相続を受ける人が障害を持っている場合、相続税の控除を受けられることはご存じでしょうか。遺産の額によっては、税金の支払いの負担が大きくなることもあり、さまざまな「税額控除」が用意されています。
障害者控除の適用には条件や手続きが必要なため、正しく対応ができないと、本来支払わなくてもいい税金を払ってしまうことになりかねません。
この記事では、控除を受けるための条件や手続き方法、注意点を説明します。きちんと理解して制度を有効に活用しましょう。
相続税の節税対策の一般的な内容については、以下の記事で解説していますので、ご確認ください。
相続税の障害者控除とは
障害者控除とは、障害を持っている相続人が85歳未満のときに適用される、税額控除の特例措置です。被相続人が、障害を持つ人の介護をしていた場合、亡くなったあとに暮らしの負担が大きくなるケースもあるでしょう。
残された人の生活の負担をすこしでも軽減するために、障害者控除が設けられています。相続を受ける人が障害を持っている場合に適用される制度で、被相続人(亡くなった人)が障害者であっても適用されません。
相続税の障害者控除を受けるための4つの要件
障害者控除は、以下の4つの要件を満たすと適用されます。すべての要件を満たさないと適用されないため、申告する時はよく確認しましょう。
- 日本国内に住所がある
- 相続や贈与を受けた時に障害者である
- 法定相続人である
- 障害者が相続財産を取得する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.日本国内に住所がある
遺産相続で財産を取得したときに、税額控除が適用されるのは国内に住所がある人です。
また、相続人が一時居住者(※1)の場合は、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人(※2)である場合も控除は適用されません。
(※1)一時居住者とは、相続開始の時において在留資格を有していて、開始前の15年間の内、国内に住所があった期間が合計10年以下である人のことをいいます。
(※2)非住居相続人とは、相続が開始した時点で、国内に住所がない被相続人で、①開始前10年以内に国内に住所を有しているが、日本国籍は有していない人②開始10年以内に国内に住所を有していない人をいいます。
相続人が外国に居住している場合については、下記をご確認ください。
参考:国税庁No.4138「相続人が外国に居住しているとき」
2.相続や贈与を受けた時に障害者である
相続や贈与を受けたときに障害者であれば、控除を受けることができます。要件は、「一般障害者」と「特別障害者」に分けられ、それぞれ控除される金額がことなります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
一般障害者(障がい者)
一般障害者の定義は主に以下の通りです。
- 児童相談所、知的障碍者更生相談所などで重度の知的障碍者とされた人以外である
- 精神障害者保健福祉手帳に記載されている障害等級が2級または3級である
- 身体障害者手帳に記載されている障害等級が3級から6級程度までである
他にも細かい要件があるため、詳しくは下記をご覧ください。
参考:国税庁「第19条の4《障害者控除》関係(一般障害者の範囲)」
特別障害者(障がい者)
特別障害者の定義は主に以下の通りです。一般障害者と比較しても障害の程度が重く、適用される控除額も大きくなります。
- 児童相談所、知的障害者更生相談所などで重度の知的障碍者とされている
- 精神障害者保健福祉手帳に記載されている障害等級が1級である
- 身体障害者手帳に記載されている障害等級が1級から2級程度までである
他にも細かい要件があるため、詳しくは下記をご覧ください。
参考:国税庁「第19条の4《障害者控除》関係(特別障害者の範囲)」
3.法定相続人である
相続を受ける人は、被相続人の「法定相続人」であることが要件です。
主に、配偶者や子、父母や兄弟姉妹などの血縁関係がある人をさします。たとえば、被相続人が友人に遺産を相続する場合、障害を持っていても控除を受けることはできないため、障害者控除を受けられません。
入籍していない事実婚の場合は、要件を満たさないため、控除は受けられません。一方で、入籍している期間の制限はないため、入籍している場合には数カ月であっても適用されます。
配偶者控除と併用することもできるため、対象の人は以下の記事もご覧ください。
4.障害者が相続財産を取得する
相続によって財産を取得する人が障害者の場合に、控除が適用されます。相続は放棄できますが、放棄した場合は当然控除も適用されません。
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障害者控除の計算方法
控除される金額は、相続人の年齢によって異なります。計算方法は以下の通りで、申告書にも記入する必要があるため、よく確認しましょう。
- 一般障害者:(85歳になる年齢ー相続開始時点の相続人の年齢)×10万円
- 特別障碍者:(85歳になる年齢ー相続開始時点の相続人の年齢)×20万円
1年未満の期間が発生した場合は、切り上げて1年として計算します。
相続税額より障害者控除の控除額が大きい場合
控除額が、相続税額より大きい場合は、控除額が引ききれないことがあります。その場合は、差額を扶養義務者(※1)から差し引きできます。申告書を作成する時に記入する必要があるため、差額の差し引きができないかの確認は忘れずにおこなってください。
(※1)扶養義務者とは、配偶者や直系血族、兄弟姉妹、3親等内の親族の内一定の者が対象です。
相続税の障害者控除の手続き方法
障害者控除を受けるためには、どのような手続きが必要になるのか確認しましょう。障害者本人が手続きをおこなえない場合も想定されるため、対象となる親族の人もきちんと確認する必要があります。
手続きの流れ
手続きは、相続税申告書第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」を作成して税務署へ提出します。
申告書には控除額を計算して記入する箇所があるため、前述の計算方法を参考に記入してください。
必要書類
相続税申告書を提出する際に、障害者手帳のコピーなど、障害の程度を証明する書類が必要になります。
よく要件を確認したうえで、正しく計算し、申告書を作成しましょう。
以前も障害者控除を適用したことがある場合はどうなる?
障害者控除は複数回受けることができるため、以前控除を受けたことがあっても、適用されます。しかし、2回目以降の控除額は少なくなり、1回目時点で控除の額を使い切っている場合は適用されません。
控除されていない金額が残っている場合は、2回目に控除される金額を計算して、少ないほうの金額が控除額として適用されます。
たとえば、先に父親が亡くなり相続を受け、そのあと母親がなくなった時も相続を受けた場合は、2回目も控除が受けられるかどうかの確認が必要となります。対象となる場合は、前回どれくらい控除されたのか確認したうえで、申告を行いましょう。
まとめ:相続税の障害者控除制度を理解し有効に活用しましょう
障害者が遺産を相続したときに税金の支払いの負担を抑えるために、控除制度があります。適用を受けるためにはいくつか要件を満たす必要があり、障害の程度によっても控除される金額が異なります。
もし亡くなった人に介護してもらっていた場合、その後の障害を持っている本人や周りの人の生活の負担が大きくなることも予想されるため、できるだけ出費は抑えたいものです。
制度を正しく理解していないと、余計な税金を払うことになりかねません。もしもの時のために制度について正しく理解して、有効に活用しましょう。