の手付金は現金で必要
フルローンを組んでも、手付金は自己資金から支払います。融資が実行されるのは決済日で、契約の時点では金融機関からお金が出ていないからです。
自己資金ゼロでワンルーム投資を始められない理由は、融資実行のタイミングにあります。販売会社が使う「頭金0円」という表現は、頭金と手付金を分けて考えたうえでの説明です。
頭金は物件価格から融資額を引いた差額を指し、手付金は契約時に前払いする売買代金の一部を指します。フルローンなら頭金は0円になりますが、手付金は別に必要です。
決済時に手付金相当額が戻ってくる仕組みでもありません。融資額から手付金分を差し引いた残代金が、決済日に売主へ渡ります。
融資実行は決済日のため立て替えが必要
金融機関が融資を実行するのは、所有権移転登記を行う決済日の当日です。売買契約から決済までの1〜2か月間、手付金は買主が立て替える形になります。
立て替えた資金が決済日に現金で戻ることはありません。売買代金へ充当され、物件の取得費に組み込まれます。決済日には残代金以外の費用も現金で必要になるため、資金の余力を残しておきます。
決済日に支払う主な費用は、次のとおりです。
- 登記費用と司法書士報酬(20万円〜30万円)
- 固定資産税と都市計画税の日割り精算金
- 火災保険料と地震保険料
諸費用を融資でまかなえる金融機関もあり、オリックス銀行やイオン銀行が対応しています。ただし手付金までは融資の対象になりません。
契約時に必要な現金は、必ず自分で用意することになります。100万円程度の余力を確保してから物件を探しましょう。
決済日は平日の午前中に設定され、金融機関の応接室で1時間ほどかけて手続きします。着金を確認したうえで司法書士へ登記を依頼し、鍵と書類を受け取ります。
手付金を含めた資金計画は、物件を申し込む前に組み立てておきましょう。金融機関の内諾を得てから契約に進めば、手付金を失うリスクを大きく下げられます。
自己資金の目安は物件価格の7〜10%
ワンルーム投資に必要な自己資金は、物件価格の7〜10%が目安です。2,500万円の物件なら、手付金と諸費用で175万円から250万円を見込みます。
自己資金の内訳になる費目は、次の5つです。
- 手付金
- 登記費用
- 仲介手数料
- 印紙税
- 火災保険料
仲介手数料は物件価格の3%に6万円を足し、消費税を加えた額が上限で、2,500万円なら約92万円です。新築を販売会社から直接買う場合は仲介手数料がかからず、かわりに物件価格へ販売経費が乗っています。
登録免許税と不動産取得税は合わせて40万円前後を見込みます。不動産取得税の納付書は取得から半年ほど後に届くため、決済時ではなく後日の支出です。
諸費用ローンを使えば自己資金は圧縮できますが、金利は物件ローンより高く2%台後半から3%台が中心になります。返済比率が上がる分だけ、毎月の収支は厳しくなる点に注意が必要です。
フルローンでも手付金は自己資金から支払います。融資が実行されるのは決済日で、契約時点では借入金を使えません。
| 項目 | 支払時期 | 2,500万円の物件での目安 | ローン利用 |
|---|---|---|---|
| 手付金 | 契約時 | 125万円 | 不可 |
| 印紙税 | 契約時 | 1万円 | 不可 |
| 仲介手数料 | 契約時・決済時 | 約92万円 | 諸費用ローン可 |
| 登記費用 | 決済時 | 20〜30万円 | 諸費用ローン可 |
| 不動産取得税 | 取得から半年ごろ | 10〜20万円 | 不可 |
ワンルーム投資の手付金が返るケースと返らないケース
手付金が返還されるかどうかは、契約を解除する理由によって決まります。ローン特約による白紙解除であれば、手付金は全額が返還の対象です。
買主の都合で解除する場合は手付金を放棄し、売主都合の解除で買主が受け取れるのは手付金の倍額になります。手付解除期日を過ぎると扱いが変わり、違約金として売買代金の10〜20%を請求される契約が一般的です。
