2021年5月24日、大手のSBIソーシャルレンディングが廃業を発表しました。融資先の資金繰りの悪化をきっかけに、貸付金が資金使途と異なる目的に使用されたことなどが判明したためです。
ソーシャルレンディングで投資している人の中には、この発表を聞いて「融資先が破綻したらどうなる?」「貸し倒れのリスクはどの程度?」「リスクを回避するにはどうすれば?」など、不安や疑問を抱いた人もいるでしょう。
今回の記事では、ソーシャルレンディングの貸し倒れリスクについて解説します。貸し倒れの実態やリスクの回避方法についても紹介しますので、本記事を参考にリスク管理が十分にできているかを点検してみましょう。
ソーシャルレンディングの3つのリスク
ソーシャルレンディングは預貯金よりも高いリターンが期待できる反面、次のリスクがあることも理解しておきましょう。
- リスク①:融資先の貸し倒れと延滞
- リスク②:ソーシャルレンディング会社の倒産
- リスク③:ファンドを途中で解約できないこと
リスク①:融資先の貸し倒れと延滞
リスクの1つ目は、融資先の資金繰り悪化などにより「貸し倒れ」が発生したり、貸付金が「延滞」することです。
「貸し倒れ」は、融資先が倒産するなどして貸し付けたお金が返済不能になることです。貸し倒れにより、投資家がファンドに出資したお金も返金されなくなります。また、融資先の返済状況により、出資金が全額返金されない場合と一部だけが返金される場合があります。
「延滞」は、融資先が返済期日までに約束した金額を返済できないことによって生じます。遅れても返済されればいいですが、貸し倒れにつながるリスクもあります。また、延滞によって投資家に支払われる分配金や出資金の返金も遅れます。
ソーシャルレンディングは、預貯金等よりも高いリターンが期待できますが、ミドルリスク・ミドルリターンの金融商品であるということを認識しておきましょう。
リスク②:ソーシャルレンディング会社の倒産
リスクの2つ目は、ソーシャルレンディング会社が倒産することです。
ソーシャルレンディングの特徴は、ソーシャルレンディング会社が出資者を募り、出資者から集めたお金を借手企業に融資するという仕組みです。つまり、投資家は融資先ではなく、ソーシャルレンディング会社にお金を預けているのです。
そのため、融資先の返済能力に問題がない場合でも、ソーシャルレンディング会社が倒産すれば出資金が戻ってこないこともあります。ただし、投資家の出資金が分別管理(※)されていれば、ソーシャルレンディング会社が倒産しても投資家の出資金は保護されます。
※投資家から預かった資産とソーシャルレンディング会社の資産を分けて管理することです。
リスク③:ファンドを途中で解約できないこと
リスクの3つ目は、投資先のファンドを途中で解約できないことです。
ソーシャルレンディング会社は、「募集金額」「予定利回り」「運用期間」などを定めた上で出資を募ります。出資時に定めた運用期間は原則変更できず、また途中解約もできません。
急に資金が必要になったときでも運用期間満了まで待たなければなりません。また、融資先に延滞が発生したり、ソーシャルレンディング会社の経営状態に不安を感じた場合でも、リスク回避のための途中解約ができないのです。
ソーシャルレンディングのリスクについて詳しく知りたい人は以下の記事をご参照ください。
ソーシャルレンディングの貸し倒れの実態
次に、ソーシャルレンディングの貸し倒れの実態を具体的な事例を中心にみていきましょう。
SBIソーシャルレンディングの貸し倒れ事例
冒頭で解説したSBIソーシャルレンディングの廃業は、融資先の資金繰り悪化が発端となりました。
融資先は太陽光発電関連会社「テクノシステム」(横浜市)です。同社の社長は2021年5月27日に詐欺容疑で逮捕(6月に別の詐欺と特別背任の疑いで再逮捕)され、会社は事実上の倒産状態です。
テクノシステムは太陽光発電関連事業のために融資された200億円以上の資金のうち、130億円近い金額を別の用途に充てていた疑いが持たれています。
融資したお金をどれだけ回収できるかは未定ですが、親会社であるSBIホールディングスは投資家の損失を補填するために、2021年3月期に最大150億円の特別損失を計上すると発表しました。資金力のない会社なら、投資家は大きな損失を被っていた可能性もあります。
参考:SBIホールディングス「当社子会社のSBIソーシャルレンディングの今後の事業運営について」
各ソーシャルレンディング会社の貸し倒れ状況
ソーシャルレンディングの歴史は浅いため、設立間もない会社が多く、過去の貸し倒れの事例は多くありません。また、公の資料もないため貸し倒れ率など正確な数字は分かりません。
