不動産投資をするうえで、借主の家賃の滞納は大きなリスクです。対応に時間や労力がかかるだけでなく、大きな損失を被ることもあります。
不動産の賃貸経営を考えている人の中には、「家賃をどうやって督促すればいいの?」「どんな法的手段があるの?」などの疑問を感じている人もいるでしょう。
本記事では、家賃滞納が発生したときの3つの対処法について解説します。法的手段や家賃の滞納を防ぐ方法も紹介するので、家賃滞納対策を準備し不動産投資のリスクを軽減しましょう。
目次
対処法①家賃を督促する
家賃の滞納が発生すると、まずは口頭で支払いを督促します。入居者がすぐに家賃を支払ってくれれば問題解決ですが、督促しても入居者が家賃を払ってくれないときは、どうすればいいでしょう。まず最初に、口頭で督促しても家賃を支払ってもらえない場合の対処法を説明します。
内容証明郵便を使って督促する
対処法の1つが、内容証明郵便を使って支払い督促を行うことです。支払い期限や支払い方法、支払いが無かった場合の対応(訴訟を起こす、退去を求めるなど)を記載して送付します。
入居者が任意に支払うことを求める点では口頭での督促と同じですが、一定の効力が期待できます。正式な書面での督促であることや、支払わなかった場合の対応が記載されていることで、滞納者に一定のプレッシャーを与えられるでしょう。
また、今後裁判になった場合には適切に督促していた証明にもなります。
簡易裁判所へ支払督促を申し立てる
支払督促とは、簡易裁判所に申立することによって、簡易裁判所が自分の代わりに家賃の支払いを督促してくれる制度です。訴訟と比べて時間や費用を抑えられます。
審査は書類審査だけであるため、裁判所に出向く必要がありません。また、裁判所に支払う手数料も、訴訟の場合の半額で済みます。入居者が支払督促を受けて2週間以内に異議の申立を行わなければ判決が確定します。
ただし、入居者が異議の申立を行った場合、支払督促には強制力がないため、問題は解決しません。
少額訴訟を起こす
家賃の滞納額が60万円以下ならば、少額訴訟を起こすという方法もあります。少額訴訟とは、1回の審理で判決を出す簡便な訴訟手続です。
少額訴訟は60万円以下の金銭の請求に限定されますが、審理が1日で終わり費用も訴訟より安く済みます。支払督促同様、入居者の異議申立がなければ判決が確定します。また、少額訴訟の判決には強制力がないため、入居者が異議申立を行えば訴訟などに移行せざるを得なくなります。
法的手段に訴える場合、まずは負担の少ない支払督促や少額訴訟を利用して、入居者が応じない場合に民事訴訟を行う、というのも選択肢の1つです。
未払金請求に関する法的手段について詳しく知りたい人は、次の記事を参照して下さい。
対処法②保証人などに代位弁済してもらう
入居者が滞納家賃を支払ってくれない場合、代位弁済(代わりの人に支払ってもらう)という方法もあります。ただし、代位弁済を請求できるのは、連帯保証人や保証会社をつけていた場合だけです。
連帯保証人に請求する
連帯保証人は入居者と同じ義務を負うため、入居者が家賃を支払ってくれない場合や建物を壊して弁済してくれない場合など、その費用を連帯保証人に請求できます。入居者に督促しても家賃を支払ってもらえない場合は、連帯保証人に請求しましょう。
入居時に連帯保証人をつけるときは、本人同意の上、賃貸契約書に署名してもらうのが一般的です。気をつけたいのが、2020年4月1日の民法改正です。連帯保証人が弁済する上限額を設定しないと、連帯保証契約が無効になってしまいます。
連帯保証人の責任などについて詳しく知りたい人は、次の記事を参照して下さい。
保証会社に請求する
保証会社とは、家賃が滞納した場合など、入居者に代わって支払いを行う会社です。入居者が保証料を支払い、保証会社と「保証委託契約」を締結していることが条件です。
保証会社利用のイメージ:
入居者が連帯保証人をつけられない場合や、貸し手が保証会社をつけることを入居条件にした場合などで利用されます。保証会社をつければ、督促しても入居者が家賃を払ってくれない場合でも、保証会社に請求すればいいので安心です。
対処法③入居者に立ち退きしてもらう
家賃を請求しても支払ってもらえない場合、入居者に立ち退きをしてもらうこともあります。ただし、状況次第では立退料が必要になるケースもあるため注意が必要です。立退料を支払うことなく、入居者に出て行ってもらう方法について紹介します。