違約金の額は手付金だけでは足りず、差額を追加で支払うことになります。期日の記載場所は売買契約書の条文で、契約日から1か月後に設定する例が多く見られます。
手付解除と違約解除で、負担する金額は大きく変わる点が重要です。契約書に書かれた期日を、申込みの段階で把握しておきましょう。
ローン特約なら手付金は全額戻る
ローン特約は、融資が否決された場合に契約を白紙へ戻す条項です。白紙解除が成立すると、手付金は全額が買主へ返還されます。
違約金も発生せず、契約書によっては融資特約と呼ばれます。特約には期限が設定されており、契約日から3週間から1か月後に定める例が一般的です。
期限までに否決の通知を受けたら、書面で解除を申し入れます。期限を過ぎてから否決された場合、特約は使えません。解除するなら手付金の放棄が前提です。
本審査の回答までにかかる日数は、金融機関によって差が出ます。スルガ銀行やオリックス銀行は2週間前後で回答し、地方銀行では3週間から1か月かかる場合もあります。
特約の期限は、審査に必要な日数より長く設定しておくことが重要です。仲介会社に金融機関の審査日程を確認したうえで、契約書へ反映しましょう。
ローン特約には、申し込む金融機関名と借入予定額を明記します。記載した条件と違う金融機関で否決されても、特約が使えない場合があります。
複数の金融機関へ同時に打診する場合、契約書には金融機関名を並べて記載が必要です。否決の連絡が来た日を記録しておきましょう。
解除の申し入れが遅れると、特約の期限切れとみなされます。
手付解除期日を過ぎると違約金になる
手付解除期日は、手付金の放棄だけで解除できる最終日です。期日を1日でも過ぎると、違約金の対象へ切り替わります。
違約金は売買代金の10〜20%で設定され、2,500万円の物件なら250万円から500万円です。手付金150万円では足りず、差額を追加で支払うことになります。
期日の定め方は「契約日から1か月後」や「決済日の1か月前」が一般的です。契約書の第何条に書かれているか、署名する前に確認します。
売主が履行に着手した後も手付解除はできず、リフォームの発注や引越しの手配が着手の例です。投資用ワンルームの多くは入居者がいる状態で売買されるため、売主の履行の着手が問題になる場面は限られます。
期日までに解除を決めるなら、口頭ではなく書面での通知が必要です。内容証明郵便を使えば、通知した日付と内容の記録が確実に残ります。
違約金の条項は、売主と買主のどちらが違反した場合にも適用される内容です。売主が引渡しに応じなければ、買主が違約金を請求する立場になります。
期日の前後で負担が数百万円変わるため、決済までの日程は余裕をもって組みます。融資の本審査に時間がかかりそうなら、決済日の延期を早めに相談しましょう。
売主都合の解除は手付金の倍返し
売主が契約を解除する場合、手付金の倍額を買主へ渡します。手付金150万円なら、買主が受け取るのは300万円です。
払った150万円が戻り、同額が上乗せされるため、買主にとっては損失の補填になります。倍返しの負担が重いこともあり、売主が解除に踏み切る場面は多くありません。
より高い価格で買う人が現れた場合には、倍返しをしてでも解除する売主が出てきます。少額の手付金は、売主にとって倍返しの負担が軽いという意味です。
10万円の手付金なら、売主は20万円を払うだけで契約を解除できます。人気エリアのワンルームでは、手付金を厚めに入れて一方的な解除を防ぐ判断もあります。
決済日を過ぎても売主が引き渡さないなら、手付解除ではなく債務不履行の扱いです。違約金の請求と契約解除を選べるため、対応は仲介会社と弁護士に相談しましょう。
ローン特約の期限内に否決されれば手付金は全額戻ります。手付解除期日を過ぎると、売買代金の10〜20%が違約金として発生します。
| 解除の理由 | 手付金の扱い | 追加の負担 |
|---|---|---|
| ローン特約による白紙解除 | 全額返還 | なし |
| 買主都合(手付解除期日内) | 放棄 | なし |
