日本における生命保険の加入率は約8割にも及び、働き盛りの40代では約9割が加入しています。なかには、本当に生命保険は必要か考えず、勧められるまま加入・更新している人もいるでしょう。しかし、すべての人が必ずしも生命保険に入った方がいいわけではありません。
この記事では、生命保険に入る理由や知っておきたい公的制度、生命保険に加入したほうがよい3タイプ、生命保険があまり必要ではない3タイプについて解説します。保険の見直しに、ぜひお役立てください。
生命保険に入る理由はおもに2つ
生命保険に入る理由として、おもに「もしものときの家族の生活のため」と「貯蓄のため」という2つが挙げられます。
もしものときの家族の生活のため
家族のなかで生計を維持している人が、万が一病気や事故で亡くなった場合、遺族が生活費・住居費・教育費に困る可能性があります。このようなリスクに備える保険として、死亡保険に加入することが一般的です。
後ほど紹介する遺族年金などの公的保証もありますが、生活レベルを維持するためには十分とはいえません。家族が生活に困らないようにするためには、生命保険への加入も必要といえます。
貯蓄のため
生命保険には、万が一の備えだけではなく満期時や解約時にお金が受け取れるタイプもあります。これは、いわゆる掛け捨て型ではなく積立型と呼ばれる生命保険です。
貯蓄目的で加入する代表的な保険は終身保険で、一定期間以上加入してから解約すれば、解約払戻金として払い込んだ以上のお金が戻ってきます。どの時点で解約すればどれだけのお金が戻ってくるかは事前にわかるので、リスクに備えつつ銀行預金のように利用できます。
生命保険には医療保険も組み込まれている
生命保険には、医療保険が組み込まれているタイプも多くあります。メイン契約が死亡保険で、任意加入の医療特約として医療保険を組み込めるタイプです。これらの生命保険では、病気やケガをしたときに給付金を受け取れます。
ただし、受け取れる条件は契約内容によってさまざまです。対象となる病気やケガ、給付金の金額、どの時点で給付金を受け取れるかも保険によって異なります。
公的制度による保障を知っておく
生命保険に入る前に、公的制度による補償や支給額も知っておきましょう。
遺族年金
遺族年金とは、世帯を養っている人が死亡した場合に家族に支給される年金です。年金と同じく「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2階建て方式となっています。したがって、自営業または個人事業主の人などは遺族基礎年金のみ、会社勤めの人は遺族基礎年金に加えて、遺族厚生年金も支給されます。
2020年3月時点での遺族基礎年金の支給額は年額78万100円です。子がいる場合は、第1子・第2子は各22万4,500円、第3子以降は各7万8,000円が支給されます。また、遺族厚生年金は、死亡した人が厚生年金に加入していた期間の給与・報酬から計算されます。
公的医療保険
公的医療保険とは、病気やケガの治療費の一部を国が負担する制度です。職業によって、加入する医療保険が異なります。自営業や個人事業者などは国民健康保険、会社員は健康保険(社会保険)です。ほかにも公務員が加入する共済組合、船員が加入する船員保険があります。
医療費の自己負担割合はどの健康保険でも変わりません。保険加入者および扶養者の自己負担割合は、義務教育前の子どもが2割、小学生~70歳未満が3割、70歳以上が2割、75歳以上が1割です。ただし、70歳以上でも所得が一定以上あると3割になります。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、世帯あたりの1カ月の医療費が上限以上になると、超過分の費用が支給される制度です。上限額は、年収よって異なります。たとえば、年収が約370~約770万円の人は「80,100円+(医療費−267,000)×1%」となります。
また、高額療養費制度では多数回該当という負担軽減の制度があります。上限額を超えた月が年3回以上あると、4回目以降の上限が下がります。
障害年金
障害年金は、病気やケガで仕事に支障が出た際に、その保障として年金を受け取れる制度です。支給金を受け取るには、国が定めた障害の基準を満たすと認められる必要があります。この障害年金も「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2階建て方式になっています。
