「人生100年時代」といわれる現代では、長い人生を過ごすために自分で資産運用や資産形成をすることが求められています。「資産運用の必要性はわかるけれど、難しそう」とためらっている方におすすめなのがNISA(ニーサ)です。
NISAは政府によって設立された、少額から投資可能で税金も優遇される制度です。本記事では、2023年までのNISA制度以上に活用するメリットが増えた2024年以降に予定されている新NISA制度についてもご紹介しています。
NISAがどのような制度なのかが理解できるとともに、具体的な始め方もわかるので、ぜひ資産形成に役立ててください。
NISAとは?少額から投資できる非課税制度
NISAは「少額投資非課税制度」の呼称です。英国のISA(Individual Savings Account)を参考にしており、ISAの頭に日本(Nippon)のNをつけて、NISAと呼んでいます。
NISAは2014年1月に金融庁によって始められた制度で、NISA口座で購入した金融商品の売買益や配当がすべて非課税です。通常、株式や投資信託の売買益や配当、預金の金利といった金融商品から得られる利益には、約20%の税金が課されます。
一方、NISA口座内で行われた取引から得られる利益には、一切税金がかかりません。いくらもうけても課税されないため、非常にお得といえるでしょう。
また、最低購入金額が100円の証券会社もあるため、少額投資を行なう場合にぴったりです。おこづかい程度の金額から投資できるので、投資初心者も気軽に始められます。
NISAのメリット
NISAのメリットは前述のとおり、NISA口座を用いた投資で得た利益には税金がかからないことです。投資で得られる利益には、運用益と配当益があります。
通常の投資の場合、得た利益に次の3種類の税金がかかります。
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%(2037年まで)
合計20.315%です。
NISAで投資をすると、どれだけ運用益と配当益を得ても、この20.315%が課税されないため利益をそのまま享受できます。
【2024年〜】NISA制度変更の5つのポイント
2024年にNISA制度は大きく変わります。
改正に伴い、投資可能金期間が恒久化され、非課税期間が無期限となりました。つみたて投資枠と成長投資枠の2つを併用できるようになることもポイントです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
参考:金融庁「新しいNISA」
①制度が恒久化(無期限)される
制度改正により、非課税投資期間が恒久化(無期限)されました。
制度開始の当初は、一般NISAが2023年まで、つみたてNISAが2037年まで、のちにそれぞれ5年ずつ延長されたものの、期限があることによって長期的な投資計画が立てにくいという欠点がありました。
今回の改正でNISA制度が恒久化されたことにより、より長期的な計画を立てて投資することが可能になります。
②成長投資枠とつみたて投資枠の併用ができる
これまでは、「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類の枠があり、どちらかを選択する方式でしたが、今回の改正によって「成長投資枠」「つみたて投資枠」は併用可能になりました。
投資対象の金融商品も異なるため、NISA口座を利用した投資戦略の幅がより広がります。
③年間の投資上限金額が最大360万円に拡大される
新NISA枠では、年間の投資上限金額が最大360万円まで拡大されます。従前の制度と比べて大幅に増額するため、今回の改正でも特に注目されている改正点の一つです。
内訳は、「成長投資枠」の上限額が年間240万円、「つみたて投資枠」が120万円です。現行のNISA制度では、毎月33,333円を積み立てると年間投資上限額である40万円に達しますが、投資上限金額が拡大され成長投資枠とつみたて投資枠の合計で年間360万円、毎月30万円まで積み立てることができます。
④生涯非課税限度額が最大1,800万円で新設される
新たに「生涯非課税限度額」が、買付金額ベースで合計1,800万円に設定されました。(成長投資枠のみの場合には、1,200万円までです。)売却した場合、買付金額分の枠を再利用できることもポイントです。
たとえば、上限金額の1,800万円まで投資していた人が、200万円に相当する買付金額分を売却した場合、200万円分の枠が復活し、新たに非課税で投資することができます。
ただし、生涯の非課税枠が復活しても、年間の投資上限金額以上の投資はできないため、すでに使い切ってしまっていた場合は翌年以降に再投資する必要があります。
⑤非課税で保有できる期間が無期限になる
非課税で保有できる期間が無期限化されたため、運用期間を気にせずに運用益非課税のメリットを受けることができます。
現行の制度では、一般NISAが5年、つみたてNISAは20年の非課税保有期間が設定されていたため、この期間をすぎると保有していた商品は課税口座に移管して保有する必要がありました。もちろん、課税口座に移した後に利益が生まれれば、税金がかかります。
非課税保有期間が無期限になったため、課税口座に商品を移す作業も不要になります。NISAを活用するメリットが大きくなったといえるでしょう。
現行のNISA口座は2024年以降どうなる
現行のNISA制度は2023年末までとなり、その後はじめてNISAに投資をする場合は、新NISAの枠内での活用となります。
