税金対策を行うのは法人や個人経営者だけで、サラリーマンである自分には関係ないと思いがちですが、サラリーマンでもさまざまな控除を利用することで、所得税を抑えることができます。
この記事では、おもにサラリーマンや個人事業主が行う所得税対策について解説しています。所得税は払いすぎている可能性があるため、節税方法を知り、対策を行いましょう。
所得税とは?
所得税とは、個人の1年間の所得に対してかかる税金のことです。サラリーマンの場合、給与収入から「給与所得控除」を差し引いた「給与所得」の金額に対して所得税率をかけて算出されます。税率は累進課税制度となっているため、給与所得が増えるに従って段階的に税率(5%~45%)も上がっていきます。
サラリーマン(給与所得者)の所得税は給与天引き
サラリーマンの所得税は、勤務先が計算して納税しており、これを「源泉徴収制度」といいます。給与所得の金額が確定してから税金を収めるわけではなく、毎月先払いをしているため払いすぎた分は年末調整で払い戻されることになっています。
ただし、サラリーマンでも確定申告をすることで所得税が安くなることがあります。控除の申請に確定申告が必要な場合があるため、自分が利用できる控除を把握しておくことが大切です。
個人事業主(フリーランス)は確定申告が必要
個人事業主は、自分で確定申告を行って税金を納める義務があります。サラリーマンと異なる点は、所得控除のほかに経費も差し引けることです。売り上げから所得控除と事業にかかった経費を差し引いた課税所得に税率を適用して所得税が算出されます。
確定申告とは
確定申告とは、所得税を自分で計算し、国に申告することです。1年に1回行われ、確定申告により所得税の金額が決定されると、住民税などの他の税金額や社会保険料なども決まってきます。税金を払いすぎている場合には、返還されることもあります。
また、申告方法には、青色申告と白色申告があります。
青色申告
青色申告とは、日々の取引を帳簿に記帳し、その記録に基づいて確定申告を行う方法です。
記帳の形式には「複式簿記」と「簡易簿記」があり、どちらかを選べます。「複式簿記」は取引をいくつかの科目に分けて記入する方法ですが、「簡易簿記」はお小遣い帳のように取引を1つの科目で記入する方法です。
青色申告では、10万円以上30万円未満の高額なものでも一括で経費にすることが可能で、さらに赤字を3年間繰り越しできるなどのメリットがあります。
白色申告
白色申告は、とくに届出等は必要なく、青色申告の申請書を提出しなかった人も自動的に白色申告となります。青色申告のような控除はなく、簡易簿記による記帳が必要ですが、簡単なので簿記の知識は必要ありません。
確定申告を行う時期
確定申告を行う時期は、原則として毎年2月16日から3月15日とされています。もし、土曜日や日曜日、祝日と重なる場合は、翌日の月曜日が期限日となります。
誰でもできる所得税対策
確定申告をすると、さまざまな控除が受けられ、所得税を抑えることができます。サラリーマンでも年末調整では処理できない所得控除があるため、確定申告をすることで税金が戻ってくる場合もあります。
どのような控除があるか以下に紹介しますので参考にしてください。
医療費控除
医療費控除とは、医療費が年間10万円以上になった場合に受けることができる控除です。サラリーマンは確定申告が必要で、1年間のレシートや領収書を保管しておき「医療費控除の明細書」に必要事項を記入の上、提出します。セルフメディケーション税制との併用はできないので注意しましょう。
「1年間に支払った医療費」から「保険金などの各種補てん金」を差し引き、さらに10万円を引いた額が控除されます。上限は200万円までです。
セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制とは、対象となる医薬品の購入が12,000円を超えた場合、超えた部分の金額が88,000円を限度として控除される制度です。対象の商品にはパッケージやレシートに表示があるため確認しましょう。「セルフメディケーション税制の明細書」に必要事項を記入し、確定申告を行うことで適用されます。
雑損控除
雑損控除とは、自然災害や火災、盗難、横領などによって損失があった人が受けられる控除です。サラリーマンは確定申告が必要となります。住宅、家財、衣服など生活に必要な財産に損害があった場合に適用され、別荘や事業用資産は対象になりません。控除額は資産の損害金額によって決定されます。
寄附金控除
寄付金控除とは、国や地方自治体、特定の法人などに寄付を行ったときに受けられる控除です。ふるさと納税もそのなかのひとつで、サラリーマンは確定申告が必要となります。寄付金の合計額が2,000円を超えた金額が控除額となりますが、所得額などにより上限があるため必ず確認を行いましょう。
特定支出控除
特定支出控除とは、給与所得者の業務に必要な経費が一定額超えると控除を受けられる制度です。その年の給与所得控除額の半分を超えた金額が経費として控除されます。通勤費や研修費、資格取得費などが対象ですが、会社から補填されるものは除きます。
手続きに際しては「給与所得者の特定支出控除に関する証明書」を勤務先に記入してもらう必要があり、支出に関する証明書を添付の上、確定申告を行います。
繰越控除
繰越控除とは、株取引などの投資で損をした場合、その年の配当所得から控除される制度です。翌年から3年間は繰越で控除が可能になります。利用するには確定申告が必要ですが、サラリーマンなど確定申告の義務がない人は、5年前までさかのぼって申告することができます。
ふるさと納税
ふるさと納税とは、寄付金控除のひとつで、自分が在住している自治体に支払う税金の一部を応援したい市町村に寄付できる仕組みです。金額に応じて名産品などが贈られることで話題になっています。自治体によっては寄付金の使用用途が選べる場合もあり、寄付の合計金額から2,000円を差し引いた額が控除されます。