| 売主都合(手付解除期日内) | 倍額を受け取る | なし |
| 手付解除期日の経過後 | 違約金へ充当 | 売買代金の10〜20%との差額 |
ワンルーム投資の手付金の保全措置
保全措置は、支払った手付金が戻らなくなる事態を防ぐための制度です。売主の宅建業者が倒産した場合でも、買主へ手付金が返還されます。
保全措置が適用されるのは、売主が宅地建物取引業者である取引に限られます。個人が売主の中古ワンルームには義務がなく、保全措置なしの契約が通常です。
新築ワンルームを販売会社から買う場合は対象になり、金額の要件を満たしたときに手続きが行われます。契約前に、保全措置の有無を重要事項説明書で確認しましょう。
保全措置が講じられていれば、売主の倒産や資金トラブルが起きても手付金は保護されます。個人売主の中古ワンルームでは契約前のリスク確認が買主の自己責任になり、保護の仕組みがない前提で金額を決める姿勢が必要です。
保全措置が義務になる条件
保全措置の義務は、物件の完成状態と手付金の額で決まります。完成物件は代金の10%超、未完成物件は5%超が基準です。
手付金が1,000万円を超える場合も、割合にかかわらず対象になります。2,500万円の完成済みワンルームなら250万円を超えたときに義務が生じるため、手付金150万円の取引では不要です。
建築中の新築ワンルームは125万円を超えると対象になり、未完成物件のほうが基準は厳しく設定されています。完成前の物件は担保として機能しにくいためです。
保全措置の方式は、次の3つに分かれます。
- 銀行等による連帯保証
- 保険会社による保証保険
- 指定保管機関への寄託
未完成物件では指定保管機関の方式を使えず、買主が方式を選ぶ権利もありません。売主の業者が選択して手続きを進めます。
保全措置を講じない業者に対しては、買主が手付金の支払いを拒めます。支払いを拒んでも、買主の債務不履行にはなりません。
保全措置の内容は、重要事項説明書の「手付金等の保全措置の概要」欄に記載されます。保証を行う機関名と保全の対象額を、契約前に読み合わせで確認しましょう。
記載が空欄なら、保全措置が不要な金額の取引だと判断できます。
個人売主からの購入では保全措置がない
中古のワンルームは、個人の投資家が売主になる取引が中心です。個人売主には保全措置の義務がなく、手付金は無担保のまま預けることになります。
買主が方式を指定する権利もなく、法律上の請求根拠がないためです。保全措置に頼れなくても、リスクを下げる方法はいくつかあります。
最も現実的なのは、手付金の額を抑える交渉です。50万円に抑えれば、万一のときに失う可能性のある金額も50万円で止まります。
決済までの期間を短くする方法も有効で、契約から決済まで1か月ならリスクを負う期間も1か月です。あわせて、売主の残債状況を登記簿で確認しておきます。
抵当権の設定額が売買価格を大きく上回る物件では、決済日に抵当権を抹消できず引渡しが遅れる可能性があります。仲介会社が売主の資金計画を把握しているか質問し、回答を避ける会社との取引は見送りましょう。
保全措置の対象は売主が宅建業者の取引だけです。個人売主の中古ワンルームでは、手付金の額を抑える交渉が現実的な対策になります。
| 売主 | 保全措置の義務 | 義務が生じる手付金の額 |
|---|---|---|
| 宅建業者(完成物件) | あり | 代金の10%超または1,000万円超 |
| 宅建業者(未完成物件) | あり | 代金の5%超または1,000万円超 |
| 個人 | なし | ― |
ワンルーム投資の手付金の税務上の扱い
手付金は、支払った年の必要経費になりません。物件の取得費に含まれる支出であり、建物と土地に按分されたうえで建物分だけが減価償却を通じて経費化されるからです。
手付金150万円を単年で経費計上すると、修正申告の対象になります。領収書は取得費の証明として、物件を保有している間ずっと保管が必要です。
