団体信用生命保険は、マイホームや不動産投資用物件をローンで購入する際に加入する保険です。しかし、どのような保険なのか今一つイメージできない人もいるでしょう。「生命保険に加入しているけれど、それでは不足なのか」と疑問に思うかもしれません。
そこで本記事では、団体信用生命保険(団信)の種類や、一般的な生命保険との5つの違い、団信に加入するときの注意点を解説します。団信の特徴を理解でき、どのような団信を選べばいいのかがわかります。
団信は、万一の場合に家族を守るための大切な保険です。ぜひ保険内容を理解して、ご自身に合う団信を選んでください。
目次
団体信用生命保険とは?
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンや不動産投資ローンの返済中に、契約者に万一の事態があったときに保険金で残債を返済する保険です。万一の事態とは、契約者が死亡したり高度障害状態になることです。
団信に加入していると、契約者が万一の事態によってローン返済不可能な状況に陥っても、ローン残高が団信から返済されます。そのため、家族にはローン残高0円でマイホームまたは不動産投資用物件が残ります。
マイホームならそのまま住み続けることができ、不動産投資用物件なら家賃収入を得たり売却してキャッシュを得られます。団信に加入していなければ、家族にローン返済義務が残るため、万一の事態が起きても安心して生活をするために団信は不可欠な保険です。
団体信用生命保険の種類
団体信用生命保険(団信)には、複数の種類があるため自分に合った団信を選ぶことが大切です。団信は次の3種類に分けられます。
- 通常の団体信用生命保険
- 三大疾病特約付き団体信用生命保険
- 八大疾病特約付き団体信用生命保険
保障内容および支払額が異なるため、慎重な検討が必要です。ローンを実際に借り入れた後は、団信の種類を変えることができません。以下でそれぞれについて解説します。ぜひ、それぞれの特徴を知って自分に適した団信を選んでください。
1.通常の団体信用生命保険
通常の団体信用生命保険は、契約者が死亡したり高度障害状態になった場合に適用されます。高度障害状態とは、身体機能が相当低下している状態であり、両目の失明や終身常に介護を要する状態等が該当します。
この通常の団信はローンに組み込まれているため、保険料の上乗せ額はありません。0円で加入できるともいえます。次項で紹介する特約付き団信は、金利が上乗せされるため支払額が増加します。
2.三大疾病特約付き団体信用生命保険
三大疾病特約付き団体信用生命保険は、通常の「死亡または高度障害状態」に加えて三大疾病で所定の状態になった場合に適用されます。三大疾病とは「がん・急性心筋梗塞・脳卒中」です。ただし、三大疾病になっただけでは支払われない場合があります。
三大疾病が各金融機関によって定められた所定の状態になったときに支払われるため、条件を事前に確認しておきましょう。三大疾病特約付き団信は、ローン金利に年0.25~0.30%程度上乗せされる場合が多いです。
3.八大疾病特約付き団体信用生命保険
八大疾病特約付き団体信用生命保険は、「死亡・高度障害状態」「三大疾病」に加えて、5つの重度慢性疾患で所定の状態になった場合に適用されます。5つの重度慢性疾患は次のとおりです。
- 糖尿病
- 高血圧症
- 慢性腎不全
- 肝硬変
- 慢性膵炎
所定の状態(就業不能の継続等)は、各金融機関によって定められています。八大疾病特約付き団信は、ローン金利に年0.30%程度上乗せされます。
団信と一般的な生命保険の5つの違い
「既に普通の生命保険に加入しているけれど、団信はどこが違うのか」と思う人もいるでしょう。団信と一般的な生命保険には、5つの違いがあります。それらを次の表にまとめました。
団体信用生命保険 | 一般的な生命保険 | |
---|---|---|
保険料 | ・年齢や性別による違いはない ・残債額減少に伴って支払保険料も減少する |
・年齢や性別による違いがある ・支払期間中の支払保険料に変化はない |
保障期間 | ローン返済期間 | 契約した期間 |
生命保険料控除 | 対象外である | 対象である |
保険金の受取人 | 融資している金融機関 | 法定相続人 |
保険金の額 | ローンの残債額 | 契約時に定めた金額 |
各項目について、以下で詳しく解説します。
生命保険について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
団信と一般的な生命保険の違い①保険料
団信の場合、保険料はローンに含まれる(または上乗せする)ため、契約者の年齢や性別によって異なることはありません。ただし、年齢によっては加入できない団信もあります。また、団信はローン金利の形式で支払うため、ローン返済が進んで残債額が減るにつれて、支払保険料も減少します。
一方、一般的な生命保険は契約者の年齢や性別で保険料が異なります。例えば、年齢が高めの人が加入する場合、保険料が高くなる場合が多いです。また、契約期間中に支払保険料額に変化はありません。
団信と一般的な生命保険の違い②保障期間
