年金積立金の運用とは、GPIFによる国内外の株式・債権への投資のことです。定年後に向けて、資産を増やす方法を検討している人は、年金についての関心も高いのではないでしょうか。この記事は年金積立金とは何か、運用状況、今後の運用の見通しについて解説しています。老後のための資産運用を考える際の参考にしてください。
年金積立金の運用とは?
ここでは、年金積立金についてよく知らない人に向けて、「年金制度とは何か」「年金積立金は年金とどのように関係しているのか」などを解説します。
そもそも年金制度とは
年金制度は簡単にいえば「長生きしたときの保険」です。現役世代の保険料で年金受給者を支える仕組みになっています。国の調査によると高齢化世帯の平均所得の約7割は年金であり、老後生活になくてはならない制度といえます。
日本の年金制度は公的年金と私的年金をあわせて3階建て構造といわれています。1階は自営業者・会社員・公務員・専業主婦(夫)など全員が加入する国民年金です。2階は自営業者が任意で加入する国民年金基金と、会社員・公務員が加入する厚生年金になっています。3階は確定企業年金や企業型確定拠出年金、年金払い退職給付などです。個人型確定拠出年金も3階に含まれます。
年金積立金の運用は年金制度を維持する仕組みのひとつ
少子高齢化が進む日本において年金制度を持続可能なものとするために、以下のような仕組みがあります。
・負担が大きくなりすぎないように保険料に上限がある
・基礎年金の半分を国が負担
・人口や平均寿命に合わせて給与水準を調整
・年金積立金の活用
つまり、年金積立金の運用は、年金制度を続けていくための仕組みのひとつです。現在のところ、今後100年程度を目安に年金積立金を運用・活用していく計画になっています。
年金積立金の運用はGPIFが行っている
年金積立金を運用しているのは、厚生労働省が管轄しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。厚生労働省が直接預けた年金積立金を管理・運用しています。国が運用しない理由は、巨額の資金を預かることにより行政が肥大するリスクがあることや、専門家を揃えるのが難しいなどです。
GPIFは巨大な投資集団というわけでもありません。ほとんどの運用はゴールドマン・サックス・マネジメントや野村グループなどに外部委託しています。
誰のお金が運用されているのか
年金積立金は現役世代から退職世代に送られて残ったお金が運用されています。つまり、現在働いている人ならば、まさに自分の支払った保険料で運用されていることになります。年金の内訳は7割が現役世代の保険料、2割が国庫、1割が積立金ですが、現役世代から徴収した保険料が丸ごと年金として支給されているわけではありません。余ったお金を年金積立金として運用しています。
年金積立金の運用の現状
ここではGPIFの運用方針や投資対象、過去の運用実績などを紹介します。
GPIFの運用方針
GPIFの長期的な運用は「賃金上昇率+1.7%」を目指しています。
賃金上昇率が目標のなかに含まれているのは、年金支給が賃金水準に応じて変化するからです。年金積立金の運用が年金制度の維持に役立つためには、賃金上昇率を上回る利益を上げなければなりません。一般の資産運用の目標に賃金上昇率を含むことはほぼないことからも、年金積立金の運用方針が特殊であることがわかります。
GPIFの投資対象
GPIFの投資対象のポートフォリオは、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%です。ポートフォリオとは、資産運用方針に沿って金融商品を組み合わせることをいいます。GPIFの運用方針は特殊ですが、投資対象は投資信託などと大きく変わりません。つまり、年金保険料を支払うことは、実質的にGPIFに資産運用を任せていることになります。
GPIFの過去の運用実績
2001~2018年度までの運用利回りの年平均は2.7%でした。この間の賃金上昇率はマイナス0.16%だったため、「賃金上昇率+1.7%」という目標を上回る成績をあげていることになります。単年度でみればプラスの年もあればマイナスの年もありますが、トータルでは約76.7兆円の利益を上げています。
投資業界でGPIFが「クジラ」と呼ばれている理由も、この収益額からきています。ただし、将来的に目標を達成し続ける保証はありません。
今後の年金積立金運用の見通し
年金積立金の運用成績が、今後悪化するリスクはあるのでしょうか。ここでは過去に巨額の赤字を出した例や悪影響を与える要因などを紹介します。
巨大赤字を出した時期もある
2018年第3四半期にGPIFはわずか3カ月間で14兆円の損失を出しています。これは運用資金の約1割に相当する巨額赤字です。国内株式が7兆6,556億円の損失、海外株式が6兆8,582億円の損失を出しています。債権は国内で4,242億円プラス、国外は7,182億円の損失でした。
GPIFは国内外の株式市場でリスク回避の動きが進んだことが、巨額赤字の原因であると発表しています。近年では、新型コロナウィルスによる世界経済の減速が懸念されました。しかし、2020年の4~6月期の運用成績は、各国の金融政策による株価上昇を背景に、過去最高の12兆4,868億円の黒字でした。
