税金には、さまざまな「控除」の制度が用意されていることをご存知でしょうか?「配偶者特別控除」も控除制度の一つで、利用することで節税ができます。しかし、控除制度は適切な手続きを行わなければ利用できないものが多く、知らないと損をすることもあります。
制度として用意されている控除を適切な方法で利用することで、納税額を抑え、家計を手助けできます。
本記事では、配偶者特別控除がどのような制度か、どんな手続きが必要なのかについて解説します。制度名からして「配偶者がいる方に関係する」ことはイメージできるでしょう。自分は利用できるかもしれないと感じた際には、ぜひこの記事の内容を参考にしてください。
配偶者特別控除の概要
「配偶者特別控除」とは、所得控除の一種です。
令和2年度以降、配偶者が年間で48万円を超える所得を得ている場合、「配偶者控除」が適用できません。しかし、配偶者特別控除は、配偶者控除が受けられない所得状況においても利用できる控除制度です。
配偶者特別控除の要件
配偶者特別控除を利用することで、最大38万円分の所得控除が受けられ節税につながります。配偶者特別控除を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 納税者の合計所得金額が1,000万円以下
- 配偶者の4つの要件
- 配偶者が、配偶者特別控除を適用していない
- 配偶者が、源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていない
要件①納税者の合計所得金額が1,000万円以下である
配偶者特別控除を利用するためには、控除を適用する納税者の年間の所得額の合計が1,000万円以下である必要があります。
「合計所得金額」は、以下の項目の合計金額のことをいいます。
- 純損失
- 雑損失
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失
- 特定居住用財産の譲渡損失
- 上場株式等に係る譲渡損失
- 特定投資株式に係る譲渡損失及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を適用する前の総所得金額
- 特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額
- 株式等に係る譲渡所得等の金額
- 上場株式等の配当所得等(上場株式等に係る譲渡損失との損益通算後の金額)
- 先物取引に係る雑所得等の金額
- 山林所得金額
- 退職所得金額
要件②配偶者が4つの要件を満たしている
配偶者特別控除は、控除を適用する納税者の「配偶者」が、以下の4つの要件を満たしている必要があります。
- 民法で規定された配偶者であること(内縁関係の人は対象外)
- 控除適用納税者と生計を一にしている(日常の生活の資を共にしている)こと
- その年に「青色申告者」の事業専従者として給与を受け取っていない、または「白色申告者」の事業専従者ではないこと
- 年間の合計所得額が48万円超~133万円以下(令和2年度以降)である
要件③配偶者が、配偶者特別控除を適用していない
配偶者特別控除は、納税者の配偶者が配偶者特別控除を利用していないことが条件です。また、配偶者特別控除は夫婦間で互いに受けることはできません。例えば、夫が配偶者特別控除を利用する場合は、妻は配偶者特別控除を利用できません。
要件④配偶者が、源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていない
配偶者特別控除は、控除を利用する納税者の配偶者が、源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないことが条件です。国税庁のホームページでは条件が2つに分けて解説されています。
配偶者特別控除を利用するためには、配偶者が以下のいずれかの条件において源泉徴収されていないことが必要です。
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」に記載の源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収される
- 「従たる給与についての扶養控除等申告書」に記載の源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収される
源泉徴収に関してはもう1つ条件があります。それは、配偶者が「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないことです。
配偶者特別控除の控除額(令和2年度以降)
配偶者特別控除は、「控除を受ける納税者本人の合計所得額」と「配偶者の合計所得額」の組み合わせにより、1万円~38万円のいずれかの控除が適用されます。
控除を受ける納税者本人の合計所得額 | ||||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超950万円以下 | 950万円超1,000万円以下 | ||
配偶者の合計所得額 | 48万円超~95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超~100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超~105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超~110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超~115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超~120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超~125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超~130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超~133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
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配偶者特別控除の手続き
配偶者特別控除を利用するためには、所定の手続きが必要です。この項目では、以下の2つについて解説します。
- 配偶者特別控除の必要書類
- 配偶者特別控除の手続き先
配偶者特別控除の必要書類
配偶者特別控除は「確定申告」または「年末調整」によって申請します。
自ら確定申告を行う場合は、以下の書類が必要です。
- 「控除を受ける人の配偶者である」ことが確認できる書類(戸籍の附票の写し等)
- 控除を受ける人が「配偶者の生活費に充てるための支払いを行った」ことが確認できる書類(送金依頼書等)
年末調整で申請する場合は、その年の最後に給与等の支払いを受ける前日までに給与所得者の配偶者控除等申告書を、給与の支払い者を経由して源泉所得税納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
配偶者特別控除の手続き先
確定申告により申請する場合は、郵送や電子申請、または各自治体の確定申告用の会場などで手続きしましょう。不明な点は、国税局電話相談センターなどで相談してください。
控除や税金の計算はシミュレーションツールが便利
配偶者特別控除などの控除制度の利用の有無は、自身が負担する税金の金額に大きく影響します。「自分はどれくらい納税するべきなのか」「控除によってどのくらい節税できるのか」については、手計算を行うよりも専用のツールを使ってシミュレーションすることをおすすめします。
シミュレーションを行うためのさまざまなツールがあり、タイミング次第では公式の様式を使うこともできます。2021年1月4日には、すでに令和2年度用の確定申告書作成コーナーが開設されています。前もって可能な部分を入力しておけばシミュレーションツールとして活用でき、データを保存しておけば申告時に手早く申告書を作成できます。
まとめ:配偶者特別控除は配偶者控除の適用が受けられない場合でも利用できる控除制度
本記事では、配偶者特別控除について解説しました。以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 配偶者特別控除は最大38万円(令和2年度)の所得控除
- 納税者と配偶者それぞれに条件がある
- 確定申告または年末調整で申請可能
配偶者特別控除については、似たような名前である「配偶者控除」についても理解しておくことをおすすめします。先にご紹介した関連記事『配偶者特別控除と配偶者控除の違いとは?両者の違いを徹底解説』にて両者の違いを詳しく解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
税金に関しては、配偶者特別控除の他にもさまざまな控除制度が用意されており、適切に利用することで節税につながります。利用できる場合は、ぜひ積極的に活用しましょう。