「配偶者や高齢の親を社会保険の扶養に入れたら、お得になるのでは」と考える方もいるでしょう。しかし、実際に自分の配偶者や親を扶養に入れるための条件や手続きに関して、具体的には知らないというケースも。内容がわからないままでは、行動に移せません。
そこで本記事では、社会保険の基本事項の確認と、扶養を認定されるための2つの条件、扶養手続きの届出方法をご紹介します。自分の配偶者や親を扶養に入れられるかどうかがわかり、必要書類や届出先も本記事で確認できるため、スムーズに扶養の手続きができます。
社会保険の基本をおさらい
まず、社会保険の基本事項についておさらいしておきましょう。社会保険とは、生活困窮に陥らないように最低限の保障をする公的制度です。民間保険と比較すると、負担費用が安く保障範囲が広いため、多くの人にとってのセーフティーネットであると言えます。
ここでは、社会保険について簡単に解説します。制度をいまひとつ理解ができていないという方は、ぜひ確認してください。
社会保険は5つの保険で構成されている
社会保険は、次の5つの保険で構成されています。
- 健康保険
- 介護保険
- 公的年金(国民年金保険、厚生年金保険)
- 労災保険
- 雇用保険
医療や介護を受けられ、健康な生活を保障する「健康保険」と「介護保険」、そして老後の生活を保障する「公的年金」の3つは死ぬまで受けられる保険です。
「労災保険」と「雇用保険」によって、労災に遭った場合の保障や失業中の保障など仕事に関わる保障が受けられます。 社会保険についてさらにくわしく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
社会保険の扶養に入ることで被扶養者の保険料負担はなくなる
配偶者や親を社会保険(健康保険)の扶養に入れると、被扶養者である配偶者や親の保険料負担がなくなります。扶養内であれば、医療サービスや保険給付を受けられるのでお得です。
保険料負担をせずに済むため、その金額分を老後資金や教育資金、資産運用に活用することもできます。
扶養を認定されるための2つの条件とは
「親や配偶者が社会保険の扶養に入れるかどうかわからない」と疑問をお持ちかもしれません。社会保険(健康保険)の扶養に認定されるためには、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 被扶養者の年間収入は原則130万円未満であること
- 扶養する本人との続柄が3親等以内であること
扶養と認定されるための条件は大きく分けると、この2つですが、状況によって細かい条件が異なります。この2つの条件について説明するので、あなたの状況に照らし合わせてご確認ください。
①被扶養者の年間収入は原則130万円未満であること
被扶養者の年間収入が原則130万円未満であることが扶養の条件です。ただし、被扶養者が60歳以上または障害者である場合は、年間収入180万円未満であることが必要です。
さらに、被扶養者が主に扶養者によって生計を維持されている事実が、扶養と認定される条件として求められます。具体的には、年間収入の基準額を満たしたうえに、同居・別居のいずれかによって次の条件を満たす必要があります。
- 被扶養者と扶養者が同居:被扶養者の年間収入が扶養者の年間収入の2分の1未満
- 被扶養者と扶養者が別居:被扶養者の年間収入が扶養者からの仕送り額未満
年間収入は年収とイコールではない
「年間収入」と聞くと「年収」の省略形と理解しがちですが、実は定義が異なります。年間収入とは、被扶養者に該当または認定された時点以降の年間見込み収入額を指します。
たとえば、7月から扶養に入れたい家族の収入が1~6月分の合計で80万円だった場合、年間収入130万円を満たしたと誤解しがちです。しかし、実際は年間分で換算すると年間収入160万円となり、扶養の条件を満たしません。年間収入は1年分の収入見込み額であり、実際の年収とは異なるとご理解ください。
被扶養者が同居している場合は扶養者の収入の半分以上でも扶養が認められる場合がある
被扶養者が扶養者と同居している場合は、扶養者の収入の2分の1以上の年間収入を得ていても扶養に認定されるケースもあります。次の2条件を満たす状況であることが必要です。
- 被扶養者の年間収入が扶養者の年間収入を下回る
- 扶養者が世帯の生計維持の中心的役割を果たしている
2つの条件を満たしたうえで、日本年金機構が世帯の生計状況を総合的に判断した結果、被扶養者として認定される可能性があります。
