レバレッジ効果とは?不動産投資における事例と注意点を紹介

監修者

鳥谷威

有限会社バード商会代表

鳥谷威

CFP認定者/1級ファイナンシャルプランニング技能士。

レバレッジ効果とは何かご存知でしょうか。借金をして大きな金額を動かせるということまでは多くの人が知っているかもしれません。

しかし、不動産投資におけるレバレッジ効果はFXや株式の信用取引などより少し複雑です。負債コストを考慮したうえで逆レバレッジ(逆レバ)の検討もしておかなければなりません。

この記事では、レバレッジ効果とはどのようなものかを事例を踏まえて分かりやすく解説します。レバレッジ効果のメリットや注意点もわかるので、正しく理解し活用されてください。

目次

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レバレッジ効果とは?どのような意味があるのか

レバレッジ効果を簡単に説明に説明すると借金をして投資効率を高める効果です。少ない自己資金で大きな資産を運用することから、てこ(lever)に例えられます。

つまり、レバレッジ効果を活用するとより短期間で資産を大きく増やすことができます。一方、レバレッジ効果は自己資本に対して大きな損失が出るなど負の効果もあるため注意が必要です。レバレッジ効果のメリットや注意点について詳しくは後述します。

レバレッジ効果の事例

レバレッジ効果の理解を深めるために、レバレッジ効果のある不動産投資や株式信用取引、FXそれぞれの事例を確認していきましょう。

以下の章を読むと、いずれの取引でも、レバレッジによって実質利回り(投資効率)が高まっていることがわかりますが、不動産投資は資産の売却までに返済義務があることに特徴があります。裏を返せば、不確実性の高いキャピタルゲインではなく、資産自体の収益(インカムゲイン)による返済が可能です。

不動産投資のレバレッジ効果

1年間で200万円の純利益が得られる不動産を3,000万円で購入したとします。この不動産の利益率(ROA)は約6.7%(純利益200万円/総資産3,000万円×100)で、自己資本利益率(ROE)も約6.7%です。

次に、1,000万円の融資を受けてこの3,000万円の物件を購入したとします。ROAは約6.7%と変わりませんが、ROEは20.0%(純利益200万円/自己資本1,000万円×100)です。

しかし、融資を受けると当然ながら返済負担が生じます。年間返済額を約110万円とすると現金収支(キャッシュフロー)は90万円となるため、実質利回りは9.0%となります。

レバレッジなし レバレッジあり
不動産の価格(総資産) 3,000万円 3,000万円
自己資本 3,000万円 2,000万円
他人資本(借入金) 0万円 1,000万円
純利益 200万円 200万円
年間返済額 0万円 110万円
現金収支
(キャッシュフロー)
200万円 90万円
実質利回り 6.7% 9.0%

株式信用取引のレバレッジ効果

株式の信用取引は、委託保証金率が30%以上と決められています。つまり、取引額(運用資産額)に対して30%の保証金(口座残高など)を委託すれば取引が可能です。レバレッジにすると約3.3倍まで掛けられます。

不動産投資と比較するため、3,000万円分(株価3,000円×1万株)の取引を行う場合を見ていきましょう。レバレッジを掛けない場合、1株当たり200円値上がりしたら利益は200万円となり、利回りは約6.7%(利益200万円/投資額3,000万円)です。

レバレッジを掛けると委託保証金率30%のとき900万円で取引可能ですので、利回りは約22.2%(利益200万円/投資額900万円)です。

なお、株式信用取引は現引きや現渡しをする場合を除いて、反対売買によるキャピタルゲインやキャピタルロス(差損益)を口座残高の増減によって返済します。

FX(外国為替証拠金取引)のレバレッジ効果

FXの委託保証金率は4%以上と定められているため、レバレッジにすると25倍です。米ドル円(USD/JPY)で3,000万円(1米ドル100円のとき30万通貨)を取引する場合を見ていきましょう。

米ドル円の価格相場が100円から107円となったときに買い建玉を決済すると、利益は210万円(30万通貨×7円)です。よって、利回りは7.0%(利益210万円/投資額3,000万円)となります。

レバレッジ25倍で取引すると必要保証金は4%の120万円で済むため、利回りは175%(利益210万円/投資額120万円)です。レバレッジの倍(25倍)の分だけ、利回りが高まったことがわかります。

レバレッジ効果のメリット3選

レバレッジ効果のメリットは次の3つです。大まかにまとめると、レバレッジ効果によってより効率的に資産形成が可能となります。

レバレッジ効果のメリット

  • メリット①少額の資金でも大きな利益を出せる
  • メリット②手元資金が残るのでリスクへの備えや他の資産を運用できる
  • メリット③事業や資産の拡大に必要な時間を短縮できる

メリット①少額の資金でも大きな利益を出せる

レバレッジ効果の直接的なメリットは、少額の資金でも大きな利益を出せることです。前述のとおり、レバレッジ効果によって自己資本利益率(ROE)が高まります。

メリット②手元資金が残るのでリスクへの備えや他の資産を運用できる

レバレッジ効果は、同じ利益を得るために必要な資金を抑えられるという見方もできます。例えば、年間100万円の利益を得るために1,000万円必要だったものが、レバレッジを掛けると200万円で済む場合があります。

差額の800万円は手元に残り、病気やけがをして勤労所得を得られなくなったときなどに備えることが可能です。また、不動産投資においては空室期間や修繕が必要になった際の備えとしても有効です。

備えだけでなく、例えば複数の資産に分散投資してリスクを抑えることもできます。

メリット③事業や資産の拡大に必要な時間を短縮できる

これまでのメリットをまとめたようなものですが、レバレッジによって事業や資産の拡大に必要な時間を短縮できます。少額の資金でも大きな利益を得られ、さらに手元資金を有効活用しながら他の資産を運用できるからです。

仮に会社員が不動産投資を専業にしようとすると、生活費をまかなえるほどの安定したキャッシュフローが求められます。例えば、区分マンション1室だけでは生活費をまかなうのは難しいため、その規模を拡大していかなければなりません。

このとき、レバレッジ効果を活用すると効率的に規模の拡大が可能となります。

レバレッジ効果を活用する際の注意点とは?

