個人事業主として、どの保険料が経費控除の対象となるか、わかりにくい時はありませんか?
特に生命保険は、控除対象となる条件や範囲が明確ではありません。そのために混乱を招くことがあります。しかし、経費控除の本質を理解すれば、混乱は避けられます。
そこで、個人事業主が経費控除できる保険と経費控除できない保険について、具体的に解説します。さらに、よく勘違いしてしまう地震保険と火災保険の違いについても詳しく解説します。
個人事業主の保険で経費計上ができない保険4つ!生命保険は?
個人事業主にとって、保険は収支管理の重要な要素です。経費計上できると思って加入したのに、経費計上できないことが加入後にわかった、とはなりたくないです。
そのためには、それぞれの保険が税金の計算にどう影響を与えるのかの理解が大切です。以下に、代表的な保険を4つ挙げました。これらの保険が経費として計上できるか、控除の対象となるかの両視点から解説します。
- 事業主の生命保険
- 損害保険
- 国民健康保険
- 小規模共済掛金
①事業主の生命保険料
個人事業主が被保険者となる生命保険の保険料は、原則として経費計上が認められません。生命保険は個人の生命や健康に関わるリスクをカバーする保険です。
そのため、直接的に事業活動とは関連しないので経費計上が認められていません。しかし、個人事業主が事業に関連するリスクをカバーするための保険の保険料は、経費として計上できます。
たとえば、事業主が事故に遭った場合、事業が停止するリスクをカバーする保険は経費計上が認められます。
②損害保険
損害保険は、事業活動におけるさまざまなリスクをカバーする保険です。一見、事業活動に使用している物の全ての損害保険料は経費計上できると考えられます。
しかし、全ての損害保険料が経費計上できるわけではありません。経費計上が認められるかどうかは、保険の性質や契約内容、そして保険料の支払いが事業活動と直接関連があるかどうかによります。
「損害保険」と一口にいってもさまざまな種類があります。代表的な4つの損害保険は次のとおりです。
損害保険の種類:
- 火災保険
- 自動車保険
- 地震保険
- 傷害保険
火災保険は、火災だけでなく、風水害や盗難など、さまざまなリスクに対する損害を補償します。これは、地震のリスクが高い地域では地震による損害が頻繁に発生し、保険会社が負担するリスクが大きすぎるためです。
自動車保険は、事業で使用する車両が事故を起こした場合の損害の補償です。地震保険は、地震による建物や家財の損害を補償します。
地震保険は、火災保険と別に契約する必要があります。地震保険の補償は、地震やその直後の火災・津波による損害の補償です。
傷害保険は、事業活動中に負傷した場合の治療費などの補償です。これらの保険は、事業運営に直結している火災保険や自動車保険は一部、経費計上できます。次項で詳しく解説します。
③国民健康保険
国民健康保険は、全ての国民に加入が義務付けられている保険です。この保険は、個々の生活を支え健康を維持するための保険です。
そのため、直接的に事業活動とは関連せず、経費計上は認められません。しかし、国民健康保険料は、「社会保険料控除」の名目で、所得控除の対象です。
これは、国民健康保険料が個々の生活費の一部と判断されます。以上のように、国民健康保険料の経費計上はできませんが、所得控除の対象です。
④小規模共済掛金
小規模共済掛金は、小規模事業主が加入できる共済制度です。事業主自身の死亡や障害、疾病などに備えられます。
しかし、小規模共済掛け金は、直接的に事業活動とは関連しないため、経費計上は認められません。経費計上が認められるのは、事業活動に直接関連する費用だけの原則に基づいています。
そのため、小規模共済掛金は事業経費として計上できません。しかし、小規模共済掛金は「小規模企業共済等掛金控除」の名目として、所得控除の対象です。
個人事業主の保険選びは、経費計上や所得控除の観点から重要です。事業に関連しない保険料は経費計上できません。
しかし、税制上のメリットが全くないわけではありません。一部の保険料は確定申告時に所得控除対象となり、個人事業主のリスク軽減を支援する形で、税制上の優遇があります。
たとえば、国民健康保険料は最高12万円まで、小規模共済掛金は全額が所得控除対象となります。保険選びは経費計上ができるかどうかだけでなく、確定申告時の所得控除も考慮するべきです。