年金積立金の運用に悪影響を与える要因
ここでは、年金積立金の運用に悪影響を与える要因を紹介します。
国内外の相場状況・投資マインド
2018年の巨額赤字の原因としてGPIFが理由にあげたのが、投資マインドの変化による株式市場の下落でした。GPIFの株式投資の場合、基本的には現物株式を買うしか選択がないため、全体的に株価が下がってしまえば、成績が落ちやすい傾向があります。今後、国内外の株価が下落基調になれば、GPIFの運用成績に影響を与えるかもしれません。
コロナ禍やリーマン・ショックなどの異常事態
コロナ禍やリーマン・ショックなどの異常事態も、GPIFの年金積立金の運用に影響を与えます。コロナ禍において、2020年4~6月は各国の金融政策によって黒字となりましたが、赤字となる可能性もありました。国内外の経済・政情の不安定によって大きな損失が出るリスクがあることは、個人投資家の資産運用と変わりません。
GPIFの年金運用にもリスクはある
GPIFの年金積立金の運用はプロの手によって行われます。ポートフォリオによって分散投資することで、できるだけリスクを抑えつつ「賃金上昇率+1.7%」という目標を達成するように運用設計されています。投資期間も数十年の長期運用がメインです。したがって、長い目でみると、変動幅が少なく安定的な運用といえるでしょう。
しかし、投資である以上、必ずしも利益が上がるとは限りません。運用に失敗してしまえば、最悪の場合、年金給付額の縮小や増税などの可能性もあります。
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年金積立金の運用が不安な場合はiDeCo(イデコ)・投資ファンドなどの方法もある
年金積立金の運用に対して不安を持つ人もいるでしょう。iDeCo(イデコ)・投資ファンドなどで、個人的に老後に備える方法を紹介します。
個人型確定拠出年金を活用する
ここでは、年金制度の3階部分にあたる個人型確定拠出年金について紹介します。
iDeCo(イデコ)とは
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金のことです。毎月5,000円から1,000円単位で積み立てをして、60歳以降で受け取る仕組みです。積み立てしたお金の全額が所得控除になるほか、運用で利益が出た場合も税金がかかりません。ただし、受け取る際に税金がかかる場合があるため注意が必要です。また、口座開設の手数料と運用費用も発生します。
iDeCo(イデコ)運用商品は「元本確保型」と「価格変動型」の2つ
iDeCo(イデコ)運用商品は「元本確保型」と「価格変動型」の2種類です。元本確保型は安全に資産運用したい人に向いているタイプです。あらかじめ金利が決まっている定期預金などで運用されます。ただし、お金の価値が下がるインフレリスクがあることに注意しましょう。
価格変動型は元本保証がないタイプです。iDeCo(イデコ)においては、実質上、投資信託と同じだと考えてもかまいません。ある程度リスクを取って運用収益を上げたい人に向いています。
投資ファンドを活用する
投資ファンドとは、複数の個人投資家などから資金を集め、プロであるファンドマネージャーが運用する仕組みです。運用で利益が出れば、出資した資金に応じて分配されます。投資ファンド(投資対象)を選ぶポイントは以下のとおりです。
・投資対象(国内外の株式・債権・REITなど)
・ポートフォリオ
・投資スタイル(パッシブ運用・アクティブ運用など)
・信託報酬や手数料などのコスト
・中長期の実績(3~5年が目安)
自分で資産運用する
資産運用を人に任せないで自分でするという方法もあります。たとえば、株式取引やFXをしたり、外貨預金をしたりするなどです。ただし、この場合は情報収集が重要になり、さらにはトレードスキルも必要になります。
定年後の老後生活のための資産運用として注目されているのが不動産投資です。たとえばワンルームマンションを所有して毎月の賃料を得られれば、年金と同様に定期的な収入を得られます。
不動産投資は、株式取引やFXと違って安定性が高く、仮に所有者が亡くなった場合にも家族に資産として残せるのもメリットです。ただし、不動産投資には立地や物件などの見極めが必要であるため、プロのアドバイスを受けたほうが安心です。
まとめ
年金保険料の一部は、GPIFによって国内外の株式・債権に投資されています。現状では「賃金上昇率+1.7%」という年金積立金の運用目標を達成していますが、先のことはわかりません。個人的な資産運用の検討も必要でしょう。
SURE INNOVATION(シュアーイノベーション)は、大阪の梅田、三ノ宮、神戸の中古コンパクトワンルーム物件に強みのある不動産コンサルティング会社です。顧客のバックグラウンドや価値観にマッチするライフプランニングをご提案します。各種保障付きのクローズドな会員制度ならではの充実したサポート体制により、はじめての不動産投資も安心です。
個人的な資産運用をお考えでしたら、まずは不動産セミナーに参加してみてはいかがでしょうか。