20歳を迎えると国民年金の加入者となります。原則として学生や自営業者は毎月保険料を支払う必要がありますが、状況によっては保険料を毎月支払うことが厳しいケースもあります。
そんな時に利用したいのが、国民年金に関するさまざまな制度です。今回は国民年金保険料を免除してくれる制度や、支払い期日を先送りする猶予制度について解説します。
制度をきちんと理解し、必要であれば国民年金保険料の免除や猶予を申し出るようにしましょう。
国民年金保険料が払えないときに利用できる2つの制度
国民年金保険料は20歳から60歳の間に負担すべきものですが、そのうち国民年金の第1号被保険者は、毎月保険料を納めなければなりません。第1号被保険者とは、自営業者や学生、無職の人のことを言います。
保険料を支払う意志はあっても、経済的な理由で支払いが滞ることも想定されます。保険料を未納のまま放置しておくと、将来もらえる年金が少なくなったり、受給できなくなる可能性もあります。保険料免除制度と保険料納付猶予制度の2つは、国民年金の支払いに困った時に利用できる制度です。
それぞれの特徴を以下で詳しく解説します。
①保険料免除制度
保険料の納付を「免除」してくれる制度を保険料免除制度といい、条件次第で保険料を支払わなくて良いという制度です。
低収入が原因で、本人や世帯主、配偶者の前の年の所得が規定額以下の場合、また失業したときは保険料免除制度の対象です。制度の利用には申請が必要で、収入に応じて免除してもらえる金額は異なります。
所得に応じて免除額がことなり、免除額には4分の1免除、半額免除、4分の3免除、全額免除の計4種類があります。
②保険料納付猶予制度
納付を「猶予」してくれる制度を保険料納付猶予制度と言います。支払いを一定期間、免除する制度ですが、いずれは保険料を支払う必要があります。対象者は20歳から50歳未満に限定されています。
本人または配偶者の前の年の所得が規定額よりも下回ったときのみ利用が認められます。保険料免除制度のように、「世帯主」は対象ではないため注意しましょう。
また、学生は「学生納付特例制度」の対象であり、この制度の対象外ですので注意しましょう。
免除・納付猶予制度を利用した場合の年金への影響
これらの制度を利用した場合、将来の年金額への影響はあるのでしょうか。免除制度・猶予制度それぞれの利用時について解説します。
保険料免除制度を利用したとき
免除額は4分の1、半額、4分の3、全額の4種類があり、免除されていた期間に関して受給できる金額は以下の表の通りです。
免除割合 | 支給される年金額 |
---|---|
全額免除 | 保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1 |
4分の3免除 | 保険料を全額納付した場合の年金額の8分の5 |
半額免除 | 保険料を全額納付した場合の年金額の8分の6 |
4分の1免除 | 保険料を全額納付した場合の年金額の8分の7 |
保険料の支払いが免除されているため、全額を納付した場合と比べると年金額は低くなります。
保険料納付猶予制度を利用したとき
支払いを猶予されている期間は国民年金の受給資格期間ですが、年金額には反映されません。つまり、猶予されている保険料を支払わないと、全額納付時と比較して年金額が低くなります。
将来の年金額に反映させるためには保険料の支払いが大切です。支払いを猶予されていた保険料を、後から遡って納めることを追納と言います。追納については後ほど解説します。
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知っておきたいさまざまな免除・猶予制度
国民年金は20歳から支払いの義務が発生しますが、経済的に自立している学生は少なく支払いが滞りがちです。また、DV被害や新型コロナウイルスによる影響で保険料の負担が重くなっている人も少なくありません。
ここからは免除・猶予制度が利用できるさまざまなケースをご紹介します。将来どんなことが起きるかわからないため、以下の制度は必ず確認しておきましょう。
①学生納付特例制度
学生は在学時のみ、学生納付特例制度の対象です。この制度の利用にあたっては、学生本人の所得が、規定額以下となったときに、年金の支払いを猶予できます。規定額は以下の式で、算出します。
128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
学生納付特例制度の利用には家族の所得は関係ありません。本人の意思で利用できる制度であることを覚えておきましょう。
また、ここで言う「学生」とは、大学・大学院・短期大学・高等学校・高等専門学校・特別支援学校専修学校に在籍している人を指し、ほぼすべての学生が当てはまります。
②法定免除制度
免除制度の中には、法定免除制度があります。生活保護や障害年金の1級・2級を受け取っている場合は、法定免除制度により、保険料は全額支払いの対象外となります。
③特例免除制度
保険料の支払いに困る理由として、失業の他にもパートナーからの暴力や新型コロナウイルスによる影響があります。以下のようなケースは、特例免除制度の対象となることがあります。
DV被害に遭ったとき
配偶者からの暴力(DV)が原因で現在配偶者と別の場所に住んでいて、本人の前の年の所得が規定額よりも低い場合、保険料が免除されます。このとき、配偶者の所得は不問です。
初回の申請時は、「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」が必要です。これは婦人相談所や支援センターで発行してもらえます。
失業等で困窮しているとき
保険料の支払いに困る理由の多くは、失業に伴う経済状況の悪化です。失業の場合も特例免除制度の対象です。
申請には離職票や事業の廃業・廃止の届け出(対象者のみ)が必要です。
新型コロナウイルス感染症の影響があるとき
新型コロナウイルスの影響で収入が減少したというケースは多く、臨時特例として2020年5月より申請が可能になりました。
具体的には、2020年2月以降に、新型コロナウイルスの影響で収入が下がったことと、当年の所得見込みが、現在の国民年金保険料の免除制度の水準に該当することが想定される場合に利用できます。
詳しくは日本年金機構のホームページで確認してください。
日本年金機構のホームページはこちら
④産前産後期間の免除制度
産前産後期間の免除制度として、出産予定月の前月から翌々月までの期間は保険料の納付を免除してくれる制度があります。
出産予定日の半年前から届け出が可能です。出産にはまとまったお金がかかるため、必要に応じて産前産後期間の免除制度を利用するようにしましょう。
追納制度を利用しよう
先述のように、保険料の免除・猶予制度を利用すると、保険料を全額納付したときよりも将来受け取ることのできる年金額が低くなります。
免除・猶予制度の利用が認められた期間の保険料については、あとから支払うことによって、年金額を増額できます。この制度を追納制度と言い、社会保険料控除によって所得税や住民税が安くなります。追納するためには年金事務所にて申請し、認められた場合に限ります。
金銭的な余裕が出来たときや、経済状況が好転した場合にはぜひ利用したい制度です。
後から支払うことができる便利な制度ですが、追納できる期間に限りがあります。追納の申請が認められた月から10年間しか遡ることができないため、それよりも前の保険料は納めることができません。60歳間近になって、「学生のころの保険料を支払いたい」ということはできません。
免除・猶予期間がある場合は、できる限りすみやかに保険料を支払いましょう。
まとめ:免除・猶予制度を活用し、未納を回避しよう
誰しもが負担しなければならない国民年金保険料ですが、第1号被保険者に限って支払いを免除・猶予してくれる制度があります。保険料負担が軽くなる制度とはいえ、追納しなければ将来の年金額への影響があります。
必要時はこれらの制度を利用し、できるだけすみやかに免除・猶予されていた保険料は納めるようにしましょう。