「退職して失業手当を受給しながら、次の就職先を探そう」と考えていると、今の勤務先が雇用保険に加入していないことが発覚。雇用保険に未加入の場合、失業手当を受け取れません。「失業手当がないと生活できない」と想定外の事態にあせってしまいます。
そこで本記事では、雇用保険に未加入の場合に使える4つの対策をご紹介します。失業者の生活を支援する制度は雇用保険以外にも複数あり、自分の状況に合った支援策を選ぶことが可能です。
勤務先が雇用保険に未加入で失業手当を受け取れなくても、必要以上に心配する必要はありません。適切な対策をとり、生活費の不安を抱えずに就職活動に専念しましょう。
労働者のほとんどは雇用保険の加入要件に当てはまる場合が多い
本来、労働者の多くが雇用保険の加入要件に該当します。そもそも、「労働者を雇用する事業所」には雇用保険が適用され、事業主は労働保険料の納付や各種届出等を行なう必要があります。
雇用保険が適用されない事業所は、労働者5人未満の個人経営の農林水産業など、ごく限られた範囲です。ほとんどの方の勤務先は、雇用保険が適用される事業所と言うことができます。
労働者が雇用保険の被保険者になるためには、主に次の2点の要件を満たす必要があります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上ある
- 31日以上雇用されると見込まれている
また、季節的に雇用される労働者についても、特定の条件に該当すると雇用保険の被保険者となるなど、対象となる方はさらに多くなります。
正規雇用・非正規雇用にかかわらず適用されるため、これら2点の要件を満たす労働者は多いです。そのため、多くの労働者が加入保険の被保険者にあてはまります。
対策1 過去2年間分の雇用保険を納付して失業手当を受け取る
退職時に「勤務先が雇用保険に加入していなかった」とわかった場合は、(会社側が)過去2年間分の雇用保険を納めると失業手当を受給できます。ただし、さかのぼって納付できるのは2年間分のみであり「2年間加入していた」という扱いになります。
つまり、例えば15年間同一の勤務先で働いていても、受け取れる失業手当は2年間の加入相当分だけです。
しかし、勤務先が雇用保険料を給与から天引きしていた場合は、2年以上前でも天引きされた時点から加入期間と認められます。給与明細書等で、給与から雇用保険料が控除されているかどうか、確認しておきましょう。
注意点:雇用保険は労使双方の納付のため、従業員も納付をしなければならない
雇用保険は、事業所と労働者の双方が保険料を納付する制度です。そのため、雇用保険の加入資格を得るためには、労働者も保険料を納付する必要があります。失業手当を得るために、過去2年間分の雇用保険料を納付しなければならない点に、ご注意ください。
会社側に加入の要望を聞き入れてもらえないときはハローワークに相談を
勤務先に「遡及できる過去2年間分、雇用保険に加入してほしい」と請求することができます。しかし、勤務先がその要望に応じない場合は、勤務先の所在地を管轄するハローワークに相談しましょう。
本人確認書類のほか、雇用契約書や給与明細書など雇用されている事実がわかる書類を持参してください。なお、在職中に自分の雇用保険加入が行なわれているか気になった場合も、ハローワークで確認できます。
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対策2 求職者支援制度を活用する
雇用保険に加入できず失業してしまったとしても、「求職者支援制度」があります。求職者支援制度は、雇用保険を受給できない求職者が職業訓練を受講することで、その間の生活支援金を受給できる制度です。
ただし、求職者支援制度の対象になる方や給付金の支給には、さまざまな条件があります。以下でご紹介します。
求職者支援制度の対象になる方
求職者支援制度の対象となるためには、ハローワークの支援指示が必要です。そのためには、次の4条件すべてを満たさなければなりません。
- ハローワークに求職の申し込みをしている
- 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者ではない
- 労働する意志と能力がある
- 職業訓練などの支援が必要とハローワークが認めている
具体的にどのような方が該当するのか、以下に例を挙げています。
- 雇用保険に加入できなかった
- 失業手当の給付中に再就職できなかった
- 雇用保険の加入期間が足りず、失業手当を受給できなかった
- 自営業を廃業した
- 就職先が未定のまま学校を卒業した
求職者支援制度の支給条件
