これから公務員になろうとする人や、既に長年、公務員として勤めてきた人にとって、公務員の退職金の額は気になるところでしょう。
この記事では、公務員の種別に基づく退職金の目安について解説します。また、定年退職後の余生を過ごすために必要となる金額相場を紹介するので、老後資金を準備するための参考にしてください。
なお、一般企業の退職金制度については、以下の記事を参考にしてください。
公務員の種別とは
公務員には、大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」の2つがあります。公務員の違いについては、行政機関のひとつである人事院において、次のように解説されています。
国家公務員は、国に勤務する公務員で、地方公務員は、地方自治体(都道府県や市町村など)に勤務する公務員です。両者はともに憲法の定める全体の奉仕者として勤務するものですが、国家公務員は国全体に関わる業務を行うのに対し、地方公務員は自治体の住民サービスなどの業務を行います。
引用元:人事院「おしえて!人事院/Q11国家公務員と地方公務員はどう違いますか。」
地方公務員と国家公務員の違いについて、以降で詳しく解説します。
地方公務員
地方公務員は、地方自治体(都道府県や市町村など)に勤務し、自治体の住民サービスなどの業務を行います。令和3年4月1日現在、約280万人が該当しています。
都庁や県庁、市役所など、私たちが日常生活で接する公務員の種別は、地方公務員が多いのではないでしょうか。ほかにも、警察官の多くも地方公務員です。
国家公務員
国家公務員は、国に勤務する公務員で、国全体に関わる業務を行います。以下資料によれば、約58.9万人が該当し、公務員全体の2割弱を構成しています。
なお、国家公務員はさらに一般職と特別職に分けられますが、その違いに関しては以下の解説を参考にしてください。
参考:人事院「おしえて!人事院/Q12国家公務員には一般職の国家公務員と特別職の国家公務員があるとのことですが、どう違うのですか。」
両者の主な違い
地方公務員は、応募し採用された地域において行政サービスを行います。
一方、国家公務員は、中央省庁など政府の根幹を支える機関に採用され、行政だけでなく立法・司法の機能を担うこともあります。
一般に、国家公務員試験のほうが地方公務員試験より難しいとされています。理由は、国家公務員のほうが求められる役割が広いからといわれます。
地方・国家公務員の退職金の統計情報
地方公務員と国家公務員の退職金の統計情報をもとに、退職金の平均額を紹介します。
なお、それぞれの集計母体が異なるため、集計期間や集計条件に多少の差異があることにご了承ください。
また、各資料内では退職金でなく「退職手当」と記載されていますが、本記事以降では「退職金」と表記します。
地方公務員の退職金目安
地方公務員の場合、25年以上勤続して定年退職した時の退職金の平均額は約2,109万円です。
また、自己都合退職などを含めた場合の退職金の平均額は約1,275万円です。
出典:総務省「給与・定員等の調査結果等/地方公務員給与実態調査」
国家公務員の退職金目安
国家公務員の場合、定年を迎えた時の退職金の平均額は約2,142万円です。自己都合退職などを含めた場合の退職金の平均額は約1,023万円です。
それぞれの平均額を比較した表は次の通りです。
定年退職時 | 全体平均額 | |
---|---|---|
地方公務員 | 約2,109万円 | 約1,275万円 |
国家公務員 | 約2,142万円 | 約1,023万円 |
一般に、年収などの待遇は国家公務員のほうが良いとされています。
しかし、安定している地方公務員は離職率が低いとされ、全体平均額で比較すると勤続年数が長くなりやすい地方公務員のほうが退職金の全体平均額は大きいです。
共通する退職金制度のポイント
公務員の退職金制度は、一般企業に勤める会社員の退職金制度とは異なり、それぞれ以下の法律で定められています。
- 国家公務員の退職金:「国家公務員退職手当法」
- 地方公務員の退職金:「地方自治法」に則り、各地方公共団体の条例により定められる
公務員の退職金は法律で定められているため、一般企業の退職金制度のように退職金制度の有無について企業ごとに心配する必要がないといえます。