ここまでレバレッジ効果の良い面だけ取り上げて解説してきましたが、実はレバレッジ効果には注意すべき点があります。それぞれ解説していきますので、事前に把握しておきましょう。

レバレッジ効果の注意点

  • 返済額だけキャッシュフローが悪化する(負債コスト)
  • 逆レバにより損失が拡大する可能性がある
  • K%を決める融資条件は物件や個人の属性によって異なる

返済額だけキャッシュフローが悪化する(負債コスト)

不動産投資でレバレッジ効果を得る場合、金融機関から融資を受けることになります。融資を受けると、借りたお金(元本)はもちろん、金利に応じて発生する利息(負債コスト)も負担しなければなりません。

例えば、金利10%で100万円借りて返済は1年後に一括110万円なら、1年間に利息10万円を超える利益を出さなければなりません。借入れをしない場合は10万円の負債コストは生じないため、負債コスト分だけキャッシュフローが悪化してしまいます。

なお、借入金の返済額のうち元本分は負債コストではありません。借りたお金を返しているだけだからです。具体的には、負債を減らして純資産を増やす効果があります。

もっとも、元金返済分はキャッシュフローには影響しますので、キャッシュフロー計算上は考慮しなければなりません。

逆レバにより損失が拡大する可能性がある

レバレッジを掛けて投資効率を上げるためには、負債コストを超える利益(負債コスト>利益)が必要です。もし仮に負債コストを超える利益を出せなければ、レバレッジの効果は負の方向に作用(逆レバレッジ)してしまいます。

レバレッジが順レバとなるか逆レバとなるかを判定する式

以下を満たすと「順レバ」と判断できます。
自己資本利益率(ROA)-負債利子率>0

不動産投資においては、順レバとなるか逆レバかとなるかについてイールドギャップを目安とすることがあるので参考までに紹介します。

イールドギャップとは?

イールドギャップは、通常、リスク資産に期待される実質利回りと国債利回りの差です。その資産の持つリスクに対して投資家が要求する超過収益率(リスクプレミアム)という意味合いがあります。

例えば、国債で3%の利回りを得られるのに対して、不動産投資の期待実質利回りが3%とすると、投資家は不動産でリスクを負うことに魅力を感じないため国債に投資するはずです。

不動産投資におけるイールドギャップとは?

不動産投資においては、国債利回りではなく借入金の金利が用いられることがあります。このときのイールドギャップは「期待実質利回り(キャップレート)-借入金利」です。

しかし、この算出方法には返済期間を考慮していないなどの問題点があるため注意が必要です。借入金利が同じでも、返済期間が変われば年間返済額(元金+利息)および負債コスト(利息)は変わるため正しく評価ができません。

そこで、イールドギャップを「FCR(総収益率)-K%(ローン定数)」で求める方法もあります。

FCRやK%とは?

  • FCR(総収益率):純利益/総投資額(物件価格+諸費用)
  • K%(ローン定数):年間返済額/総借入額

この式ではキャッシュフローがプラスになるかどうかの参考とはなるものの、投資期間全体を考慮した指標ではないことが問題点です。

例えば、不動産投資の1年目は不動産取得税や登録免許税、登記費用、印紙税などの初期費用の負担で純利益は低くなる傾向にあります。2年目は初期費用の負担がないため、1年目と比べると純利益は高くなることが多いです。

数年目に退去が出た場合、修繕費や入居者募集にかかる費用、空室によって家賃収入がない期間などが発生して純利益は低くなります。また、不動産がいくらで売れるかといった点も保有期間に応じて変わります。

そのため、単年度のキャッシュフローを判断するFCR-K%の値だけで投資判断をすることはおすすめしません。投資判断においては、NPV(正味現在価値)などの投資期間全体を考慮した指標を用いることをおすすめします。

K%を決める融資条件は物件や個人の属性によって異なる

イールドギャップよりNPVでの投資判断がおすすめと述べましたが、不動産投資にあたってK%は無視できない指標です。その理由は、K%が高いほど毎年のキャッシュフローを圧迫してしまうからです。

K%は金利と返済期間だけで求めることができます。しかし、そもそも物件の収益性が低かったり、個人の属性が返済能力の観点で悪かったりすると融資を受けることすらできずレバレッジ効果を得られません。

融資を受けられても、金利が高めになったり、借入期間が短かったりする場合があります。するとキャッシュフローが悪化するとともに、逆レバが生じやすくなります。不動産投資が高所得者におすすめといわれるのは、金融機関から良い条件で融資を受けられるというのも1つの理由です。

まとめ:レバレッジ効果を理解して不動産投資を始めてみましょう

レバレッジ効果とは、負債を利用して運用資産の規模を高め、自己資金に対する投資効率を高めるものです。その結果、少額の資金でも大きな利益を得られ、手元資金を有効に活用することができます。さらに、目標とする資産を形成するために必要な期間の短縮も可能です。

しかし、レバレッジには負の作用(逆レバ)もあり、負債コストを超える純利益を得られなければ逆レバとなってしまいます。レバレッジを上手に利用するためには、負債コスト(金利)を抑える必要があります。

レバレッジ効果を理解し、ぜひ不動産投資でレバレッジを活用した資産形成を検討してみてください。

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