不動産投資をするとさまざまな税金がかかるため、収支を考える上で税金の知識は不可欠です。不動産投資を検討している人の中には、「不動産投資にはどんな税金がかかるの?」「税金を抑える方法はあるの?」などの疑問を感じる人もいるでしょう。
今回の記事では、不動産投資にかかる10種類の税金について解説します。節税対策についても紹介するので、不動産投資を始める前に検討しましょう。
不動産の購入にかかる税金
不動産投資にかかるのは、不動産の購入や家賃などの収入、不動産の所有に対する税金などです。まずは、不動産の購入にかかる3つの税金について説明します。
- 税金①:不動産取得税
- 税金②:印紙税
- 税金③:登録免許税
税金①:不動産取得税
不動産取得税は、家や建物を購入したとき、または建物を新築したときなどにかかる地方税です。不動産取得税の税額は次の通り計算します。
- 税額=不動産の課税標準額×税率(3%)
※住宅用以外の建物の取得については4%の税率が適用されます。
課税標準額は、購入価格ではなく固定資産税評価額です。固定資産税評価額は、土地については購入価格の7割程度、建物は5~7割程度と低くなります。
さらに、2024年3月31日までに取得した土地については、課税標準額を1/2とする軽減措置が適用されます。建物も新築住宅取得の特例などで、課税標準額を抑えられるケースがあります。
不動産取得税の計算例
【モデル】
5,000万円の土地(固定資産税評価額3,500万円)と5,000万円の建物(固定資産税評価額2,500万円)を購入
【計算例】
税額=土地の課税標準額(3,500万円×1/2)×3%+建物の課税標準額(2,500万円)×3%
=127.5万円
税金②:印紙税
印紙税は、不動産売買契約書や工事請負契約書(新築の場合)、金銭消費賃借契約書などの印紙税法に定める文書に対する課税です。
税額は購入価格などに応じて次の通りです。1,000万円以下や10億円超については省略しました。
- 1,000万円超5,000万円以下:2万円(1万円)
- 5,000万円超1億円以下:6万円(3万円)
- 1億円超5億円以下:10万円(6万円)
- 1億円超5億円以下:10万円(6万円)
()内の税額は、2022年3月31日までに作成される文書に適用される軽減措置の金額です。軽減措置が適用されれば、1億円の不動産を購入したときの印紙税は6万円になります。
税金③:登録免許税
登録免許税は、購入した不動産を登記(所有権の移転登記)するときにかかる税金です。登録免許税の税額は次の通り計算します。
- 土地:税額=固定資産税評価額×税率(1.5%)
- 建物:税額=固定資産税評価額×税率(2%)
土地に対する税率は本則では2%ですが、特例により2023年3月31日までは1.5%に軽減されます。ローンを組んで抵当権設定登記をする場合、0.4%の登録免許税が加算されます。
登録免許税の計算例
【モデル】
5,000万円の土地(固定資産税評価額3,500万円)と5,000万円の建物(固定資産税評価額2,500万円)を購入
【計算例】
税額=土地の固定資産税評価額(3,500万円)×1.5%+建物の固定資産税評価額(2,500万円)×2%
=102.5万円
不動産収入にかかる税金
次は、家賃などの不動産収入にかかる4つの税金について説明します。
- 税金④:所得税
- 税金⑤:住民税
- 税金⑥:個人事業税
- 税金⑦:消費税
税金④:所得税
不動産収入にかかる税金の1つ目は所得税です。不動産収入から「必要経費」を差し引いて「不動産所得」を計算し、確定申告によって納税します。サラリーマンが副業で不動産投資をする場合も確定申告が必要です。
必要経費や確定申告について詳しく知りたい人は、次の記事を参照して下さい。
不動産所得は総合課税されるため、給与所得などそのほかの所得と合算して総所得金額を計算します。各種控除後の課税所得を計算し、次の速算表に当てはめれば税額が確認できます。
所得税の速算表:
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
モデルケースで税額を計算してみます。
所得税の計算例
【モデル】
不動産投資による総収入1,000万円、必要経費600万円、所得から控除される金額200万円
【計算例】
