近年、資産形成としてNISAを活用する人が増えています。NISAとは「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。
たしかに素晴らしい制度ですが、NISAにはメリットだけでなくデメリットも数多くあります。状況によっては、「メリットがなくデメリットしかない」と感じる人もいるかもしれません。
そこで本記事では、NISAの種類と制度概要とメリット・デメリットを解説した上で、どのような人にNISAがおすすめなのかを解説します。
NISAとは?NISAの種類を解説
NISAには、一般NISA、つみたてNISAそしてジュニアNISAの3種類があります。
ジュニアNISA制度は、新規の口座開設が2023年までとなっているため対象から外し、一般NISAとつみたてNISAの2種類の制度と、2024年から始まる新NISAの解説をします。
一般NISA
一般NISAとは、株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できる税制優遇制度のことです。2014年から「貯蓄から投資へ」を促進するために創設された制度で、2022年3月末現在、725万口座が開設されています。
一般NISAの概要は以下の通りです。
非課税保有期間 | 5年間 |
---|---|
年間非課税枠 | 120万円 |
投資可能商品 | 上場株式・ETF・公募株式投資信託・REIT等 |
途中換金・資金の引き出し | 可能 |
参考:日本証券業協会「NISA講座開設・利用状況調査結果(2022年3月31日現在)について」
参考:金融庁「一般NISAの概要」
投資可能な商品は限られており、上場株式、ETF、公募株式投信、REITなどに投資可能です。通常は運用益に対して約20%の税金が課せられますが、NISAによって得られた利益は非課税となるため、税制上の優遇が受けることができます。
つみたてNISA(積立NISA)
つみたてNISAとは、一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できる税制優遇制度のことです。一般NISAよりも長期的な資産形成を促進するために2018年に創設された制度で、2022年3月末現在、396万口座が開設されております。
つみたてNISAの概要は以下の通りです。
非課税保有期間 | 20年間 |
---|---|
年間非課税枠 | 40万円 |
投資可能商品 | 長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託 |
途中換金・資金の引き出し | 可能 |
一般NISAと同様に、通常は運用益の約20%に対して課せられる税金が非課税となる税制上の優遇を受けられます。年間の非課税枠は40万円と一般NISAと比較して3分の1ですが、非課税期間は一般NISAの4倍の20年間で、少額から長期の資産形成を始めることが可能です。
2024年から始まる新NISA制度
一般NISAについては、2024年から制度内容が変更となります。より多くの国民に積立・分散投資による安定的な資産形成を促す観点から、積立投資の非課税枠が20万円新設され、従来の一般NISAの非課税枠が年間102万円に縮小されることになりました。
つまり、1階部分の積立投資でより安定的な資産形成をしつつ、2階部分で従来の一般NISAと同様の資産運用を行うことができる、2階建てのNISA制度に生まれ変わるのです。
なお、新NISA制度で変更になるのは現在の一般NISA制度で、つみたてNISA制度は引き続き現在の制度が継続されます。
NISAのデメリット|どんな時に損が発生する?
冒頭で、NISAにはデメリットも数多く存在するとお伝えしましたが、実際にどのようなデメリットがあるのでしょうか。一般NISA、つみたてNISAのどちらにも共通するデメリットを紹介します。
デメリット①: 元本割れする可能性がある
NISAは銀行預金などと異なり、元本保証がされていないため運用結果によっては元本割れする可能性があります。また、一般NISAは非課税期間が5年間と短く、元本割れをした状態で課税口座への移管もしくはロールオーバーする必要があります。
もし、元本割れした状態で課税口座に移管した場合は、その時点の金額が新規購入単価とみなされるため、その後に元の金額に戻ったとしても、移管時点からの上昇分は課税対象です。
ロールオーバーとは
NISAによる5年間の非課税期間の終了後に、保有している金融商品を翌年の非課税投資枠へ移管することができる制度です。
デメリット②: 損益通算・繰越控除ができない
NISAでは、損益通算・繰越控除ができません。口座を複数持っている場合、通常は、片方の口座で生じた損失ともう片方で生じた利益を相殺することが可能です。
例えば、A口座で30万円の損失が生じ、B口座で100万円の利益が生じた場合、100万円-30万円=70万円に対して約20%の税金がかかります。しかし、NISA口座で30万円の損失が生じ、もう一方の口座で100万円の利益が生じた場合は、損益通算をすることができないので、100万円に対して約20%の税金がかかります。