業界大手の会社を見ると、クラウドバンクは「融資元本回収率100%」、同じく大手のオーナーズブックの貸付型(ソーシャルレンディング)は「元本割れ件数0件」を謳っていますが詳細は公表していません。
一方、投資家への虚偽説明などで過去に行政処分を受けた次の会社では、延滞債権や貸し倒れ債権を公開しています。
ソーシャルレンディング会社の貸し倒れ・延滞状況:
貸付件数 | 貸し倒れ | 延滞中 | |
---|---|---|---|
maneo | 12,970件 | 97件 | 497件 |
ラッキーバンク | 822件 | 298件 | 3件 |
グリーンインフラレンディング | 2,204件 | - | 1,441件 |
参考:maneo「延滞債権/デフォルト債権一覧」
参考:ラッキーバンク「運用実績一覧」
参考:グリーンインフラレンディング「延滞債権/デフォルト債権一覧」
貸付件数の6割以上が延滞中のグリーンインフラレンディングは、2021年4月9日に破産手続き開始決定を受けました。
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ソーシャルレンディングの貸し倒れリスクの回避方法
最後に、ソーシャルレンディングの貸し倒れリスクを回避する方法について紹介します。主な方法は次の通りです。
- リスク回避方法①:安心できるソーシャルレンディング会社を選ぶ
- リスク回避方法②:運用期間の短いファンドを選ぶ
- リスク回避方法③:担保付きや保証付きのファンドを選ぶ
- リスク回避方法④:貸し倒れを想定して投資するファンドを分散する
リスク回避方法①:安心できるソーシャルレンディング会社を選ぶ
1つ目の方法は、安心できるソーシャルレンディング会社を選ぶことです。ソーシャルレンディング会社は「第二種金融商品取引業」の登録が必要ですが、登録せずにファンド募集している会社もあり、金融庁も投資家に注意を呼びかけています。
参考:金融庁「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」
また、設立年数や会社の業績、上場の有無などのほか、インターネット上の評判なども参考にして、安心できるソーシャルレンディング会社を探しましょう。ソーシャルレンディング会社について詳しく知りたい人は下記リンクを参照ください。
リスク回避方法②:運用期間の短いファンドを選ぶ
2つ目の方法は、運用期間の短いファンドを選ぶことです。日本の景気動向や融資先の事業環境、ソーシャルレンディング会社の業績などは、長期になるほど変動が大きくなります。良くなることもありますが、悪化して貸し倒れリスクが高まることもあります。
環境変化によるリスクを回避するため運用期間1年以内のファンドを選択することがおすすめです。
リスク回避方法③:担保付きや保証付きのファンドを選ぶ
3つ目の方法は、「担保付き」や「保証付き」のファンドを選ぶことです。「担保付き」とは、融資先の不動産などを担保として融資することです。融資先が返済不能となった場合、担保を売却して貸したお金を回収します。
「保証付き」とは、保証会社と契約した上で融資することです。保証料が発生する代わりに、融資先が返済不能となった場合、保証会社が代わりに返済してくれます。
担保の売却代金が融資額を下回ったり、保証会社が倒産する可能性もありますが、担保や保障のないファンドと比較して安全性が高いと言えるでしょう。
リスク回避方法④:貸し倒れを想定して投資するファンドを分散する
4つ目の方法は、貸し倒れを想定してファンドを分散することです。慎重に融資先を選別しても、貸し倒れリスクは、100%排除できません。高めのリターンが期待できるのは一定のリスクがあるからです。
リスクを低減する方法の1つが分散投資です。投資資金を複数のファンドに分散すれば、1つのファンドで貸し倒れが発生しても投資資金全額を失うことはありません。他のファンドの利益で損失を相殺できることもあります。
投資全般に言えることですが、投資リスクを回避するには分散投資が有効です。
まとめ:貸し倒れリスクを考えて分散投資がおすすめ
ソーシャルレンディングの「貸し倒れ」とは、融資先が倒産するなどして貸し付けたお金が返済不能になることです。ソーシャルレンディングはミドルリスク・ミドルリターンの金融商品であり、貸し倒れを完全に防ぐのは困難です。
しかし、ソーシャルレンディング会社やファンドを選別することでリスクの低減は可能です。また、分散投資もリスクの回避策として有効です。低金利で預貯金によるリターンはあまり期待できないため、リスク管理を十分に行った上で自分にあった投資にチャレンジしましょう。