- 不動産所得=総収入(1,000万円)-必要経費(600万円)=400万円
- 課税所得=不動産所得(400万円)-控除金額(200万円)=200万円
- 所得税額=課税所得(200万円)×税率(10%)-控除額(9万7,500円)=10万2,500円
所得税は累進課税が適用されるため、不動産所得が増えたり給与所得が加わると税率がアップして、所得税額が大幅に増えることもあります。
税金⑤:住民税
住民税は、前年の所得に対してかかる地方税です。確定申告を済ませていれば、地方自治体から「住民税課税決定通知書」が送付され税額を確認できます。
都道府県民税と市区町村税を合わせて課税所得の10%です。所得税とは異なり、所得金額にかかわらず一律に課税されます。
税金⑥:個人事業税
個人事業税は、所定の事業(法定業種)に対してかかる地方税です。確定申告を済ませていれば、別途申告などは不要です。
税額は課税所得に業種ごとに異なる税率をかけて計算します。不動産貸付業に対する税率は5%です。不動産投資による課税所得が200万円の場合、税額は10万円(=200万円×5%)になります。
税金⑦:消費税
不動産投資では、消費税がかかる収入とかからない収入があります。
アパートやマンションの家賃や敷金、礼金は非課税です。一方、事務所や店舗、駐車場などの家賃については消費税がかかります。居住用の賃貸は非課税、それ以外は課税されるということです。
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不動産の所有にかかる税金
不動産を取得したり運用で収入を得たときだけでなく、所有しているだけでも税金がかかります。不動産の所有にかかる税金は次の2つです。
- 税金⑧:固定資産税
- 税金⑨:都市計画税
税金⑧:固定資産税
固定資産税は、土地や建物の所有者に毎年かかる地方税です。1月1日時点の不動産所有者に納税義務があります。固定資産税評価額に基づいて地方自治体が税額を計算し、「固定資産税明細書」によって通知されます。税額の計算方法は次の通りです。
- 税額=課税標準額×税率(1.4%)
課税標準額は原則、固定資産税評価額と同額です。購入金額1億円(固定資産税評価額6,000万円)の不動産を所有していると、税額は84万円(=6,000万円×1.4%)になります。
ただし、「小規模住宅用地の特例措置」「新築住宅にかかる減額措置」などの税制上の優遇措置が適用されれば、税額が半分以下になることもあります。
固定資産税の計算方法について詳しく知りたい人は、次の記事を参照して下さい。
税金⑨:都市計画税
都市計画税は、固定資産税と同様、1月1日時点の土地や建物の所有者に毎年かかる地方税です。固定資産税は一般財源として徴収されるのに対し、都市計画税は都市整備などの費用に充てる目的税として課税されます。
都市計画税がかかるのは原則、都市計画法による市街化区域内の不動産です。固定資産税と異なり、区域外の不動産には課税されません。税額の計算方法は次の通りです。
- 税額=課税標準額×税率(上限0.3%)
課税標準額は固定資産税と同様、固定資産税評価額をベースに税制上の優遇措置を加味して計算します。税率は市町村によって異なりますが0.3%が上限です。
市街地区域内で購入金額1億円(固定資産税評価額6,000万円)の不動産を所有し、税制上の優遇措置なし、都市計画税率0.3%の場合、税額は18万円(=6,000万円×0.3%)です。
不動産の相続にかかる税金
最後に、不動産の相続時にかかる相続税について説明します。
税金⑩:相続税
相続税は、不動産の所有者が死亡したとき、遺産を相続する遺族が支払う税金です。不動産以外の相続財産も合算して課税されます。税額の計算方法は次の通りです。
- 税額=(相続財産の総額-基礎控除額)×税率
- 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人数
また、実際に相続税を計算するときは、次の速算表で計算した法定相続人ごとの税額を合計して総額を算出します。
相続税の速算表:
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
不動産を相続するとき、土地や建物の価値は以下のように評価されます。
