確定申告の項目1つに「事業所得」がありますが、具体的に事業所得がどんな所得であるのか詳しく説明できますか?所得区分はそれぞれ申告時の注意点や税額の計算方法などが異なるので、自身が関わる所得区分についてはきちんと把握しておく必要があります。
本記事では、事業所得について、含まれる収入項目や申告時に注意するべき点について解説します。初めて事業所得を申告する方にとって必見の情報を網羅していますので、ぜひ参考にしてください。
事業所得とは
「事業所得」とは、事業から生ずる所得のことです。例えば、個人事業主が小売業を営んで稼いだお金のほとんどは、事業所得に分類されます。
国税庁によると、令和2年4月1日現在法令等において所得は10種類の区分があります。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
事業所得に含まれる収入項目
事業所得は、具体的に何が含まれるのか、何が含まれないのかを知らないと、適切に確定申告できません。特に「事業所得のように見えるけれど、実は事業所得には含まれない所得」が何であるかを明確に把握しておくことは重要です。
- 事業所得に含まれる主な収入
- 似ているけれど事業所得には含まれない項目
事業所得に含まれる主な収入
事業所得には、主に以下のような事業により生じた所得が含まれます。
- 農業
- 漁業
- 製造業
- 卸売業
- 小売業
- サービス業
主に「個人事業主が自身の営む事業により発生した所得」が、事業所得と呼ばれることが多いです。
似ているけれど事業所得には含まれない項目
基本的に「個人事業で得た収入」のほとんどは事業所得として確定申告する必要がありますが、以下3種類については事業所得ではない所得区分として申告しなければなりません。
- 不動産所得
- 山林所得
- 雑所得
不動産所得
「不動産所得」とは、土地や建物などの不動産の貸付けや、不動産の上に存在する権利の貸付けなどにより発生した所得です。事業として不動産の貸付けを行った場合でも、事業所得ではなく不動産所得として申告しなければなりません。
山林所得
「山林所得」とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することで発生した所得です。この所得区分で注意する点として、「山林取得から5年以内」に伐採や譲渡した場合の所得は、事業所得または雑所得として申告する必要があります。
雑所得
「雑所得」とは、他9種類の所得区分に該当しない所得です。例えば、副業等で記事などの原稿を書き、原稿料として収入を得た場合は、事業所得ではなく雑所得として申告します。
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事業所得の計算方法
事業所得の金額は「総収入金額-必要経費」で計算します。
総収入金額
「総収入金額」には、事業により生じる以下の収入が含まれます。
- 売上金額
- 金銭以外の物・権利その他の経済的利益の価額
- 商品を「自家用に消費または贈与した場合」の商品の価額
- 商品などの棚卸資産が損失を受けたことで支払いを受ける保険金・損害賠償金など
- 空箱や作業くずなどを売却した代金
- 仕入割引やリベート収入
必要経費
「必要経費」には、収入を得るために「直接必要な」費用のみが含まれます。例えば以下のような費用が必要経費として認められます。
- 売上原価
- 給与、賃金
- 地代、家賃
- 減価償却費
事業に関係しそうなイメージがある費用でも「事業に直接は関係しない費用」については、必要経費として認められません。
事業所得として収入に計上すべき時期
事業内容によっては、収入を計上するタイミングがわかりにくいケースもあるでしょう。国税庁のHPでは以下の内容で解説しています(各ケースの例外については国税庁のHPを参照してください)。
収入の内容 | 収入に計上すべき時期 |
---|---|
棚卸資産の販売(試用販売及び委託販売を除く) | 販売した棚卸資産の引渡しがあった日 |
棚卸資産の試用販売 | 相手方が購入の意思表示をした日 |
棚卸資産の委託販売 | 受託者がその委託品を販売した日 |
請負契約 | 目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日または約した役務の提供を完了した日 |
人的役務の提供(請負を除く) | 人的役務の提供を完了した日 |
金銭を除く資産の貸付けによる賃貸料 | その年に対応するものにかかる収入金額についてはその年の末日 |
金銭の貸付けによる利息手形の割引料 | その年に対応するものにかかる収入金額についてはその年の末日 |
事業所得の必要経費について
事業所得は、収入額から必要経費を差し引いて申告できます。ただし、適切に経費を申告しないと修正申告の必要性などの手間やトラブルの原因となりますので注意しましょう。この項目では、事業所得の必要経費について以下の3つを解説します。
- 算入できる金額
- 算入時期
- 注意事項
必要経費に算入できる費用
事業所得において「必要経費」として算入できるのは、以下の費用です。
- 総収入金額に対応した売上原価
- 売上原価以外の総収入金額を得るために「直接必要」として支払った費用
- その年に生じた販売費・一般管理費
- その他の業務上の費用の額(その年に生じたもの)
必要経費の算入時期
必要経費として申告できる金額は「その年において債務の確定した金額」です。つまり、その年に支払った費用であっても、その年に債務が確定していないものは、必要経費に含めることはできません。 逆に、まだ金銭を支払っていない場合でも、その年に債務が確定していれば、必要経費に含めることができます。
この「その年に債務が確定している」とは、以下の3つの要件をすべて満たす場合を意味します。
- その年の12月31日までに債務が成立している
- その年の12月31日までに、その債務に基づく具体的な給付すべき原因となる事実が発生している
- その年の12月31日までに必要経費の金額を合理的に算定できる
必要経費に算入する場合の注意事項
国税庁のHPでは、以下の2つの注意事項を挙げています。
家事関連費
「家事関連費」は、業務を遂行するために直接必要であったことが明らかに区分できる金額だけ計上できます。
家事関連費とは、「自宅兼店舗の家賃」のように、事業用とプライベート用の両方の目的で支払っている費用のことです。全額を必要経費としては計上できず、「事業のために支払った」と明確に区分できる部分だけを、必要経費として計上できます。
必要経費にならないもの
国税庁のHPでは、以下の支払いを「必要経費として認められない例」として紹介しています。
- 生計を一にする配偶者や親族に支払う地代・家賃
- 生計を一にする配偶者や親族に支払う給与・賃金(青色事業専従者給与は除く)
- 業務のための借入金の利息
- 所得税・住民税
- 罰金・科料・過料
- 公務員に対する賄賂
まとめ:事業所得は「事業から生ずる所得」である
本記事では、事業所得について解説しました。以下の内容を押さえておきましょう。
- 事業所得は「事業から生ずる所得」だが不動産所得や山林所得は含まない
- 事業所得は事業収入から必要経費を差し引くことができる
- 収入や経費は「算入すべき時期」などに注意が必要
基本的に「事業で生じた売上などの収入」が事業所得ですが、不動産所得などのように事業所得のように見えても別の区分で申告すべき所得もあります。算入時期や経費に含まれない費用など、適切な事業所得の申告には確認事項も多いです。
余計な手間を増やさないためにも、不明な点や疑問点があれば、納税関係の窓口に問い合わせて確認しておきましょう。