また、保険は事業の安定性を高め、将来的な経済的損失を防ぐために重要です。経費計上ができないからといって、保険を避けるのはおすすめしません。
保険選びは、経費計上や所得控除の有無、安心感など多角的な視点から考慮すべきです。事業の継続性を確保しつつ、税制上のメリットを最大限活用することが可能です。
個人事業主の保険で経費計上ができる保険2つ
個人事業主として、どの保険が経費として計上できるかの理解は、税金の計算と事業運営において重要です。そこで、経費計上ができる保険を2つ具体的にご紹介します。
それらは「従業員の生命保険」と「家事按分の損害保険」です。これらの保険は、事業運営に直接関連しているため、経費計上が認められています。経費計上の詳しい計算方法は次項で説明します。
- 従業員の生命保険
- 家事按分の損害保険
①従業員の生命保険
従業員の生命保険は、個人事業主が従業員の保障のために加入する保険で、経費計上が可能です。たとえば、10人の従業員のために年間100万円の保険料を支払った場合、全額を経費計上できます。
理由としては、従業員の生命が事業運営に直接関連しているとの解釈だからです。しかし、全ての生命保険料が経費計上できるわけではありません。
保険の性質、契約内容、そして保険料の支払いが事業活動と直接関連があるかどうか、で決まります。具体的には、個人事業主自身や、その家族を対象とする生命保険は、経費計上が認められません。
生命保険は個人に対する保険であり、個人事業主がいなくては事業ができないという理由だけでは、経費として認められていません。
②家事按分の損害保険
家事按分は、事業所を自宅とし、さらに備品も事業用と生活用で分けていない場合に必要となる計算方法です。
引用元:家事按分とは?個人事業主が覚えておきたい按分の意味や計算方法、税法上の扱いを解説
自宅の一部を事業所として使用している場合、その部分にかかる損害保険料は、事業費として計上できます。しかし、保険料の全額を経費計上できません。
事業所部分と自宅で家事按分をして、事業用部分の保険料だけの経費計上が必要です。具体的には、自宅の床面積のうち事業所に使用する部分の割合を算出し、その割合に応じて保険料を経費計上します。
東京都のワンルームマンションの平均敷地面積(約25平方メートル)を例に説明します。このうち、事業用に使用している部分が5平方メートル(約3畳)。
この場合、全体の床面積に対する事業用の部分の割合は、5平方メートル÷25平方メートル=0.2(20%)。年間の損害保険料が10万円であれば、20%にあたる2万円を経費計上できます。
このように、家事按分の損害保険は自宅を事業所として使用している個人事業主にとって、節税できる手段です。
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個人事業主の保険選びで気をつけるべき人・おすすめの保険3つ
個人事業主として事業を始めるとき、事業計画の作成や資金調達、保険の選び方など考えることはたくさんあります。中でも保険の選び方は、事業を守るために重要です。
保険の選択は、個人事業主の状況や事業の特性によって大きく変わります。そのため、これが正解と言ったことはありません。
さらに、事業が順調に進行している時でも何が起こるかは誰にも予測できません。火災や事故、盗難、労働者の怪我といった予期せぬ事態が発生した場合、保険はあなたの事業を守る盾です。
保険は事業の安定的な運営をサポートし、リスク管理の一部として無視はできません。特に、事業形態によって必要な保険は大きく変わってきます。
あなたが、どのタイプの個人事業主に該当するのかを把握し、適した保険を選ぶことが大切です。そこで、以下に、特定の状況を抱える3つのタイプの個人事業主について、それぞれ検討が必要な保険を説明します。
- 従業員がいる人
- 事業に使っている車がある人
- 家を事務所として使用している人
①従業員がいる人は生命保険・社会保険がおすすめ
個人事業主の中には、事業を拡大するためや、多様な業務をこなすために、従業員を雇用します。製造業の場合、製造ライン管理のスタッフや、品質を保証するための技術者など、特定の役割を担う従業員を雇います。
このような状況では、生命保険と社会保険を優先的に検討しましょう。従業員が予期せぬ事故や病気により働けなくなった場合、生命保険はその従業員やその家族への経済的な支援を提供します。