- 土地:路線価と同額(※)
- 建物:固定資産税評価額と同額
※路線価が設定されていない土地は、固定資産税評価額に所定の倍率を乗じて計算します。
路線価や固定資産税評価額は実勢価格より低いため、現金で不動産を買ってから相続が発生した場合、相続税は安くて済みます。
不動産投資による節税効果
不動産投資にかかる10種類の税金について解説しました。合計すると高額になりますが、不動産投資によって得られる節税効果もあります。主なものは次の4つです。
- 効果①:減価償却費による所得の圧縮
- 効果②:損益通算による所得税・住民税の軽減
- 効果③:青色申告で10万円~65万円の所得控除
- 効果④:相続税評価額を下げて相続税を軽減
効果①:減価償却費による所得の圧縮
建物を取得して投資する場合、建物の減価償却費を必要経費にできます。実際に支出することなく所得を減らして所得税を軽減できるため、節税効果を実感しやすいでしょう。
減価償却費は次の通り計算します。
- 減価償却費=取得価額×償却率
償却率は建物の構造などで決まっています。たとえば、木造の建物の償却率は0.046です。5,000万円で購入した建物の減価償却費は230万円(=5,000万円×0.046)になります。償却費を除く不動産投資の所得から、必要経費として230万円差し引けます。
効果②:損益通算による所得税・住民税の軽減
不動産所得が赤字の場合、ほかの所得と損益通算することで所得税や住民税を軽減できます。
黒字の所得から不動産所得の赤字を差し引いて課税所得を下げるのです。
損益通算できる所得は、不動産所得や事業所得など4種類に限定されています。サラリーマンが副業で不動産投資をする場合、給与所得から不動産所得の赤字を差し引けます。
減価償却費が大きい場合や、初期費用のかかる不動産投資の初年度など、大きな赤字が出たときは助かるでしょう。赤字額が大きいほど節税額は大きくなるからです。
損益通算による節税額の計算方法について知りたい人は、次の記事を参照して下さい。
効果③:青色申告で10万円~65万円の所得控除
不動産投資の規模が一定以上になると、青色申告することで55万円または65万円の所得控除(青色申告特別控除)が受けられます。一定以上の規模とは次の通りです。
- 独立した家屋5棟以上を賃貸
- アパートやマンション10室以上を賃貸
- 駐車場を50台分以上を賃貸
複式簿記による取引内容の記帳など、手続きは増えますが、所得控除以外にも税制上の優遇措置の多い青色申告はおすすめです。一定以上の投資規模に達していない投資家も、青色申告によって10万円の所得控除を受けられます。
青色申告による税制上の優遇措置について詳しく知りたい人は、次の記事を参照して下さい。
効果④:相続税評価額を下げて相続税を軽減
不動産投資は相続対策にも効果的です。現金で不動産を購入することにより、相続税評価額が下がり相続税が安くなるからです。
相続税を計算するとき不動産の評価額は、路線価(土地)や固定資産税評価額(建物)を使用するため購入価格よりも低くなります。また、土地や建物を賃貸した場合、借りた人に借地権や借家権が発生するため、不動産の評価額はさらに低下します。
相続税には累進課税が適用されるため、評価額が下がり税率が下がれば節税額は大きくなるでしょう。不動産は高額であるため、相続対策として大きな効果を発揮するケースもあります。
不動産を活用した相続対策について詳しく知りたい人は、次の記事を参照して下さい。
まとめ:不動産投資にかかる税金コストと節税効果を理解して投資計画を立てよう
不動産投資には10種類の税金がかかります。
- 不動産の購入時にかかる税金(不動産取得税、印紙税、登録免許税)
- 不動産収入にかかる税金(所得税、住民税、個人事業税、消費税)
- 不動産の所有にかかる税金(固定資産税、都市計画税)
- 不動産の相続にかかる税金(相続税)
税金が高額になり不動産経営を圧迫する可能性もあるため、不動産投資のコストとしていくら税金がかかるか、事前に把握することが必要です。一方、税制上の優遇措置を上手く活用できれば、大きな節税メリットを得られることもあります。
投資計画を立てるときは、税金コストと節税効果を十分理解して慎重に検討しましょう。税金に関する幅広い知識が必要になるため、専門家に相談することも大切です。