売却したときの譲渡所得を計算する場面でも、取得費の資料として領収書を使います。手付金を放棄して契約を解除した場合は、物件を取得していないため取得費にはなりません。
手付金の領収書は、売買契約書や重要事項説明書と一緒にファイルしておきます。売却まで10年以上保管するケースが多く、紛失すると取得費の証明に困ります。
手付金は経費にならず取得費になる
不動産所得の必要経費は、賃貸経営で発生した費用に限られます。物件を買うために払った手付金は、必要経費ではなく取得費です。
取得費は減価償却を通じて数十年かけて経費化され、鉄筋コンクリート造のワンルームなら47年かけて償却します。2,500万円の物件で建物価格が1,200万円なら、年間の減価償却費は約25万円です。
手付金150万円も建物と土地に按分され、建物分は減価償却の対象、土地分は対象外になります。土地は時間が経っても価値が減らないと考えるためです。
按分の比率は、売買契約書に記載された消費税額から逆算します。消費税は建物にだけ課税されるため、消費税額から建物価格を割り出せるからです。
契約書に建物価格の記載があれば記載額を使い、記載がない場合は固定資産税評価額の比率で按分します。按分の方法は初年度に決めて以後は変更しないため、契約書を手元に置いて確定申告に臨みましょう。
減価償却費の計算では、建物本体と設備を分けて登録する方法もあります。設備の耐用年数は15年で、初期の償却額を大きくできます。
初年度に選んだ償却方法は、途中で変更できません。物件を保有する期間全体の収支を見て決めましょう。
放棄した手付金と受け取った倍返し金の扱い
契約を解除して手付金を放棄した場合、物件を取得していないため取得費にはなりません。放棄した手付金は家事上の損失として扱われ、給与所得と損益通算できません。
すでに不動産賃貸業を営んでいるなら、扱いが変わる場合もあります。事業に関連する支出として必要経費に算入できるケースがあり、1戸目を保有中に2戸目の契約を解除した場面が該当します。
判断は個別性が高いため、税理士へ確認します。売主都合の解除で倍返しを受けた場合は、上乗せ分が一時所得です。
手付金150万円に対して300万円を受け取ったなら、上乗せ分の150万円が一時所得の収入になります。一時所得には50万円の特別控除があり、150万円から50万円を引いた100万円の2分の1が課税対象です。
課税されるのは50万円で、給与所得と合算して確定申告します。倍返し金からは源泉徴収されないため、申告を忘れないようにしましょう。
手付金は必要経費ではなく取得費です。建物分だけが減価償却を通じて、47年かけて経費になります。
| ケース | 税務上の扱い | 課税・控除 |
|---|---|---|
| 物件を取得した | 取得費に算入 | 建物分を減価償却 |
| 買主都合で放棄した | 家事上の損失 | 損益通算は不可 |
| 売主都合で倍返しを受けた | 上乗せ分は一時所得 | 50万円の特別控除あり |
まとめ
ワンルーム投資の手付金は、売買契約を締結する場で売主へ渡します。相場は物件価格の5〜10%で、2,500万円の物件なら125万円から250万円が目安です。
売主が宅建業者なら売買代金の20%が上限で、個人売主には上限規制がありません。フルローンを組んでも手付金は自己資金から支払うことになり、融資が実行されるのは決済日だからです。
ローン特約の期限内に融資が否決されれば、手付金は全額が戻ります。手付解除期日を過ぎると売買代金の10〜20%の違約金へ切り替わるため、期日は契約書で必ず確認しましょう。
保全措置の義務は売主が宅建業者の場合だけに生じ、個人売主の中古ワンルームでは手付金を抑える交渉が現実的な対策です。税務上、手付金は必要経費ではなく取得費に含まれ、建物分だけが減価償却を通じて経費になります。
契約日に必要な現金は、次の3つです。
- 手付金(物件価格の5〜10%)
- 印紙税(2,500万円の契約書で1万円)
- 仲介手数料の半金(2,500万円で約46万円)
内訳を把握してから、物件の申込みに進みましょう。