②扶養する本人との続柄が3親等以内であること
扶養に入れられる家族は、扶養者本人との続柄が3親等内である必要があります。続柄ごとに1〜3親等に分類をすると以下のとおりです。
1親等 | 2親等 | 3親等 |
---|---|---|
本人の両親・配偶者の両親・子(※配偶者は0親等) | 本人の祖父母・配偶者の祖父母・本人の兄弟・配偶者の兄弟・孫 | 本人の曾祖父母・配偶者の曾祖父母・本人の叔父叔母・配偶者の叔父叔母・本人の甥姪・配偶者の甥姪・ひ孫 |
なお、0~2親等の続柄なら別居していても扶養に入れることが可能です。
しかし、3親等にあたる親族および扶養者の事実婚相手の親と子は、同居し家計を同じくしている場合のみに、扶養対象と認められます。
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扶養の手続きには届出が必要
家族が扶養の条件を満たしていることが判断できれば、次は扶養の手続きです。
扶養の手続きを行なうには、勤務先を通じて日本年金機構へ書類を提出する必要があります。扶養の届出に関し、次の2点を確認しておきましょう。
- 必要な書類
- 提出期限
必要な書類や期限は、被扶養者の状況によって異なるので、くわしく説明します。
必要な書類
扶養の届出の正式名称は「健康保険被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届」です。この書類に、以下5点のうち必要な書類を添付して提出します。
- 被保険者の謄本や住民票
- 被扶養者の退職証明書や確定申告書の写し
- (非課税の収入がある場合)受取金額のわかる書類
- (被扶養者と別居している場合)仕送り金額が確認できる通帳の写しや現金書留の控え
- (被保険者と内縁関係の場合)両人の戸籍謄本または住民票
それぞれの添付書類について見ていきましょう。
被保険者の謄本や住民票
被保険者(扶養者)と被扶養者の続柄を確認するために、被保険者(扶養者)の戸籍謄本(または抄本)が必要です。扶養者が世帯主で被扶養者と同一世帯で生活している場合は、扶養者の住民票も添付します。
ただし、次の2つの条件を満たしている場合であれば、謄本(抄本)および住民票は不要です。
- 扶養者と被扶養者両方のマイナンバーが届に記載されている
- 被扶養者の続柄が届の記載と相違ないと事業主が確認した旨を届に記載している
被扶養者の退職証明書や確定申告書の写し
被扶養者の収入要件を確認するために、被扶養者の退職証明書や確定申告書の写しが必要です。退職したために扶養に入る場合は退職証明書を、自営業や不動産業による収入を有して扶養に入る場合は確定申告書の写しを添付します。
被扶養者が、所得税法の規定上の控除対象配偶者や扶養親族になっている場合、事業主の証明があれば収入要件の添付書類は不要です。
(非課税の収入がある場合)受取金額のわかる書類
被扶養者に、障害年金や出産手当金、失業給付金など非課税の収入がある場合は、受取金額がわかる通知書のコピーなどが必要です。届に添付して提出してください。
(被扶養者と別居している場合)仕送り金額が確認できる通帳の写しや現金書留の控え
被扶養者と別居している場合は、仕送り金額を確認するために預金通帳の写しや現金書留の控えが必要です。ただし、被扶養者が16歳未満または16歳以上の学生である場合は不要です。
(被保険者と内縁関係の場合)両人の戸籍謄本または住民票が必要
扶養者と被扶養者が内縁関係にある場合は、両方の戸籍謄本(抄本)または住民票が必要です。住民票は扶養者の世帯全員分(コピー不可・マイナンバーの記載がないもの)を添付します。
提出期限は所属する健康保険組合に確認しよう
提出期限は、所属する健康保険組合に事前に確認しておきましょう。
協会けんぽの提出期限は、扶養の事実が発生してから5日以内であり、他の健康保険組合も5日以内のケースが多いです。しかし、会社が所属する健康保険組合の規定を確認して正確な情報を入手しておきましょう。
まとめ:扶養手続きは速やかに実施しよう
家族を社会保険の扶養に入れる条件や手続きについて解説しました。以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
- 被扶養者の収入は原則130万円未満
- 扶養にできるのは3親等まで
- 必要書類と提出期限を確認しておく
配偶者や親が扶養に入ることで実質の手取りが増え、家計のゆとりが増えます。家族を扶養に入れるとお得なので、扶養手続きは速やかに行ないましょう。