老後の生活に不安を抱く人は多く、特に老後のお金に関する悩みは尽きません。若いときから無計画に過ごしていると、いざ老後を迎えたときに生活できないほどの困窮状態に陥る可能性があります。この状態のことを老後破産といいます。
本記事では、老後破産の主な原因を解説した上で、老後破産に陥らないためのさまざまな対策をご紹介します。
豊かな老後生活を送るためにも、記事を参考にしながら老後に向けた資金準備を始めましょう。
老後破産とは
定年退職後や老後に経済的に困窮して破産する、もしくは破産せざるを得ない状況を老後破産といいます。「老後」とは、一般的に退職して給与収入がなくなり、公的年金やこれまで貯めた預貯金で生活を送る時期を指します。
老後破産に陥ると生活保護を受給するケースも少なくなく、厚生労働省の生活保護の被保護調査によると、令和4年10月時点で生活保護を受けている高齢者世帯の総数は約90万世帯で、生活保護受給世帯全体の半分以上を占めているのが現状です。
なお、生活保護を受給するためにはいくつかの条件を満たす必要があります。そのため、実際はもっと多くの高齢世帯が老後破産に陥っている可能性があります。
老後破産は想像以上に身近な問題であり、現役時代から有効な対策を講じることが非常に重要です。
老後破産に陥る主な原因
ここでは、老後破産に陥る主な原因を7つご紹介します。それぞれの原因の詳細を知り、該当する項目がないか確認しましょう。
原因①住宅ローンの返済などの住宅費負担
退職後も住宅ローンの残債があるなど、収入が現役世代と比べて減っている中での住宅費の負担は、老後破産を招く原因の1つです。
マイホームの購入が遅くなると、定年までに住宅ローンを完済できないケースも多く、その場合は老後資金や退職金の一部をローン返済に充当することになるでしょう。
ローンを完済していても、修繕費の積み立てや管理費の負担は継続するため、老後に必要な住宅費については事前にしっかりと考慮しておくことが大切です。
原因②教育費負担
教育費が想像以上にかさみ、子どもが独立したとしても定年までに十分な老後資金を貯められないことも考えられます。また、近年は晩婚化が進み、定年を迎えても子どもが学齢期の真っ只中という世帯も少なくなく、老後のための貯蓄が教育費に回ってしまうかもしれません。
老後破産を防ぐためにも、教育費の概算を把握するとともに、教育費の準備と並行して老後資金の準備も始める必要があります。
原因③医療費や介護費用の増大
医療費や介護費用の増大が原因で、老後の資金計画に大きな影響が出る可能性があります。
年を重ねるにつれて病気やケガのリスクが高まり、通院や入院の回数が増えれば増えるほど医療費も膨らんで介護費用がかかるケースもあるでしょう。
また、自分自身の医療費だけでなく、配偶者や親の医療費負担が発生することもあり、医療費や介護費用の増大は老後破産の原因の1つといわれています。
原因④収支バランスの崩れ
セカンドライフを迎えると、これまでよりも収入が下がる人がほとんどでしょう。老齢年金を受け取ったとしても、これまでより収入が下がることが多く、現役時代と同様の生活を続けていると収支バランスが崩れることが想定されます。
セカンドライフが何年続くかは誰にも分からないため、長生きは老後破産の原因の1つともいわれています。そのため、老後を楽しみつつ、収入に見合う生活を心がけましょう。
原因⑤退職金の使い込み
退職金を老後資金に充当しようと考える人は多いでしょう。しかし、せっかく退職金としてまとまったお金を受け取ったとしても、計画的に使わなければ老後破産を招く一因になります。
退職金の使い込みを避けるためにも、適切な方法で退職金を運用したり、退職金を計画的に取り崩すことが大切です。
原因⑥熟年離婚
近年は、熟年離婚という言葉を耳にする機会が増え、老後を迎えてから離婚する人も少なくありません。
離婚によって、想定していた毎月の収支が大きく悪化することにもなりかねず、熟年離婚はその後の生活に大きな影響が生じます。
原因⑦詐欺被害