一方で、2023年末までに運用されている現行のNISAの口座は、そのまま非課税措置を受けられます。そこで、現行のNISA制度についても説明します。
現行のNISAは、次の3種類で構成されています。
- 一般NISA
- つみたてNISA
- ジュニアNISA
それぞれどのような扱いになるかについて以下で解説します。
一般NISA
一般NISAは3種類の中で最初にスタートした制度です。2014年1月から開始されており、単に「NISA」と呼ぶ場合は、最初に制度化されたこの一般NISAを指すことが多いです。
18歳以上の人が開設でき、1年間に最大120万円の投資を行なうことができます。非課税期間は最長5年間なので、累計600万円の運用が可能です。
株式や投資信託などさまざまな金融商品を選べますが、一般NISAで金融商品の購入ができるのは2023年までです。現行の一般NISAが2023年までの制度であることに由来しています。2023年に購入した金融商品は、2027年まで非課税で保有できます。
非課税期間終了後は、新しいNISA制度に移管はできませんので、そのまま課税口座で保有するか、売却する必要があります。
つみたてNISA
つみたてNISAは2018年1月から開始された、長期保有の積立式の分散投資を目的とした制度です。一般NISAと同様に18歳以上の人が利用できます。年間の投資上限額は40万円と、一般NISAと比べると少額です。一方、非課税期間は40年と長く、投資可能な累計額は800万円です。
つみたてNISAで購入できる金融商品は、長期・積立・分散投資にマッチする一定の投資信託に限られています。投資信託は、少額から購入可能な金融商品で投資初心者も取り組みやすい制度です。
同じく、非課税期間終了後は、新しいNISA制度に移管はできませんので、そのまま課税対象の口座で保有するか、売却する必要があります。
ジュニアNISA
ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)は2016年1月にスタートした制度です。対象者は、日本在住の0歳から17歳の人です。運用者は対象者の両親や祖父母であり、未成年者(子や孫)の将来のために代理で投資を行なう、という目的で利用します。
2024年の改正に伴い、ジュニアNISAは廃止されることになりました。これまで18歳まで(3月31日時点で18歳である年の前年12月31日まで)原則引き出すことができませんでしたが、制度廃止後は18歳未満でもいつでも現金化できるようになります。
2023年度末までは新規の買い付けが可能で、購入した金融商品は子が18歳になるまで非課税で運用しいつでも払い戻しができるため、制度が廃止されることになったあとに口座を開設した人も多いです。
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NISAの始め方
「NISAについて現行制度も新制度もわかったけれど、どう始めたらいいの」とお考えかもしれません。NISAを始めるためには、次の2ステップの順序で行なうことをおすすめします。
- 投資する商品を選ぶ
- 口座を開設する
「まず口座を開設しておいて、次に商品を選ぶのでは」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それはおすすめしません。金融機関によって取り扱う商品が異なるため、口座を開設した金融機関が希望条件に合う商品を取り扱っていない可能性があるためです。
各ステップについてポイントを解説します。
1.投資する商品を選ぶ
まずは投資する金融商品を選びましょう。どのような金融商品に投資するかによって、必要となる費用や得られる利益が異なります。投資をする際に特に考えておきたいことは、リスクです。
価格変動の振れ幅が大きい金融商品は、大きなリターンも見込めますが、リスクも大きくなります。一方、価格変動の振れ幅が小さい金融商品は、ローリスクローリターンです。自分がどの程度のリスクを許容でき、どの程度のリターンが欲しいのかを考えて金融商品を選びましょう。
2.口座を開設する
自分がどのような金融商品に投資したいのかが判断できたら、NISA口座を開設します。NISA口座を開設する際に、金融機関を選ぶポイントがいくつかあります。
- 投資したい金融商品を扱っているか:銀行やゆうちょ銀行は投資信託のみ
- 取引手数料:証券会社によっては無料
- サポート体制の有無:投資初心者の場合、相談できる方が安心
- キャンペーン:金融機関によっては、NISA口座開設でプレゼントあり
なお、前述のとおりNISA口座は1年に1回変更可能です。金融機関の選択肢は多いですが、1年後により良い条件の金融機関に変更することができるため、ひとまず現状の希望条件に近い口座を開設してみることをおすすめします。
まとめ:NISAの制度変更を理解して、自分に合った資産運用をしましょう
現行のNISAの概要や注意点、2024年以降の変更点などについてご紹介しました。NISAは、運用益や配当益に対して通常かけられる約20%の税金が非課税になる、非常にお得な制度です。
2024年の改正に伴い、より投資戦略の幅が広がりさまざまなメリットを受けられるようになります。
「年金や預貯金だけでは老後を過ごせない」といわれる現代は、個々人が資産形成をすることを求められています。NISA制度の非課税枠を活用して、自分に合った資産運用を行ない、自分の将来に備えましょう。
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