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家計

公的医療保険に加入していることにより、原則3割の自己負担で医療機関を受診できます。しかし、中には全額自己負担となる病室があることをご存知でしょうか。

全額自己負担となる病室にかかる費用は差額ベッド代と呼ばれ、入院日数次第では差額ベッド代が非常に高額になることもあります。

本記事では差額ベッド代の概要や、差額ベッド代の要否を判断する要件などをご紹介します。この機会に差額ベッド代について正しく理解し、「差額ベッド代がかかるなんて知らなかった」という状況を避けましょう。

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差額ベッド代とは「特別療養環境室料」

設備が整った病室で入院生活を送りたいという人は問題ありませんが、できるだけ医療費をかけたくない人にとって、差額ベッド代の負担は決して小さな額ではありません。

差額ベッド代とは

差額ベッド代の正式名称は特別療養環境室料です。この特別療養環境室料とは、入院環境の向上を目的として、患者がより快適に過ごすことができるように設置された病室にかかる費用を指します。

差額ベッド代が必要となる病室には、トイレや洗面台、冷蔵庫などが備え付けられ、過ごしやすい環境が整っています。特別療養環境室は、本来は患者本人が希望する病室であり、健康保険が適用される入院料に加えて、病室の使用料は全額自己負担です。

なお、差額ベッド代がかかる病室と聞くと個室をイメージする人もいるでしょう。しかし、個室だけでなく2人部屋や3人部屋であっても差額ベッド代が必要となることがある場合を覚えておきましょう。

差額ベッド代が請求される部屋の要件

厚生労働省の定めにより、以下4要件を満たす部屋は差額ベッド代として自己負担が発生します。

  1. 病室の病床数は4床以下であること
  2. 病室面積は1人当たり6.4平方メートル以上であること
  3. 病床のプライバシーを確保するための設備があること
  4. 特別の療養環境として適切な設備を有すること

1日あたりの差額ベッド代

実際に特別療養環境室に入院した場合に必要となる差額ベッド代は以下の通りです。

  1日当たりの平均徴収額(推計)
1人室 8,018円
2人室 3,044円
3人室 2,812円
4人室 2,562円
合計 6,354円

参考:厚生労働省 「第422回中央社会保険医療協議会 主な選定療養に係る報告状況」より抜粋

上記の表から分かる通り、1つの病室を利用する人数が多いほど1日当たりの差額ベッド代は安くなります。逆に、いわゆる個室である1人室の場合、2人以上で病室を利用する場合の倍以上の費用が必要です。

短期間の入院であれば自己負担額にそれほど大きな差は生じませんが、入院日数が長期化すると経済的に大きな負担になるでしょう。入院日数が長くなった際の費用をどのように準備するのかは普段から備えておくことが重要です。

病室の設備や利用人数を加味した上で、必要に応じて特別療養環境室の利用を検討しましょう。

差額ベッド代に関する3つの注意点

差額ベッド代は全額自己負担になる点以外にも、通常の入院費とは異なる点があります。ここでは差額ベッド代に関する3つの注意点を以下で解説します。

  1. 健康保険の対象外
  2. 高額療養費制度の対象外
  3. 医療費控除の対象外

注意点1:健康保険の対象外

一般的な治療費や入院費は原則3割負担ですが、差額ベッド代は健康保険の対象外であるためかかった費用は全額自分で負担しなくてはなりません。退院時の請求額が高額になることもあるため、経済的な負担を考慮しながら利用を検討しましょう。

注意点2:高額療養費制度の対象外

高額療養費とは、同一月にかかった医療費の自己負担額が高額となった場合に、自己負担限度額を超えた分が後日払い戻される制度です。この高額療養費制度は保険が適用される医療費に対する制度ですので、全額自己負担となる差額ベッド代は対象外です。

注意点3:医療費控除の対象外

1月1日~12月31日の1年間に医療費が原則10万円以上かかった場合は医療費控除を利用することができます。国税庁のホームページによると、本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッド代は医療費控除の対象外と明記されています。

なお、「自己都合でない差額ベッド代」など、個別ケースについては最寄りの税務署にご相談ください。

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差額ベッド代を支払わなくても良い3つのケース

特別療養環境室は、本来利用料の全額を自分で負担しなければなりません。しかし、差額ベッド代が必要となる病室に入院したとしても、差額ベッド代を支払う必要がないケースがあります。差額ベッド代を支払う必要がない3つのケースについて詳しく解説します。

  1. 病院の都合により利用する場合
  2. 治療上の理由で利用する場合
  3. 患者本人の同意がない場合

ケース1:病院の都合により利用する場合

例えば他の患者への感染防止を目的に、感染症に罹患している患者を本人の意志に関係なく差額ベッド代が必要となる病室に入院させた場合など、病院の都合で特別療養環境室に入院した場合は差額ベッド代を支払う必要はありません。

他にも、一般病室が満床で特別療養環境室に入院したケースも病院側の都合と判断されるため、差額ベッド代は不要です。

ケース2:治療上の理由で利用する場合

入院患者の容態治療内容によっては、差額ベッド代が必要になる病室に入院する必要があるケースも考えられます。治療上の理由で差額ベッド代が必要となる病室に入院する場合、患者は差額ベッド代を支払う必要がありません。

例として、以下のようなケースを指します。

・救急患者・術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者 ・免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者 ・集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者 ・後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に 希望した場合を除く。) ・クロイツフェルト・ヤコブ病の患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。

引用元:厚生労働省通知(特別療養環境室関係 抜粋)

ケース3:患者本人の同意がない場合

患者本人が同意書にサインしていない場合や、サインしたとしても差額ベッド代の記載がないなど説明が不十分だった場合、病院は差額ベッド代を請求できません。同意書にサインする場合は記載内容を確認し、差額ベッド代の金額が明記されているかも確認しましょう。

差額ベッド代の支払いには医療保険で備えよう

病気やケガのリスクは誰もが抱えており、入院費用の負担に不安を感じる人もいるでしょう。高額療養費制度があるものの、差額ベッド代は対象外のため、長期入院の場合には多額の自己負担が発生します。入院日数別の自己負担費用の平均額は以下の通りです。

入院日数 自己負担費用平均
5日未満 10.1万円
5~7日 15.6万円
8~14日 21万円
15~30日 28.5万円
31~60日 34.6万円
61日以上 60.9万円
全体 20.8万円

参考:生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」より抜粋

入院が長くなるほど自己負担額も高額になる傾向があり、5日未満の短期入院であっても約10万円の自己負担が発生します。

入院時の費用負担をできるだけ抑えるためには、生命保険会社などから販売されている医療保険への加入を検討しましょう。医療保険に加入することで、病気やケガによる入院・手術時に給付金を受け取ることができます。

最近では、がんや脳卒中といった3大疾病に手厚く備える保険や、女性特有の疾病への保障を確保できる保険が登場しています。入院費を、保険からの給付金でできるだけ賄いたい場合は、医療保険でしっかりとした保障を確保しましょう。

まとめ:差額ベッド代を理解した上で医療保険で備えを確保しよう

特別療養環境室にかかる費用が差額ベッド代です。差額ベッド代は高額療養費や医療保険の対象外ですので全額自己負担となり、入院する日数によっては入院費用が高額となることがあります。

民間の医療保険に加入することで、入院時に給付金を受け取ることができます。差額ベッド代への理解を深めた上で、必要に応じて医療保険への加入を検討しましょう。

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