ケガや病気で通院すると診察代や薬代など出費が気になってしまいます。さらに、通院先が一定の交通費を必要とする場所にある場合、毎回の診察のたびに「交通費が家計の重荷になる」と思ってしまうのではないでしょうか。
実は、場合によっては通院の交通費も医療費控除の対象になります。
本記事では以下の内容を紹介します。
- 医療費控除の概要
- 交通機関(電車・バス・タクシー・新幹線・飛行機)の交通費が医療費控除の対象になるか
- 自家用車の経費(ガソリン代・駐車場代・高速代)が医療費控除の対象になるか
- 付き添いの場合、交通費が医療費控除の対象になるか
- 交通費を医療費控除として申請する手順
交通費が医療費控除となる条件や手順を知っておくと安心して通院できるので、ぜひご確認ください。
医療費控除とは?医療費が一定額を超えた場合に受けられる所得控除制度
医療費控除とは、1年間に自分および生計を同じくしている配偶者や親族のために支払った医療費が一定額を超えると、所得控除される制度です。
一定額とは、以下のとおりです。
(実際に支払った医療費)ー(保険金等で補てんされた金額)ー10万円
この式から、10万円以上の医療費がかかった場合(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%金額)、医療費控除を受けられることがわかります。医療費控除の上限額は200万円です。
医療費の支払いが必要だった納税者の事情を考慮し、所得から医療費を控除することで税負担を軽減しています。この医療費控除には、自分や同居家族だけではなく離れて暮らしている扶養家族の分もカウントできます。また、治療費に加え通院の交通費も計上可能です。
交通費は医療費控除の対象になる?交通機関別に5つのケースを解説
医療費控除に通院の交通費が計上可能と先述しました。「どの交通機関ならOKなの?」と気になる方も多いでしょう。
医療費控除に計上できる交通費は、医師等に診察等を受けるため直接および通常必要であることと定義されています。つまり、「医療行為を受けるために必要な交通費」という条件を満たす必要があります。
次の5つの主要な交通機関が、医療費控除の対象となるのかひとつずつご紹介します。
- 電車
- バス
- タクシー
- 新幹線
- 飛行機
電車
電車は医療費控除の対象になる交通機関です。
ただし、里帰り出産のために実家へ移動するための電車代は医療費控除対象としては認められません。治療行為を受けるための通院費ではなく帰省の費用とみなされるためです。
また、通学や通勤の定期券圏内への通院費も、医療費控除の対象外です。
医療費控除を受けるためには領収書が必要ですが、電車利用の場合、領収書が発行されるとは限りません。家計簿などに「誰がいつどの病院に行くためにかかった電車代」なのかをこまめに記録しておく必要があります。
バス
バス利用も医療費控除の対象です。バスも領収書の発行はないため、バス利用の日付と利用バス停名およびバス代を記録しておきましょう。
ただし、バスの場合も、通学や通勤の定期券圏内への通院費は医療費控除対象になりません。また、観光バスをチャーターし通院した場合も、医療費控除対象外です。
タクシー
通常の通院でタクシーを利用した場合、タクシー代は医療費控除の対象になりません。
例外として、タクシー代が医療費控除対象となるケースを以下に挙げます。
- 公共機関が動いていない時間帯に、通院の必要が生じた場合
- 緊急を要する場合
- 症状等が重く、公共交通機関の利用が困難な場合
「タクシーのほうが楽だから」という理由では医療費控除の対象にならないため、ご注意ください。なお、タクシー使用の際は必ず領収書を受け取って保管しておく必要があります。
新幹線
通院のための新幹線が医療費控除の対象になるかどうかは、場合によります。患っている病気を治療できる医療機関が遠方の病院のみの場合は、新幹線料金は医療費控除対象にできます。手続きのために領収書を保管しておいてください。
近隣で治療が受けられるのに「あの病院がいい」と自己都合で遠隔の病院を選んだ場合は、医療費控除の対象になりません。なお、新幹線料金が医療費控除対象となる場合でも、通院のための宿泊代は医療費控除対象外です。
飛行機
飛行機による通院費が医療費控除になるのは、病気や症状の治療を受けられるのが遠方の病院のみという場合です。この場合、領収書を保管しておきましょう。
一方、治療を受けられる病院が通常の交通機関で通える範囲にあるのに、自分の都合で遠方の病院を選んだ場合は、控除の対象外です。
また、飛行機で通院する場合は相当遠方のためホテル等に宿泊することもありえるでしょう。しかし、宿泊費はいっさい医療費控除の対象に含まれないため、ご注意ください。
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自家用車にかかる経費は医療費控除の対象になる?基本的には対象外