これにより、個人事業主としては、従業員が安心して働くことができる環境を提供できます。また、社会保険に加入すれば、従業員に対する医療費の支払いや休業時の補償など、さらなる福利厚生の提供が可能です。
特に、重要なスキルを持った従業員が長期にわたり働けなくなった場合、事業に大きな影響を与える可能性があります。社会保険は、このようなリスクを軽減します。従業員を雇うことで起こりうるリスクに備え、適切な保険を選ぶことが大切です。
②事業に使っている車がある人は自動車保険がおすすめ
個人事業主の中には、商品の配送や出張、業務のために車を使用します。フードデリバリーサービスを始める場合、商品を顧客まで届けるための車やバイクが必要です。
また、工事や修理業を営んでいる場合、工具や機材を運ぶための商用車が必要になることもあります。これらの事業形態では、事業用車両保険を優先的に検討した方が良いでしょう。
たとえば、配送中に起こった事故や車両の故障など、多種多様な状況で車がダメージを受ける可能性があります。事業用車両保険は、これらのリスクから車両を保護し、事故による修理費用や代替車両のレンタル費用をカバーします。
さらに、第三者に対する損害も考慮し、自動車事故による個人の傷害や、死亡をカバーする個人傷害保険も検討すべきです。運転業務中に起きた事故で、他人に損害を与えた場合の賠償責任を補償します。
事業として車を運転して、起こりうるリスクに対して備えるため、適切な保険の選択が大切です。
③家を事務所として使用している人は火災保険がおすすめ
個人事業主の中には、自宅を事務所として利用する人も多くいます。フリーランスのデザイナーやライター、コンサルタントなど、自宅での仕事が多い職種では特にこの形態が多く見られます。
このような状況の場合、自宅と事務所が一体となっているため、家庭用保険だけではなく、火災保険を優先的に検討すべきです。たとえば、自宅で起きた火災により、事務所として使用している部屋やそこに置かれた設備、機器が損害を受ける可能性があります。
火災保険は、このようなリスクから自宅を保護し、損害に対する修理費用や再設置費用をカバーします。また、自宅が事務所であることから生じるリスクも考慮に入れるべきです。
たとえば、自宅でのミーティングやクライアントの訪問がある場合、事故によるケガや賠償責任について考える必要があります。事務所を自宅の一部とした場合の、起こりうるリスクに対して備えるため、適切な保険の選択が大切です。
個人事業主として保険を選ぶ際は、自身の事業状況とそれに伴うリスクの考慮が大切です。
①従業員を雇う個人事業主は、生命保険と社会保険を優先的に検討しましょう
従業員が、急な事故や病気により働けなくなった場合の補償をします。さらに、社会保険は医療費や休業時の補償を含む、従業員に対するより充実した福利厚生を提供します。
②車を事業で使用する個人事業主は、自動車保険を検討しましょう
車両への損害や、事故による第三者への損害賠償責任をカバーします。業務による移動や配送が頻繁な場合は、この保険が特に重要です。
③自宅を事務所として使用している個人事業主は、火災保険を検討しましょう
家庭用の保険に加えて、火災保険は自宅での事故や災害により、事業所部分が被った損害を補償します。各々の事業状況によって保険のニーズは大きく変わります。自身の事業のリスクを、しっかりと理解し、適切な保険を選ぶことが重要です。
まとめ:控除と経費を組み合わせて無駄なく保険を利用しよう
個人事業主として保険選びをする際の考慮すべき点と、経費計上が可能な保険について詳しく説明しました。経費計上ができない保険には、事業主の生命保険料、損害保険、国民健康保険、小規模共済掛金などがあります。
経費計上はできませんが、控除の対象です。一方で、従業員の生命保険や家事按分の損害保険などは経費計上が可能。保険料の経費計上や控除を活用し、税負担の軽減が可能です。
また、保険選びにおける対象者とおすすめの保険についても触れました。従業員を持つ人には生命保険と社会保険が、事業で車を使用する人には自動車保険。自宅を事務所として使用する人には火災保険がおすすめ。
重要なポイントは、自身のリスクと必要な補償を理解し、それに基づいて保険を選ぶことです。その後、経費計上が可能な保険を活用し、税制のメリットを最大限に活かしましょう。控除と経費を組み合わせることで、無駄なく保険を利用できます。