専業主婦はいくらの年金を将来もらえるのか、また共働き世帯と比較して年金額は多いのか少ないのか気になることが多いのではないでしょうか。
本記事では、夫が国民年金の第1号被保険者か第2号被保険者かによる違いと、共働き世帯との年金の違いについて解説します。年金額を確認して、老後に備えた資産形成を検討しましょう。
専業主婦の平均年金額は約5万4,000円
厚生労働省の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、専業主婦の年金額は月平均で約5万4,000円と言われています。専業主婦の年金の種類や内訳をみていきましょう。
国民年金
公的年金には、すべての国民が対象となる老齢基礎年金(以下、国民年金)と、会社員や公務員などを対象とした老齢厚生年金(以下、厚生年金)があります。国民年金の平均受給額は次の通りです。
- 男性:月59,040円
- 女性:月54,112円
- 男女計:月56,252円
厚生年金に加入のなかった専業主婦が受け取れる年金は、国民年金だけです。年金額は、国民年金保険料を納付した期間と第3号被保険者であった期間によって異なります。
国民年金の年金額計算方法
国民年金(老齢基礎年金)の年金額計算方法は次の通りです。
- 国民年金の年金額=77万7,800円(令和4年度)×保険料納付月数/480ヶ月
保険料納付月数は、20歳から60歳の誕生日を迎える前までの40年間に年金制度に加入(未納や免除期間は除く)していた期間です。厚生年金に未加入の専業主婦は、国民年金保険料を納付した月数と、会社員などの配偶者として第3号被保険者であった月数を合計して計算します。
保険料納付月数480ヶ月(40年間)の人の国民年金の月額は、約6万4,800円(年77万7,800円)です。
厚生年金
厚生労働省の調査によると、厚生年金に加入したことのある人の年金受給額は次の通りです。
- 男性:月16万4,742円
- 女性:月10万3,808円
- 男女計:月14万4,366円
夫が第2号被保険者(会社員など)で妻が専業主婦の場合、平均的な夫婦の年金額は約22万円です。一方、夫婦共働きで妻も厚生年金を受け取れる場合、夫婦の年金額は平均約27万円です。加入する年金制度で年金額は大きく異なることを理解しておきましょう。
結婚前に短期間会社勤めしたことのある専業主婦は、厚生年金をもらえますが金額はあまり多くありません。たとえば、月給20万円(賞与なし)で5年間会社員として厚生年金に加入した場合、厚生年金の月額は5,500円から7,000円程度です。
専業主婦の保険料
専業主婦の保険料は、夫の加入する年金制度で取り扱いが異なります。
夫が国民年金の第1号被保険者ならば、妻も第1号被保険者として国民年金保険料を納付しなければなりません。一方、夫が第2号被保険者の場合、妻は第3号被保険者として保険料の支払いが不要です。
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年金額を増やす方法
専業主婦の年金額は平均で月約5万4,000円と、あまり多くありません。少しでも増やしたいと考えている人に、年金額を増やす方法を紹介します。
年金増額方法①:任意加入
1つ目の方法は、60歳以降に国民年金に「任意加入」することです。
国民年金保険料の支払いは原則59歳までですが、20歳から59歳までの保険料納付月数が480ヶ月未満の人は、480ヶ月に達するまで任意で国民年金に加入できます。ただし、任意加入できる期間は、60歳以降65歳に達するまでです。
60歳から65歳までの5年間任意加入して保険料を納めると、国民年金の月額は約8,100円増えます。
- 任意加入による国民年金額=77万7,800円×60ヶ月/480ヶ月=約9万7,200円
1ヶ月の保険料16,590円(令和4年度)を納付すると、年金額は年額で約1,620円増加します。65歳から75歳過ぎまで年金を受け取ると元が取れる計算です。
年金増額方法②:付加保険料
2つ目の方法は、保険料納付時に「付加保険料」を追加で支払うことです。
付加保険料(月額400円)を支払うと、国民年金に付加年金が加算されます。付加年金額は「200円×付加保険料納付月数」となるため、65歳から2年間年金を受け取ると元が取れます。
ただし、付加保険料を納付できるのは国民年金第1号被保険者だけです。夫の第3号被保険者である専業主婦は活用できません。
第1号被保険者になったときや任意加入などで自分で国民年金保険料を納付するときは、付加保険料の追加を検討してみましょう。
参考:日本年金機構「付加年金」
年金増額方法③:繰り下げ受給
3つ目の方法は、年金の受け取りを遅らせる繰り下げ制度を利用することです。
繰り下げできるのは本来65歳から受給する国民年金と厚生年金で、1ヶ月受給を遅らせることで年金額は0.7%増加します。受給開始時期は、66歳から75歳までの間で月単位で選択できます。
年金額が月5万4,000円の専業主婦の場合、65歳からの年金を70歳スタートにすると年金額は月約7万6,700円(42%増額)にアップします。
ただし、老齢基礎年金にプラスされる振替加算(※)は、65歳から繰り下げ受給開始まで年金が支給されないだけでなく繰り下げによる増額もないので注意しましょう。
※厚生年金に20年以上加入した夫がいる場合、原則65歳以上の国民年金に加算される年金のことです。
年金増額方法④:つみたてNISAやiDeCoを活用する
4つ目の方法は、税制上の優遇措置が受けられるNISAやiDeCoを活用することです。
つみたてNISAは国が設けた非課税制度で、最大20年間は運用益に税金がかかりません。運用益の全額を再投資に充てられるため、長期的な資産形成に役立ちます。
iDeCoは、老後に向けた資産形成を支援する私的年金制度です。運用益が非課税になるだけでなく、掛金は全額所得控除され、給付を受けるときも税制上のメリットがあります。
専業主婦の年金についてよくある質問
公的年金について、専業主婦からよくある質問を2つ紹介します。
質問①:パートナーが退職した場合はどうなる?
よくある質問の1つ目は、パートナーが退職した場合、第3号被保険者として国民年金に加入している専業主婦の年金はどうなるかです。
国民年金は60歳になるまで加入が義務付けられているため、60歳未満の専業主婦は自分で国民年金(第1合被保険者)に加入して保険料を支払わなければなりません。加入手続きは、市区町村の担当窓口または年金事務所で行います。
60歳を過ぎた専業主婦は保険料の支払いが終わっているため、手続きや保険料の支払いは不要です。20歳から59歳までの保険料納付月数が480ヶ月未満の人は、任意加入して年金額を増やすのも選択肢の1つです。
質問②:離婚した場合はどうなる?
よくある質問の2つ目は、離婚した場合はどうなるかです。
保険料の支払いについては、パートナーが退職した場合と同様、60歳未満なら自分で国民年金に加入する必要があります。
将来受け取る年金については、「離婚時の年金分割」制度を活用して年金額を増やせます。年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録を分割することです。厚生年金の受給額は厚生年金記録に基づいて計算されるため、年金分割によって専業主婦がもらえる厚生年金額はアップします。
ただし、離婚日翌日から2年以内に手続きしないと年金分割ができなくなるので注意が必要です。
まとめ:年金額を確認して老後に備えて資産形成しよう
本記事では、夫が第1号被保険者か第2号被保険者かによる違いと、共働き世帯との年金の違いについて解説しました。
ご自分の世帯の年金額を知り、将来に向けて貯蓄や資産形成により準備をしておくと、理想の老後が送れるでしょう。