「自家用車で通院した場合の経費は医療費控除の対象にできるの?」と気になる方も多いでしょう。具合が悪いときには電車やバス、タクシーといった交通機関を使いにくく、人目を気にせずに済む自家用車が便利な一面はあります。
しかし、自家用車で通院した際の経費は、基本的には医療費控除の対象外です。医療費控除の対象が、「人的労務提供の対価」つまり他者のサービスへの支払いに限定されているためです。電車やバス、タクシーは他者によるサービスですが、自家用車利用は違います。
また、自家用車利用で発生する経費は、通院費であるという確定が難しいです。自家用車で通院した場合の経費がなぜ医療費控除に該当しないのか、次の項目ごとにご紹介します。
- ガソリン代
- 駐車場代
- 高速代
ガソリン代
自家用車で通院すると発生するガソリン代は、医療費控除の対象にはなりません。「人的労務提供の対価」でないうえに、通院にどの程度使われたかという確定が難しいためです。
例えば、自家用車で病院に行き、帰りに買い物をして自宅に着いた場合、どこまでを通院費とするか線引きがあいまいにならざるを得ません。そのため、ガソリン代は控除対象外です。
駐車場代
自家用車で通院した際の駐車場代も、医療費控除の対象から外れます。
ガソリン代と同様、通院のためだけに使われたと確定できないためです。病院の駐車場を使用した場合も、控除対象外です。
高速代
自家用車で通院した際の高速代も医療費控除の対象外です。
高速代が医療費控除の対象となるのは、やむを得ない状況でタクシーを利用し通院した際のタクシー料金に含まれる場合です。自家用車使用の場合の高速代は控除対象として認められません。
付き添いの際の交通費は医療費控除の対象になる?一部対象外
家族の通院に付き添った際の交通費が、医療費控除の対象として認められる場合があります。年齢や病状からみて患者1人で通院することが難しい場合、付き添いの通常必要な交通費が医療費控除の対象になります。
次のようなケースが、医療費控除として認められる例です。
- 患者が子どもの場合
- 患者が高齢者の場合
- 大人であっても症状により、1人で通院するのが難しい場合
一方、「1人でも通院可能だが心配なので付き添った」という場合は、付き添いの交通費は医療費控除の対象にはなりません。
また、入院患者の世話をするために付き添いが病院に通った場合も、医療費控除の対象外です。患者本人が通院する時に付き添った交通費のみが、医療費控除の対象として認められます。
交通費を医療費控除として申請する3つの手順
通院や付き添いとしてかかった交通費を医療費控除として申請するための手順は、次の3ステップです。
- 書類を準備する
- 医療費集計フォームを利用する
- 確定申告書を提出する
この手順どおりに進めると、交通費を医療費控除に計上できるので、ぜひお試しください。以下で詳しくご説明します。
①書類を準備する
医療費控除を申請するには、治療にかかったお金(診療代や薬代)のレシートや領収書のほか、通院の交通費の記録が必要です。通院するごとに「いつ誰がどこに通院するためにいくら払ったか」を記録し保管しておいてください。
「記録するのを忘れてしまいそう」という場合は、病院等で受け取ったレシートや領収書の裏にメモをしておくこともおすすめです。後でまとめてノートやパソコンの表計算ソフトに転記しやすいでしょう。
②医療費集計フォームを利用する
国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーには、「医療費集計フォーム」という医療費控除の明細書を作成できるフォーマットがあります。この医療費集計フォームを使って、必要事項を入力すると確定申告書にそのまま転記できるため、便利です。
Excelに慣れている方はぜひご活用ください。確定申告書作成コーナーからフォームをダウンロードして使用できます。
③確定申告書を提出する
医療費集計フォームで医療費控除の明細を作成後、確定申告書を作成しお住まいの自治体の税務署に提出します。確定申告書の書き方は、国税庁ホームページの確定申告書作成コーナー等で確認できます。
提出方法は、直接持参のほか郵送、オンラインのe-tax経由での提出が可能です。提出期間は翌年の2月16日から3月15日に限定されているので、期限にご注意ください。
まとめ:交通費が医療費控除になるケースを理解して、賢く節税しよう
今回は、医療費控除の概要や交通費が医療費控除に該当するケースについて解説しました。
以下の4つのポイントをおさえておきましょう。
- 10万円以上医療費がかかった場合、控除を受けられること
- 必要不可欠な交通費であれば、控除の対象となること
- 自家用車で通院した際の経費は、基本的に控除の対象外であること
- 患者1人での通院が難しい場合、付き添いの交通費は控除の対象になること
公共交通機関での通院や、足が不自由であるため1人で通院できない患者の付き添いでかかった交通費は、医療費控除の対象です。ぜひ所得控除制度を活用して賢く節税しましょう。