個人事業主は確定申告が必要ですが、確定申告が不要なサラリーマンであればワンストップ特例制度を利用することで確定申告が不要になります。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅の購入やリフォームをした場合に受けられる控除です。10年間にわたって控除を受けられ、土地と建物両方が対象となります。また、対象となる物件の種類として、一戸建て、マンション、新築、中古などは問いません。
サラリーマンは初年度のみ確定申告が必要ですが、翌年からは必要書類を提出することにより年末調整で手続きを行えます。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、生命保険や医療保険などを支払っている場合に受けられる控除です。「一般生命保険料控除」「介護保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類があり、契約時期によって新契約と旧契約に分けられます。
それぞれ計算方法が異なり、新契約では上限が12万円、旧契約では上限が10万円となっています。保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」が必要です。
地震保険料控除
地震保険料控除とは、地震保険を支払っている場合に受けられる控除です。5万円が上限となっており、保険会社から送付される「地震保険料控除証明書」が必要となります。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除とは、掛け金を支払っている場合に受けられる控除です。その年に支払った掛け金全額が控除されます。サラリーマンが企業型確定拠出年金に加入していて、給与天引きされている場合は手続き不要です。個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している場合は「小規模企業共済等掛金払込証明書」を年末調整の際に提出することで適用となります。
寡婦控除・寡夫控除
寡婦控除・寡夫控除とは、配偶者と離婚や死別し、条件を満たした際に受けられる控除です。シングルマザーやシングルファザーへの負担を軽くするための制度で、性別や所得などにより控除額が決定されます。
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サラリーマンの年末調整で処理できない控除
所得税対策を行うために利用できる控除について前述しましたが、医療費控除、セルフメディケーション税制、雑損控除、特定支出控除、繰越控除、寄付金控除については年末調整で処理できないため、自分で確定申告をしなければなりません。また、住宅ローン控除は、初年度のみ確定申告が必要です。
個人事業主(フリーランス)の所得税対策
個人事業主(フリーランス)については確定申告が義務となっていますが、所得税を抑える方法があります。個人事業主(フリーランス)に該当する人は、特有の控除をチェックして、所得税を減らす対策を行いましょう。
経費を計上する
個人事業主(フリーランス)は、仕事を行う上で支払った費用を経費として申告できます。ただし、領収書やレシート、明細書などは保管が必要です。また、セミナーや懇親会への参加、冠婚葬祭などで領収書がない場合は出金伝票として残しましょう。その他、仕事場が自宅と兼用の場合は家賃や光熱費、通信費など仕事に直接必要と区分できれば「家事按分」で計上できます。
青色申告を利用する
確定申告で青色申告を選択することで「青色申告控除」が受けられます。青色申告をするためには届け出が必要で、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。電子帳簿保存をし、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用して申告することで65万円の控除が受けられます。
小規模企業共済等掛金控除を利用する
小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業共済や個人型確定拠出年金(iDeCo)を支払っている場合に受けられる控除です。小規模企業共済は、積み立てによる退職金制度で、事業を廃業するときに受け取れる仕組みです。1年間に支払った掛け金全額が控除されます。
所得税対策のその他のポイント
その他の所得税対策として、控除金額が増えて所得を減らせるケースがあります。ちょっとしたことで所得税対策につながるため確認しておきましょう。
扶養控除は所得(収入)が高い方につける
扶養控除とは、高校生以上の子供や親族を養っている場合に受けられる控除です。夫婦共働きの場合、給与所得(収入)が高い方の年末調整に扶養控除を記入しましょう。理由は、給与所得(収入)が高いと税率も高くなるためです。給与所得(収入)が高い方で扶養控除を受けることで、給与所得が減り、税率も低くなります。
税金をクレジットカードで支払う
所得税はクレジットカードで支払いをすることが可能です。クレジットカードで支払うと、カードのポイントを貯められてお得になります。さらに、インターネットを通して支払いができるため、自宅に居ながら時間を気にせずに利用できます。
税金対策をする際の注意点
税金対策を行う際には、自分自身の所得税額や必要性に応じた節税対策が必要です。毎年支払っている所得税よりも控除額の方が多くなったところで節税にはなりません。節税目的でふるさと納税や個人型確定拠出年金(iDeCo)などを利用するときは、本末転倒になっていないか注意しましょう。
また、個人事業主(フリーランス)の場合には、確定申告を行わないのはもちろんのこと、申告ミスが罰則につながることもあります。もし、脱税と判断されてしまうと「延滞税」や「加算税」を支払わなければなりません。うっかり間違ってしまったとしても所得を操作することは違法になるので注意しましょう。
まとめ
サラリーマンでもさまざまな控除を利用することで、所得税対策が行えることを解説しました。所得税や控除について理解することで、正しく節税を行いましょう。また、税金対策を行うことも大切ですが、将来に向けて資産形成を検討することも重要です。