また、1年間で運用損が発生した場合は、翌年以降に3年間まで損失を繰り越し、翌年以降の運用益と相殺すること(繰越控除)が可能ですが、NISA口座の運用損は翌年以降に繰り越すことができません。
デメリット③: 新規投資のみが対象
NISAは、新規投資のみが対象です。つまり、すでに保有している株式や投資信託の金融商品をNISA口座に移管することはできません。
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NISAのメリット
先にデメリットばかりを紹介しましたが、NISAにはメリットもたくさんあります。NISA全般のメリット、そして一般NISA特有のメリットを解説します。
NISA全般のメリット①:運用益が非課税
NISAの最大のメリットは運用益が非課税という点です。冒頭でも簡単に説明しましたが、NISAは株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税であるため、最大600万円の非課税枠があります。
一方、つみたてNISAは一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税であるため、最大800万円の非課税枠があります。
NISA全般のメリット②:いつでも引き出し可能
NISAはiDeCoや定期預金、個人年金保険などの他の資産形成方法とは異なり、いつでも投資した金額や利益を引き出すことができます。
そのため、急なライフイベントなどで資金が必要となった際に、NISA口座から資金を引き出すことが可能です。
一般NISAのみのメリット①:非課税期間終了後ロールオーバーができる
一般NISAは5年の非課税期間終了後にロールオーバーをすることで、非課税期間を伸ばすことが可能です。
例えば、100万円で購入した金融商品が5年後に160万円、10年後に200万円になるとします。5年後にロールオーバーをしなければ、5年後の160万円までは非課税ですが、5年後から10年後の5年間で増えた40万円に対しては税金がかかります。一方で、ロールオーバーを行うことで、10年後の資産200万円に対して全く税金がかかりません。
なお、ロールオーバーを行った年は、ロールオーバーを行った金額分の非課税枠を使うことになるため注意が必要です。
一般NISAのみのメリット②:配当金が非課税
株式を保有していると、多くの銘柄で配当金が支払われます。NISA口座で保有している商品で得た配当金は非課税です。
そのため、譲渡せずに保有しているだけでもNISA口座のメリットを享受することができます。
NISAをおすすめする人
NISAのメリットとデメリットを考慮して、NISAをおすすめする人の特徴を紹介します。
①投資経験がある人
NISAは投資経験がある人に向いている制度といえます。NISAのメリットを享受するためには、株式や投資信託など金融商品を購入する必要があり、金融商品に関してある程度知識が必要です。
また、金融商品の価格は日々変動します。全く投資経験がない人は、日々の価格変動でストレスを感じることがあるかもしれません。一方、投資経験がある人は、金融商品の価格の上昇、下落を経験しているので、中長期的に戦略を考えながらNISAのメリットを享受することができる可能性が高いです。
以上のことから、投資経験がある人にはNISAをおすすめします。
②数年~数十年で資産形成したい人
NISAはいつでも引き出しできるメリットがありますが、もともと中長期的な資産形成を目的に創設された制度です。数か月後に使用することが決まっている資金をNISA口座で運用してしまうと、資産がマイナスになっているときに引き出すといったことにもなりえます。
そのため、数か月や1、2年で使用予定のお金を投資するのではなく、数年~数十年後のために資産形成をしたいと考えている人に向いている制度といえます。
③口座開設手続きに抵抗がない人
NISA口座を開設するには、口座開設手続きが必要です。NISA口座の開設は、証券口座を開設している証券会社で行う必要があるため、証券口座を持っていない証券会社でNISAを開設する場合は、証券口座の開設とNISA口座の開設が必要です。
証券口座開設とNISA口座開設を同時に行う手続きや、ネットで完結する手続き方法等が浸透してきていますが、それでも時間と手間はかかります。
また、口座を開設するということは、口座の管理も必要になるため、手間を考慮した上で口座開設手続きに抵抗がない人にNISAをおすすめします。
まとめ:NISAのメリット・デメリットを理解し、自分に向いているか検討しよう
「NISAはメリットしかないからやらなければいけない」「NISAはデメリットしかないからやらないほうがいい」など様々な意見がありますが、どれが正しいということはありません。なぜなら、その人の置かれている状況や考え方によって異なるためです。
NISAのメリットとデメリットを理解した上で、NISAが自分の資産形成に必要な制度か考えてみてください。