老後破産を招く原因には、詐欺被害も考えられます。振り込め詐欺といった特殊詐欺の被害に遭うと、まとまった金額をだまし取られるかもしれません。
豊かなセカンドライフを送るための大切な資金が詐欺被害に遭わないよう、怪しい話には乗らない、必要に応じて家族や警察に相談するなどを心がけることが大切です。
老後破産しやすい人の特徴
老後破産と聞いても、「まだまだ先の話だから大丈夫だろう」と考えるかもしれません。しかし、若い頃からの習慣やお金の使い方は簡単に変えることができず、老後を迎えると途端に生活が苦しくなることも想定されます。
老後破産しやすい人の特徴を知り、いまから改善できることがないかチェックしましょう。
特徴①貯蓄・資産が少ない
貯蓄や資産が十分でない人は、老後破産しやすい人といえます。貯蓄や資産が少ないと、急な入院・手術時の医療費負担が重く感じられるほか、失業や休職時には途端に経済的に苦しくなるでしょう。
ある程度の貯蓄・資産がなければ突発的な事態に対応できず、収入が現役時代よりも少ないことが多いセカンドライフにおいては、貯蓄・資産の少なさが老後破産に直結するといえます。
特徴②老後に必要な費用を把握していない
老後2,000万円問題が話題になるなど、「老後にいくら必要か」という問いについて一度は考えたことがあるのではないでしょうか。生活費などから必要額の概算が算出できる一方で、老後にどれくらいのお金が必要なのかきちんと把握していない人も少なくありません。
セカンドライフで必要なお金を把握することで、逆算して現役時代から準備することが可能です。老後資金は人それぞれですので、まずは老後に必要なお金を計算してみましょう。
特徴③固定費が高額
いくら収入が多いとしても、生活にかかるお金が高額であれば貯蓄は難しいです。特に家賃などの固定費が高いと、毎月同じ金額を支払い続けることになり、家計への影響が大きいといえます。
そのため、普段から固定費を確認し、必要以上に高額な費用を支払っている項目がないか確認することが大切です。固定費の見直しは、老後破産を避けるだけでなく家計改善にも大きな効果が見込めます。
お金が貯まりやすい仕組みを早くから作ることで老後資金も計画的に準備できるでしょう。
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定年前にできる老後破産を避けるための準備
では、老後破産を避けるためにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは、定年前にできる具体的な準備方法を解説します。貯蓄や老齢基礎年金の受給額を増やすなど、安定した老後に向けて今から備えておくと安心です。
準備①貯蓄を増やす
老後を迎えて経済的に困窮することがないよう、貯蓄を増やす必要があります。貯蓄を増やす方法として、財形貯蓄制度や銀行の積み立て式定期預金などが選択肢です。
財形貯蓄制度
利子等に対する非課税措置や財形持家融資を利用できるといったメリットのある財形貯蓄制度は、一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の3つに分類できます。
毎月一定額を給与天引きで積み立てていく貯蓄制度であるため、将来のライフイベントに合わせて計画的な貯蓄ができる点が大きな特徴です。
銀行の積立式定期預金
財形貯蓄制度は、勤務先が制度を導入していなければ利用できません。財形貯蓄制度が利用できない人や、できるだけリスクを抑えて貯蓄を始めたい人は、銀行の積立式定期預金がおすすめです。
積立式であるため、毎月決まった日に一定額が自動的に引き落とされ、定期預金として運用してくれます。
準備②将来受け取る年金額を増やす
老齢基礎年金額を算出する際に、過去に国民年金保険料の免除・納付猶予や学生納付特例の承認を受けた期間がある人もいるでしょう。
国民年金保険料の免除・納付猶予等が承認されると、承認された期間については年金の受給資格期間に算入されるものの、保険料を全額納付した場合と比較して年金額が低くなります。