団信の保障期間はローンの返済期間と連動しています。多くの場合、ローンの借入開始と同時に保障も始まり、ローン完済と同時に保障も自動的に終了します。
生命保険は契約者があらかじめ契約した期間を保障するため、例えば終身保険なら保障期間は一生涯です。定期保険の場合は契約期間が終了すると、保障も終わります。
団信と一般的な生命保険の違い③生命保険料控除
生命保険料控除とは、納税者が生命保険料等を支払ったときに一定額の所得控除を受けられる仕組みです。ただし、保険金の受取人が契約者本人か配偶者、その他の親族の場合に限られます。
そのため、保険金の受取人が金融機関である団信の保険料は、生命保険料控除の対象外です。一般的な生命保険の場合は、年間最大4万円の控除を受けられます。
団信と一般的な生命保険の違い④保険金の受取人
実際に保険金が支払われる場合、団信の保険金受取人はローン契約をした金融機関です。金融機関が保険金を受け取り、ローン残高に充当することでローンが完済されます。そのため、家族等に保険金は入りません。
それに対して、一般的な生命保険の保険金受取人は契約者が指定することができます。
団信と一般的な生命保険の違い⑤保険金の額
支払われる保険金の額は、団信の場合はローンの残債額です。団信はあくまでローン完済を保障するための保険であるため、満期保険金はありません。一方、生命保険は契約時に定めた金額を受け取ることができます。また「月○万円」「一括○千万円」等、契約時に選択可能です。
団信に加入するときの注意点
「家族のためにも団信は大切だとわかったから、加入しよう」と思う人も多いでしょう。しかし、団信に加入するときは以下の3点に注意する必要があります。
- 健康状態によっては加入できないことがある
- 免責事項をよく確認する
- 保障内容が生命保険と重複していないか見直しする
必ずしも前述した3種類の団信に加入できるとは限りません。また、これら3つの注意点を見過ごしていると損をするおそれもあります。以下で各注意点について詳しく解説します。自分に合った、損をしない団信を選ぶために、ぜひ参考にしてください。
1.健康状態によっては加入できないことがある
団信は生命保険の一種であるため、契約時に健康状態を告知する必要があります。契約者の健康状態によっては団信に加入できないことがあります。その場合はローン自体も断られる可能性が高いです。
「自分は健康ではないから無理かも」と諦めたくなるかもしれません。しかし、3種類の団信に加入できない場合の対応策を2つ紹介します。
対応策①フラット35を利用する
フラット35とは、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供するローンです。名称は、最長35年間の全期間固定金利の住宅ローンであることに由来します。フラット35は団信への加入が任意なので、健康上の理由で団信に加入できない人も利用可能です。
ただし、団信に加入しない場合は万一の事態になったときに、ローン残高が全て残ります。家族への負担がかかるおそれがあるという点に注意が必要です(※)。
※緩和型の生命保険に加入することで、カバーする方法もあります。
対応策②ワイド団信に加入する
健康上の理由で前述の3種類の団信に加入できない人でも、ワイド団信に加入できる可能性があります。ワイド団信(引受基準緩和型ローン商品向け団体信用生命保険)とは、引受範囲を拡大しているため加入条件が緩和された団信付きローンです。
保障内容は一般の団信と同じです。ただし、金融機関による引受審査があるため、健康上の問題を抱える人が必ず加入できるとは限りません。
2.免責事項をよく確認する
団信には免責事項が定められていることがあるため、しっかり確認する必要があります。免責事項の例として、次のものが挙げられます。
- 告知内容に誤りがあった
- 契約者が故意に高度障害状態になった
- 契約者が契約後ごく短期間で自殺した
免責事項とみなされると保険金は支払われません。契約時に内容をよく確認しておきましょう。
3.保障内容が生命保険と重複していないか見直しする
生命保険に既に加入している場合は、団信の保障内容が生命保険と重複していないか見直しをしてみましょう。例えば、生命保険の保障内容に遺族の住居費が含まれているなら、団信で帳消しにできるため、生命保険の保障内容から除外できます。
保険料を重複して支払うのはもったいないため、団信と生命保険の保障内容を比較検討してみてください。
まとめ:団体信用生命保険の種類や生命保険との違いをおさえて、加入を検討しましょう
団体信用生命保険の主な3種類や、生命保険との違い、団信加入時の3つの注意点を解説しました。団信は自分に万一の事態があった場合に、家族に住居や投資物件を残せる大切な手段です。
ただし、保険金はローン残高返済に充てられるのであって、現金を受け取れるわけではありません。団信で住宅を、生命保険で現金等を残せるよう、両者の保険をうまく使い分けてください。団信と生命保険で保障内容に重複がないようにチェックすることも重要です。
家族のために、ぜひ自分に合った団信への加入を検討してみてください。