賃貸契約を解除・更新拒否する
1つ目の方法は、賃貸契約を解除することです。賃貸契約には、解除事由(家賃の滞納など)と解約予告期間(一般的に1~2か月)を定めるのが一般的です。解除事由に該当すれば、賃貸契約の解除の申入をして予告期間経過後に退去してもらいます。
ただし、貸し手の都合で契約を解除する場合は、解除日の6か月前に解除の申入をしなければなりません。
2年契約など、契約期間が決まっている場合は、契約満了まで待って更新拒否するという方法もあります。しかし、契約満了までの期間が長く家賃の未払いが続けば大きな損失を被る可能性もあるため、満了時期を考慮して契約解除か、更新拒否かを決めましょう。
明け渡し訴訟をする
賃貸契約を解除、または更新拒否しても入居者が退去してくれない場合、明け渡し訴訟など、法的手段が必要になるケースもあります。明け渡し訴訟とは、入居者が賃貸物件から退去することを求める民事訴訟です。
判決で訴えが認められると、法的拘束力のある退去依頼が可能になります。家賃の滞納分があれば、賃貸物件の明け渡しと家賃請求を同時に行うといいでしょう。
強制執行を申し立てる
明け渡しの判決が出ても入居者が立ち退かない場合、裁判所に強制執行の請求ができます。執行官(裁判所職員)の立ち会いのもと、強制的に入居者を退去させてくれます。
ただし、強制退去に伴う費用は貸し手が負担しなければなりません。あとで、入居者に請求できますが回収可能かどうかは不明です。費用も高額になることから、できれば避けたい最終手段だと考えて下さい。
家賃の滞納を防ぐ方法
家賃の滞納が発生すると、解決までに多くの時間や費用、労力が必要になるケースがあります。不動産投資をするときは、滞納の発生を未然に防ぐことが大切です。家賃の滞納を防ぐ主な方法を紹介します。
防止策①:入居者の審査を厳格に行う
家賃滞納を防止する1つ目の方法は、入居者の審査を厳格に行うことです。家賃の支払い能力を判断するために、年収はもちろんのこと、勤務先や勤続年数など可能な限り情報を収集しましょう。
また、実際に面談して第一印象や会話などから、人柄や性格などを判断することをおすすめします。初対面で得られる情報は限られますが、会ってみないとわからないこともあるでしょう。
防止策②:連帯保証人や保証会社をつける
2つ目の方法は、連帯保証人や保証会社をつけることです。入居者から家賃の回収が難しい場合、代わりに請求できるからです。
連帯保証人をつける場合、入居者とともに連帯保証人の支払い能力などをしっかりと審査しましょう。保証会社の方が確実な支払いが期待できますが、入居者は保証料が必要になるため予算オーバーで入居を諦めるケースも考えられます。
デメリットもありますが、不動産投資のリスクを減らすために、連帯保証人や保証会社をつけることは効果的です。
防止策③:滞納に備えた敷金を取る
3つ目の方法は、家賃の滞納に備えて敷金を多めに取ることです。家賃の滞納や部屋を傷付けた場合の修理費などの担保として入居時に前払いするお金を敷金といいます。家賃を支払ってもらえない場合、敷金から家賃を差し引けます。
敷金の金額は、家賃の1か月分くらいが目安です。家賃の滞納に備えて、敷金を多めに取るという選択肢もあります。ただし、敷金0円の物件も増えているため、競合すると不利になることも考えられます。
防止策④:口座振替などで支払い漏れを防ぐ
4つ目の方法は、家賃支払いの「うっかり忘れ」を防ぐことです。支払い方法を銀行の口座振替やクレジットカード払いにすると、毎月決まった日に自動的に家賃が支払われます。
現金支払いや振込払いとは異なり、入居者がうっかりして支払日を失念するリスクを減らせます。
まとめ:法的手段は時間や手間がかかる。家賃滞納の事前防止・早期解決が重要!
家賃の滞納が発生した場合、話し合いで解決できなければ法的手段が必要になるケースもあります。法的手段は民事訴訟と比較すると、時間や手間、費用の少ない支払督促や少額訴訟などもあります。
しかし、慣れない人が法的手段を講じるのは大きな負担です。サラリーマンが副業で不動産投資をする場合はより負担が大きくなるでしょう。不動産投資のリスクを減らすためには、事前に滞納防止策をしっかり行い、滞納が発生したら話し合いなどで早期に解決することが重要です。