休眠預金になってしまうと、その口座のお金は民間公益活動に活用されます。
民間公益活動に活用されることから、休眠預金になってしまうと口座のお金が没収されてしまうと考えている人も多いのではないでしょうか。
しかし、休眠預金になっても口座のお金は没収されません。
この記事を読むと、休眠預金とは何か、休眠預金になってしまう条件は何か、そして休眠預金にしないための方法がわかります。
ぜひ休眠預金について正しく理解し、資産管理について考えるきっかけとしてください。
休眠預金とは?
休眠預金とは、2009年1月1日以降に取引した預金等であって、そこから10年以上取引のない預金等のことです。
金融庁の掲載資料(※)によれば、2014年度から2016年度まで毎年1,200億円程度の休眠預金が発生していたと記載されています。
そのうち500億円程度は後で払戻しされていますが、実質、毎年700億円ほど放置されてしまっているお金があるのです。
このような背景から、放置されたお金を社会に役立てようとする趣旨で休眠預金等活用法が制定されました。
※参照:金融庁「『民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律』の概要」(PDF)
参考として、以下に休眠預金等活用法における「休眠預金等」の定義を引用します。
この法律において「休眠預金等」とは、預金等であって、当該預金等に係る最終異動日等から十年を経過したものをいう。
引用元:e-Gov法令検索(総務省)「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」
休眠預金になってしまう「10年以上取引がない」とは?
休眠預金等の定義は「10年以上取引がない」預金等と紹介しました。ここでは、「10年以上」と「取引がない」ついて具体的に解説していきます。
10年以上
「10年以上」は、最後の取引が2009年1月1日以降の場合にカウントを始めます。
例えば、2008年12月31日に最後の取引をして、そこから10年間使っていなくても休眠預金等には当たりません。
一方、2009年1月1日に取引をして、そこから2019年になるまで放置してしまえば、休眠預金等とされてしまいます。
そのため、早い場合で2019年1月から休眠預金等が発生しているのです。
参考:金融庁「休眠預金等活用法Q&A」(PDF)
取引がない
「取引がない」とは、基本的には入出金がないことです。
ただし、厳密には「預金等を利用する意思を表示したと認められる一定の事由などがないこと」を指します。これを異動と呼び、具体的には以下のように規定されています。
- 省令事由:預金等を利用する意思を表示したものと認められる一定の事由
- 認可事由:金融機関が個別に認可を受けた事由
省令事由と認可事由は、省令(休眠預金等活用法施行規則)で以下のとおりです(一部)。省令事由を考慮すれば、やはり「入出金」という認識で良いでしょう。
省令事由 | 認可事由 |
---|---|
引出し(出金) |
通帳の発行 通帳の記帳 通帳の繰越 残高照会 契約内容変更 顧客情報変更 借入金返済 口座としての利用申出 |
参照:e-Gov法令検索(総務省)「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律施行規則」
休眠預金になっても引き出し(復活)はいつでも可能
2009年1月1日以降に入出金を行い、その後10年間放置してしまえば休眠預金等となってしまいます。
ただ、休眠預金等として民間公益活動に活用されても、一定の手続きを行えば実質的にお金を引き出せます。
実際に引き出す際には、通帳やキャッシュカードがなくても、身分証明書等があれば引き出し可能です。詳細は金融機関へ問い合わせましょう。
「実質的に」といったのは、実際には預金保険機構に「休眠預金等代替金」を請求するためです。このとき、通常どおりの利子も含めて受け取れます。
以上のように、休眠預金はお金を引き出す権利が消滅するわけではないため、没収でも時効でもありません。
ただし、やはり休眠預金となるとATMでは引き出せず、金融機関の窓口で手続きを進めなければならない点に注意が必要です。
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休眠口座にしないためには?