求職者支援制度の対象となるだけでは、給付金を受給できません。職業訓練を受講し、実際に給付金を支給されるためには、次の7条件すべてを満たすことが求められます。
- 本人収入が月8万円以下である(給与、年金、養育費などすべての収入を含む)
- 世帯全体の収入が月25万円以下である
- 世帯全体の金融資産が300万円以下である
- 現在の居住地以外に土地・建物を有していない
- すべての訓練実施日に出席している
- 世帯内に、同時にこの給付金を受給して訓練を受講している人がいない
- 過去3年以内に、虚偽その他不正行為によって、特定の給付金を受給したことがない
たとえば、夫婦が同じ期間に失職していても、2人同時に求職者支援制度を利用することはできません。どちらか1人のみとなります。
求職者支援制度の支給額
職業訓練を受講した場合、いくら支援金をもらえるのでしょうか。支援金として、次の3種類が支給されます。
- 職業訓練受講手当:月10万円
- 通所手当:職業訓練実施期間までの通所経路に応じた額(上限あり)
- 寄宿手当:月10,700円
なお、「寄宿手当」とは職業訓練を受けるために家を出て寄宿する必要があると、ハローワークが認めた方に支給されます。
注意点:職業訓練を無断で欠席すると支給が停止される恐れがある
求職者支援制度は、熱心に職業訓練を受講し安定した就職を目指す方を支援する制度です。そのため、やむを得ない理由を除いて、1度でも無断欠席(遅刻や早退も含む)をすると、給付金の支給が停止するおそれがあります。
やむを得ない理由とは、本人の病気やケガ、就職活動の面接、天災や電車遅延などです。いずれの場合も、証明書類の提出が必要です。また、やむを得ない理由であっても、8割以上の出席がないと給付金を受給できません。
職業訓練の欠席や、ハローワークの就職支援の拒否を繰り返すと、ハローワークから支援指示が取り消されます。そうなると訓練が受講できなくなるうえに、訓練期間の初日にさかのぼって給付金の返還命令が出されることもあります。
対策3 生活困窮者自立支援制度を利用する
さまざまな事情により「働きたくても働けない」「経済的に行き詰まっている」という方を、包括的に支援するのが生活困窮者自立支援制度です。個々の状況に応じた横断的な支援が受けられます。
仕事のこと以外にも、くらしのことや家計のことなど、多彩な相談に応じ支援策を行なってくれます。以下でご紹介するのが、生活困窮者自立支援制度の支援の具体例です。ぜひ参考にしてみてください。
支援例:自立相談支援事業
自立相談支援事業では、仕事や住居、家計などに困難や不安を抱えている方の支援を行なっています。具体的にどのような支援が必要なのかを、支援員が共に考えてプランを作成し、自立に向けて寄り添いながら支援します。
支援例:住居確保給付金
住居確保給付金は、職を失ったことで住居も失った方や失うおそれがある方に、就職活動などを条件に、一定期間家賃相当額を支給する制度です。くらしの土台となる住居を確保し、就職の支援を受けられます。
相談は自治体まで
生活困窮者自立支援制度の相談窓口は、各自治体の自立相談支援事業所です。お住まいの場所に見つからない場合は、都道府県または市区町村にご相談ください。
対策4 生活保護を利用する
働くことができず、生活に困難が差し迫っている場合は、最終手段として生活保護を申請しましょう。貯金も資産も失って生活に行き詰まると、住まいの確保や健康状態などに影響を及ぼす恐れがあります。生活保護を受けて、一刻も早い立て直しを目指してください。
生活保護は生活支援だけではなく就労支援でも認定される
一般的には、生活保護は家賃や生活費などの生活支援を行なうイメージがあります。しかし、生活保護には生活支援だけではなく就労支援もあります。資格取得や就職に必要なお金を支援する制度で、「生業扶助」と呼ばれています。
生業扶助によって、以下の3項目に該当するものへ現金が支給されます。
- 生業に必要な資金や器具、資料
- 生業に必要な技能の習得
- 就労のために必要なもの
自分で開業するための資金や器具の確保、技能習得の費用などさまざまな援助を得られます。生活保護を受けながら就労支援を受けられるので、再就職をあきらめずに取り組みましょう。
まとめ:雇用保険未加入で失業しても活用できる制度はある
雇用保険が未加入で失業した場合の、4つの対策をご紹介しました。自分で雇用保険に2年間さかのぼって加入する以外にも、活用できる制度は3つもあります。自分の状況や緊急性を考えて最適な対策を選んで、できるだけ失業前の生活を維持しましょう。
「雇用保険が未加入で失業手当が受けられない」とわかると、取り乱しそうになります。しかし、失業中に活用できる制度はあるので、あせらずに制度を利用しながら再就職をめざしてください。