配偶者が相続を受けるときに、相続税の控除を受けられることはご存じでしょうか。相続税が多額となり、税金を納めることができないという事態にならないために、このような制度が設けられています。
控除適用には条件や手続きが必要なため、正しく対応ができないと、本来支払わなくても良い税金を払うことになりかねません。
この記事では、配偶者控除を受けるための条件や手続き方法、注意点を説明しますので、きちんと理解して制度を有効に活用しましょう。
相続税の配偶者控除とは?
相続税の配偶者控除とは、被相続人(相続を受ける人)である配偶者が遺産分割や遺贈により取得した遺産の額が、以下の金額の高い方となるまでは、配偶者に相続税がかからないという制度です。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額(※1)
軽減される税額は、実際に遺産分割などで配偶者が取得した金額をもとに算出されます。そのため、相続税の申告期限までに分割されていない遺産は対象外です。
法定相続分(※1)とは、民法で定められた相続人の範囲や遺産分割の目安です。相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときに適用される遺産分割の金額で、必ずこの通りに分割しなくてはいけないわけではありません。詳しくは、国税庁のサイトをご覧ください。
配偶者控除を受けるための3つの要件
相続税の配偶者控除を受けるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 被相続人の戸籍上の配偶者である
- 申告期限までに遺産分割が完了している
- 税務署に相続税の申告書を提出する
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
1.被相続人の戸籍上の配偶者である
相続税の配偶者控除を受けるためには、戸籍上の配偶者として登録されている必要があります。そのため、内縁関係などは配偶者控除を受けることができないため、注意が必要です。
なお、婚姻期間についての定めはないため、たとえ数カ月であっても特に問題はありません。
2.申告期限までに遺産分割が完了している
申告期限までに遺産分割が完了している状態とは、すべての相続人の中で、遺産分割についての協議が完了し、相続額が確定している状態を指します。つまり、申告期限までに話し合いをまとめることができなければ、配偶者控除を受けることができません。
申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。遺産相続以外の手続きや対応に追われてしまう場合もありますが、申告期限を過ぎないように注意が必要です。
3.税務署に相続税の申告書を提出する
配偶者控除を受けるためには、申告書を被相続人の亡くなった時における住所を所轄する税務署に提出する必要があります。申告の時に提出する書類は、相続の方法などにより異なります。
詳しくは、国税庁「相続税の申告の際に提出していただく主な書類(PDF)」をご覧ください。
配偶者控除の計算方法
相続する人がそれぞれ被相続人とどのような間柄なのか、何人いるのかなどの条件によって相続する金額が変わるため、自分で計算するのはやや複雑です。
ここでは、相続した遺産の総額が1億6,000万円を超えるか、超えないかに分けて計算します。
1.相続した遺産の総額が1億6,000万円以下の場合
相続した遺産の総額が、1億6,000万円以下の場合、相続税は0円です。
例えば、遺産の総額が2億円で被相続人の妻と2人の子供で遺産を分割する場合、法定相続分は妻が「1/2」、2人の子供はそれぞれ「1/4」になります。相続人の法定相続分を計算すると以下の通りです。
妻の法定相続分 | 1億円 |
---|---|
子供の法定相続分 | それぞれ5,000万円 |
妻の法定相続分が、配偶者控除が適用される上限の1億6,000万円を下回るため、相続税の額は0円になります。ちなみに、相続税には「基礎控除」もあります。
基礎控除の計算式は以下の通りです。
- 3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続する財産の総額が、基礎控除の金額よりも小さい場合は、そもそも相続税が発生しません。基礎控除の金額を超えた場合にはじめて、配偶者控除が適用されることになります。
2.相続した遺産の総額が1億6,000万円以上の場合
1億6,000万円を超える場合でも、相続した遺産の総額が法定相続分内である場合は、配偶者の税額は0円になります。
例えば、遺産の総額が5億円で被相続人の妻と2人の子供で遺産を分割する場合、法定相続分は妻が「1/2」、2人の子供はそれぞれ「1/4」になります。相続人の法定相続分を計算すると以下の通りです。
妻の法定相続分 | 2億5,000万円 |
---|---|
子供の法定相続分 | それぞれ1億2,500万円 |
この場合、妻が相続する遺産の総額が、2億5,000万円を超える場合にはじめて相続税が課されます。法定相続分を超えて遺産を相続することは問題はありませんが、その場合は相続税がかかるため、遺産分割の協議のときには考慮することをおすすめします。
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相続税の配偶者控除を受ける時の3つの注意点
相続税の配偶者控除は、適用されると税金の負担が大幅に減るため、相続人にとってはとても助かる制度ですが、その分注意すべきこともいくつかあります。正しく控除を受けられるように、3つの注意点を確認しましょう。
1.遺産分割は二次相続も考慮する
遺産分割の時は、二次相続を考慮する必要があります。二次相続とは、遺産を受け取った配偶者が亡くなったとき、その配偶者が残した遺産を相続することです。この遺産の相続には、相続税がかかります。
配偶者の視点だけでなく、その夫婦の子供の視点で考えると、相続の問題は2回発生することになります。配偶者控除があるからといって、配偶者により多くの財産を分割した場合、配偶者本人がなくなった時に残る財産が多くなります。
配偶者控除のような制度は子供が相続する時にはないため、相続額が大きくなってしまう可能性があるでしょう。そのため、遺産分割の協議のときは二次相続も考慮してください。
2.申告期限内に手続きを完了させる
申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。この時までに、遺産分割協議を完了させ、所轄の税務署に申告をしていなければなりません。遺産相続以外の手続きや対応に追われてしまう場合もありますが、申告期限を過ぎないように注意が必要です。
ただし、救済措置として相続税の申告書または更生の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書(PDF)」を添付し、期限までに分割されなかった遺産について期限から3年以内に分割した場合は、相続税の配偶者控除が適用されます。
やむを得ない事情により、3年を経過するまでに分割ができなかった場合、税務署長の承認を受けたうえで、その事情が解消された日の翌日から4カ月以内に分割した場合も、控除が適用されます。
3.遺産を隠蔽していると重加算税が課される
税務調査によって、遺産の隠蔽が発覚すると、配偶者控除が受けられないだけでなく重加算税が課税されます。重加算税は35%または40%です。配偶者控除を受けられないばかりか、より多くの税金を支払うことになります。
相続税を申告するときは、余計な隠蔽などはせずに正しく申告し納税してください。
まとめ:相続税の配偶者控除制度を正しく理解して有効に活用しよう
相続税の配偶者控除は、配偶者が遺産を相続したときに税金の支払いの負担を抑えるための制度です。配偶者であれば何もしなくても控除が受けられるわけではなく、要件を満たしたうえで期限内に正しい申告が必要です。
制度を正しく理解していないと、余計な税金を払うことになりかねません。申告までの期限も設けられているため、もしもの時のために制度について正しく理解して、有効に活用しましょう。