休眠口座となると、没収されないにしても、お金を引き出すための手間がかかってしまいます。そこで、休眠口座にしないためにはどうすれば良いのでしょうか。
休眠口座にしないための方法を3つ紹介します。
- 方法①使わない預金口座のお金は移動や解約しておく
- 方法②金融機関に登録している情報を更新しておく
- 方法③定期的に資産の棚卸しをする(資産目録)
方法①使わない預金口座のお金は移動や解約しておく
使わない預金口座のお金は、移動するか、口座ごと解約しておきましょう。
「生活費口座」「貯蓄口座」「子どものための口座」などで口座を複数持っておくことも考えられますが、口座が多ければ多いほど管理も大変です。
また、休眠預金等になってしまい、その預金残高が1万円未満なら金融機関からの郵送による通知も来ません。例えば9,999円あっても、休眠預金等の対象となっているかわからないのです。
お金を放置してしまわないよう、預金口座の整理を検討してみましょう。
方法②金融機関に登録している情報を更新しておく
金融機関に登録している情報を更新しておくことも、休眠預金等になってしまわないための対策です。
残高1万円以上で9年放置していれば、放置後10年6ヶ月になるまでの間に金融機関から郵送または電子メールで通知が来ます。しかし、金融機関に登録している住所やメールアドレスが最新の情報でなければ、その通知も届きません。
通知が届けば休眠預金にはされないので安心です。また、金融機関にもよりますが、顧客情報を更新すること自体が異動事由になる場合もあります。
引っ越したら、住民票の手続きだけでなく、金融機関にも手続きを行うことを意識しておきましょう。
方法③定期的に資産の棚卸しをする(資産目録)
休眠預金とは直接関係ありませんが、定期的に資産の棚卸しをすることもおすすめします。
資産の棚卸しをすることで、今保有している資産にはどのようなものがあり、あわせていくらになるのかなどがわかります。
例えば、以下のような資産等を「資産目録」としてまとめてみてはいかがでしょうか。退職時や60歳以降まで受け取れないものもありますが、参考にしてみてください。
- 現金
- 預金・貯金
- 有価証券(株式・債券・投資信託・FXなど)
- 自動車
- 不動産
- 生命保険の解約返戻金(予定)
- 学資保険などの積立金
- 社内預金
- 勤労財形貯蓄
- 組合預金
- 退職一時金(予定)
- 確定拠出年金評価額(個人型・企業型)
もし住宅ローンや消費者金融などの借入金があれば、あわせてまとめておくと良いでしょう。本来の用途とは異なりますが、裁判所の「資産目録一覧(※)」も参考になります。
※参考:裁判所「資産目録一覧」(PDF)
休眠預金と雑益預金の違いとは?
最後に、休眠預金と雑益預金の違いを紹介します。
これらは一定期間以上取引がなかった場合の取り扱いという点では共通していますが、以下のような違いがあります。
- 休眠預金:10年以上入出金のない「預金」で、「社会のため」に使われる
- 雑益預金:預金残高を銀行の負債から利益にするときの「勘定科目」で、「銀行の利益」になる
以上のように、言葉としては預金を指しているのか会計上の科目を表すのかでまったく異なるものです。また、誰のお金になってしまうかという点で、社会のためか銀行の利益となるかで異なります。
休眠預金等活用法の施行によって、休眠預金は銀行が自由に使えるお金ではなくなったといえるでしょう。
まとめ:休眠預金はいつでも引き出せるが資産管理は重要
休眠預金とは、2009年1月1日以降に入出金(異動)を行ったが、最後の入出金(異動)から10年が経過した預金のことです。
休眠預金になっても金融機関の窓口で手続きをすればお金は戻ってきますが、手続きに手間がかかることには注意しておきましょう。
また、休眠預金にしてしまわないためにも、そうでなくても資産(お金)の管理は重要です。本記事で紹介したように、資産目録を作ってみると良いかもしれません。
以下の記事で、資産目録と関連の深いバランスシート(貸借対照表)の作成方法などを解説しています。ぜひあわせて参考にしてみてください。
関連記事:家計のバランスシートを作って資産形成をすすめよう!作成方法や注意点を解説