教育費や住宅ローンの支払いに苦戦する子育て世代にとって、親からの贈与はありがたいものです。贈与を検討している人の中には、「贈与税はいくらかかるの?」「自分で手続きできるかな?」「贈与税の計算方法は?」などの疑問を感じている人もいるでしょう。
この記事では、相続税の計算方法と注意点について解説します。想定以上の税金がかかり後悔することのないように、事前に贈与税額を計算して贈与の可否判断をしましょう。
誰に贈与するかで贈与税率が異なる
贈与税の税率は10%から55%ですが、誰に贈与するかによって税率が異なります。まず贈与税の種類とその税率について解説します。
贈与する相手によって特例贈与と一般贈与に分類
贈与は、贈与する相手によって「特例贈与」と「一般贈与」に分類されます。
特例贈与とは「父母や祖父母など」から「18歳以上の子や孫」への贈与のことです。特例贈与以外の贈与は全てが、一般贈与になります。配偶者や18歳未満の子・孫への贈与は、一般贈与です。
18歳という年齢は、財産の贈与を受けた年の1月1日現在の年齢で判断します。2022年4月の成年年齢引き下げに伴い、特例贈与の対象となる子や孫の年齢は「20才以上」から「18歳以上」に引き下げられました。
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
特例贈与と一般贈与の税率
贈与税率は、所得税や相続税と同じように累進課税です。累進課税とは、課税価格が高額になるほど税率が高くなる課税方法をいいます。特例贈与と一般贈与の税率は次の通りです。
特例贈与にて課税価格が600万円の場合、200万円以下の部分に対しては税率10%、200万円超400万円以下に対しては15%、400万円超に対しては20%の贈与税がかかります。課税価格600万円全てに対して、20%の税率がかかる訳ではありません。
課税価格が「300万円以下、または3,000万円超」ならば特例贈与と一般贈与の税率は同じですが、「300万円超3,000万円以下」の場合、特例贈与の方が、税率は低くなります。
贈与税の計算手順
次に、贈与税の計算手順について解説します。
手順①:課税価格を計算する
贈与税の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された金銭などです。1年ごとに贈与税を計算し課税するため、「暦年課税」と呼ばれます。贈与税を支払うのは、贈与した人(贈与者)ではなく贈与を受けた人(受贈者)です。
課税価格は、1年間の贈与額を集計し「基礎控除額110万円」を差し引いて計算します。贈与額が1年間で110万円以下なら、課税価格は0円になるため贈与税はかかりません。
- 課税価格=1年間の贈与額合計-基礎控除額(110万円)
手順②:速算表を使って贈与税を計算する
課税価格を算出したら、先ほどの章で求めた税率をかけて、贈与税額が計算できます。ただし、課税価格が高額の場合は計算が煩雑になるため、速算表を使って計算しましょう。計算方法は次の通りです。
- 贈与税額=課税価格×税率-控除額
速算表は、特例贈与と一般贈与で異なり、下記の通りとなっています。
贈与税の計算シミュレーション
モデルケースを使って贈与税を計算してみましょう。
シミュレーション①:特例贈与の贈与税
18歳以上の成人が、父から同じ年に300万円の贈与を2回受けた場合をモデルケースとして贈与税を計算します。贈与額から基礎控除額を差し引いて課税価格を計算し、特例贈与の速算表を用いて計算します。
- 1年間の贈与額の合計=300万円+300万円=600万円
- 課税価格=1年間の贈与額の合計(600万円)-基礎控除額(110万円)=490万円
- 贈与税額=課税価格(490万円)×税率(20%)-控除額(30万円)=68万円
シミュレーション②:一般贈与の贈与税
中学生の子どもが、祖父から600万円の贈与を受けた場合をモデルケースとして贈与税を計算します。18歳未満の孫への贈与となるため、一般贈与の速算表を用いて計算します。
- 1年間の贈与額合計=600万円
- 課税価格=1年間の贈与額合計(600万円)-基礎控除額(110万円)=490万円
- 贈与税額=課税価格(490万円)×税率(30%)-控除額(65万円)=82万円
前述の特例贈与と贈与額は同じですが、贈与税額は一般贈与の方が高くなります。
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贈与税を計算するときの注意点
贈与税を計算するときの注意点を3つ紹介します。
注意点①:不動産や株式の贈与は評価が必要
注意点の1つ目は、不動産や株式など金銭以外で受けた贈与については贈与された財産の評価が必要となることです。評価方法は財産の種類によって細かく定められていて、複雑な計算が必要なケースもあります。
財産ごとの評価方法の詳細は、国税庁のホームページなどで確認しましょう。一定の知識がないと評価額を計算できないこともあるため、状況によっては税理士などの専門家に相談することも検討してみましょう。
注意点②:贈与税がかからないケースがある
注意点の2つ目は、贈与税のかからないケースがあることです。贈与額が1年間で110万円以下のケース以外にも、贈与税に関するさまざまな非課税制度が設けられているからです。
たとえば、一定要件を満たす住宅資金や教育資金の贈与などに対する非課税制度などがあります。
参考:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
参考:国税庁「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
注意点③:相続時精算課税制度では贈与税ではなく相続税を支払う
注意点の3つ目は、相続時精算課税制度を利用した場合、贈与税ではなく相続税の支払いが必要になる可能性があることです。
贈与には、暦年課税と相続時精算課税の2種類があります。相続時精算課税制度とは、一定要件を満たす贈与について、申告により2,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。
ただし、相続が発生した場合、相続財産に贈与された財産を加えた金額に対し相続税がかかります。贈与時の税負担を避けられるメリットがありますが、相続時には暦年贈与した場合より大きな税金がかかるケースがあるため注意が必要です。
2,500万円を超える贈与を受けた場合、超過分に対して20%の贈与税がかかります。なお、相続時精算課税制度は2024年1月改正予定で、通年で2,500万円までの非課税枠に加え毎年110万円の基礎控除が受けられるようになります。
まとめ:贈与税の計算方法を理解して効果的に相続対策を!
贈与を受けると、贈与税の支払いが必要になるケースがあります。贈与を受けた人が自分で申告しなければならないため「贈与税の申告が必要かどうか」、「贈与税額がいくらになるか」などを知るために、贈与税の計算方法を理解しなければなりません。
また、相続対策として贈与税の基礎控除を活用する場合、事前に相続税と贈与税を計算してどちらが有利かを確認する必要があります。計算を間違えると、かえって税金が増えるケースもあるからです。効果的な相続対策を行うために、贈与税の計算方法をきちんと理解しましょう。