地方公務員、国家公務員どちらを選んだとしても、定年退職時の退職金の目安は約2千万円と考えられます。また、自己都合などで途中で離職した場合には、在籍年数やそれぞれの規則に応じて計算される金額が支給されることになるでしょう。
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公務員の退職金だけでは余生への準備に足りない場合もある
余生への準備に向けた老後資金を考えるうえで、仮に公務員定年退職時の退職金が2千万円あったとして、余生を送るのに十分といえるのでしょうか。退職金だけでは足りない場合があることについて、一般的な支出額を基に解説します。
定年退職後の余生に必要な金額の目安
一般的な支出額の目安に関して、公益財団法人生命保険文化センターの2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」(2022年10月発行)によれば、夫婦2人の老後の最低日常生活費と余暇を充実させてゆとりある老後生活費は次のように公表されています。
- 夫婦2人の老後の最低日常生活費 月額23.2万円
- ゆとりある老後生活費 月額37.9万円
出典:公益財団法人 生命保険文化センター「生活保障に関する調査」
また、日常生活費だけでなく、夫妻で余暇を過ごすための旅行費のほか、勤労世帯よりも病気やけがの出費が発生しがちである点は、留意しておくべきでしょう。
老後資金に関する試算
年金収入の目安については、約25万円(年300万円)です。
そのため、多くの場合、年金収入で最低の日常生活費は賄えますが、月額37.9万円のゆとりある水準には達していません。つまり、定年退職から数年のうちに老後資金を切り崩し始める可能性があることがわかります。
出典:公益財団法人 生命保険文化センター「ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査」
※「公的年金収入年額については、300万円以上が20.6%と最も多い。」との最頻値を使用
ゆとりある暮らしをするなら、毎月12.9万円の赤字のため、その分を退職金から補填する必要があります。赤字分を退職金だけで補填する場合、2千万円退職金があったとしても、13年未満で老後資金が枯渇します。
定年退職後の不足額を補う3つの方法
老後資金が足りない場合の対応について、3つ紹介します。
方法①:マネープランの相談先を見つけ貯蓄計画を立てる
老後資金や、定年退職後の収支について信託銀行などの相談先がない人は、FP(ファイナンシャル・プランナー)に相談するのが良いでしょう。FPは、預金をしている銀行のほか、保険会社や証券会社、不動産投資会社などに在籍していることが多いです。
FPは年単位ごとの収支のシミュレーションを行ってくれますので、ライフステージに応じた必要額を示し、マネープランを説明してくれることでしょう。「年金がなくなるかもしれない」など不確かな情報に踊らされることがないよう、確かな知識を有した相談先を持つことは重要といえます。
方法②:定年退職後の再雇用、アルバイト
定年退職後も、年金収入以外の収入を確保しておくことが、最も基礎的な備えになるでしょう。一般的な収入例は、定年退職後の再雇用、アルバイトがあります。年金支給が始まる年齢に達した後であれば、社会とのつながりを重視して働き続ける人も少なくありません。
方法③:在職中の副業、投資
ほかの対応として、在職中の副業、投資により老後資金を拡充しておくことも考えられます。ただし、副業規定違反になってしまうおそれがありますので、以下記事をご参考にしてください。
まとめ:自分の退職金制度を把握し、余生への準備を始めよう
公務員の定年退職金は、統計からある程度予測することができます。自分の受け取れる退職金の額について早期に把握し、現役世代のうちにどれだけ老後資金を形成する必要があるのか試算しておくことが望ましいです。
仮に老後資金と年金収入だけでは収支が合わないと判明したとしても、マネープランについて専門家に相談することで、余生への準備や収支の軌道修正を図ることができるでしょう。
老後のマネープランについて、気軽に専門家に相談して定年退職後の余生へ備えてみてください。