障害基礎年金は、障害等級が1級の場合の年額支給額は「77万9,300円×1.25+子の加算」、2級が「77万9,300円+子の加算」です。第1子・第2子は各22万4,500円、第3子以降は各7万4,800円がもらえます。また、障害厚生年金は、保険加入期間の平均給与・報酬、および障害等級によって支給額が変わります。
傷病手当金
傷病手当金とは、病気やケガで会社を休むなどして収入が減った場合に、生活を保障するための制度です。支給を受けるには、「連続して3~4日休む」「休業日の給与が出ない」などの条件を満たす必要があります。条件を満たせば、傷病手当金が最長1年6カ月分支給されます。なお、会社員が加入する健康保険などでは傷病手当が出ますが、国民健康保険の場合は出ません。
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生命保険に加入したほうがよい人3タイプ
生命保険に加入したほうがよい人について、3タイプに分けて説明します。
未成年の子供がいる人
子育て世帯の場合、生命保険に加入するメリットは大きいといえます。この世帯は貯蓄が十分でないことも多く、子育てやマイホーム購入などで月々の負担が大きい場合が多いからです。
特に共働きでない場合、万が一に備えられるという点で生命保険への加入は欠かせません。仮に世帯主が亡くなった場合、親族のサポートなどがない限りは生活に困窮してしまうでしょう。世帯主には、数千万円の生命保険を掛けることが一般的です。
高齢の両親がいる人
自分の収入で高齢の両親の生活を支えている人も、生命保険に加入したほうがよいでしょう。生命保険に加入すれば、万が一のことがあっても両親の生活を保障できます。
1度に10万円以上の医療費が生活を左右する人
生活に余裕がない場合は、保険料を節約したいと考える人も多いでしょう。しかし、生活にゆとりがない人こそ、生命保険に加入するメリットは大きいといえます。 世帯主が亡くなった場合、家族にかかる負担は将来的に数千万円になるといわれています。この金額を余裕のないなか貯金することは大変ですが、生命保険に入っていればまとまった額のお金を受け取れます。 病気やケガで医療費が発生するだけでも、家族の生活に大きな影響が出ることは避けられません。そのため、医療特約付きの生命保険に加入しておくのもよい方法です。
生命保険があまり必要ではない人3タイプ
一方で、生命保険があまり必要ではない人もいます。3タイプに分けて説明します。
ケガや病気に備えた貯蓄がある人
十分な貯蓄がある人は、病気やケガ、最悪の場合亡くなったときでも、貯金を使うことで遺族の生活が守れます。生命保険はリスクに備えるという性質上、割高になることもあります。もし生命保険に加入する場合は、子どもの教育費の保障というように目的を限定するなどして、保険料を抑えましょう。
また、一部の不動産投資など、生命保険や年金の代わりになるものもあります。資金に余裕がある場合は、割高な生命保険ではなく、貯金や資産運用をした方がかえってリスクを抑えられる可能性もあるでしょう。
独身の人
自分に何かあっても経済的に困る家族がいないのであれば、基本的に生命保険は不要です。医療特約付きの生命保険に入る人もいますが、一般的には貯金が100万円以上ある場合は医療保険のメリットは少ないといえます。
すでに紹介した公的制度もあるので、高いレベルの保障を求めない限り、最低限度の生活は保障されます。独身の人で余裕資金がある場合は、貯金やほかの投資に回した方が効率的です。
少しでも固定費を削減し資産運用したい人
生命保険は、住宅に次ぐ人生で2番目に大きな買い物ともいわれています。保険料は平均して年額40万円、30年で1,200万円にもなります。そのため、少しでも固定費を抑えたいと考えるなら、保険の見直しも必要でしょう。
資産運用に興味がある場合は、生命保険にかけるお金を回すことが有効です。病気やケガなどで働けなくなっても収入が得られる状況であれば、生命保険に加入する必要もないでしょう。
まとめ:もしもの備えなら資産運用
公的制度でもある程度の保障が受けられるので、必ず生命保険に加入した方がよいケースは、実は少ないといえます。保険料の総額を考えると大きな買い物となるため、自分の家族や預貯金をもとに慎重に判断しましょう。