そのため、保険料の免除・猶予等が適用された期間の保険料を後から納めることで老齢基礎年金の年金額を増やすことができ、これを追納といいます。
追納すると、社会保険料控除によって所得税・住民税が軽減されるメリットもあります。老齢基礎年金は豊かな老後を送るための資金であり、積極的に追納を検討してください。
準備③私的年金に加入する
将来受け取る公的年金だけでは老後の生活を支えきれないこともあり、私的年金の活用も一案です。
私的年金には確定拠出年金や国民年金基金などがあり、それぞれの詳細を確認した上で必要に応じて加入しましょう。
確定拠出年金
私的年金の1つである確定拠出年金は、拠出された掛金と運用によって得られた利益の合計額をもとに将来の給付額が決まる年金制度のことをいいます。確定拠出年金は、事業主が掛金を拠出する企業型確定拠出年金(企業型DC)と、加入者が拠出する個人型確定拠出年金(iDeCo)の2種類があります。
例えば個人型確定供出年金の場合、加入者が拠出した掛金は全額所得控除の対象であり、給付時も受給方法ごとにそれぞれ所得控除が利用可能です。
国民年金基金
会社員は、国民年金に上乗せする形で厚生年金に加入している一方で、自営業者は国民年金だけにしか加入しておらず、将来受け取る公的年金額に大きな差が生じます。国民年金基金は自営業者など国民年金の第1号被保険者の老後の所得保障の役割を担う仕組みで、掛金の全額が社会保険料控除の対象です。
国民年金基金は1口単位で加入でき、ライフプランに応じた加入ができる点が大きなメリットといえます。ただし、付加年金と国民年金基金は併用できない点には注意が必要です。
今すぐできる老後破産を避けるための対策
20代や30代は、老後を迎えた自分自身の姿をなかなか想像できないかもしれません。また、若い頃は子育てや住宅ローンの返済などで目先の支出が膨らむ時期であるため、老後の資金準備をつい後回しにしてしまいがちです。
しかし、いざ老後を迎えてから慌てることがないよう、今から老後対策を始めることが大切です。ここでは、今すぐできる老後破産を回避するための対策をご紹介しますので、早速実践してみましょう。
対策①不動産を売却する
住宅にかかる費用は非常に大きく、住宅ローンの返済が重荷となって老後破産を招くことも考えられます。住宅ローンや税金の支払いが難しい場合は、任意売却やリースバックといった方法も検討しましょう。
任意売却
不動産の専門家が立ち会った上で、市場価値に近い価格での不動産売却が期待できる売却方法を任意売却といいます。任意売却は不動産を売却しても債務が残る場合に行うものであり、債務の返済と売却が同時であるため不足資金は貯蓄から捻出する必要がある点には注意が必要です。
リースバック
不動産会社などに不動産を売却し、毎月のリース料が発生するものの売却先からのリースという形で不動産を再利用する方法がリースバックです。リースバックすることで、住宅ローンの負担を大きく緩和することができ、不動産を所有していることを原因とした老後破産を避けることが可能です。
対策②さまざまな方法で資産を運用する
「貯蓄から投資へ」の流れが加速している昨今は、さまざまな方法で資産を運用している人も多いでしょう。また、インフレが進行していることを考慮すると、単にお金を貯めておくだけでなく、各種投資方法を用いた運用が重要です。
株式投資
株式投資によって、売買差益(キャピタルゲイン)・配当金(インカムゲイン)・株主優待の3種類の利益を得られる可能性があります。投資の際に、企業が株主に対して、自社サービスの割引券や自社商品を贈る株主優待の内容で銘柄を選ぶことも一案です。
投資信託
ファンドと呼ばれる投資信託は、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめた上で、専門家が株式や債券などに投資する点が特徴です。長期分散投資に適した金融商品であり、投資信託を活用した資産形成を始める人も増えています。
なお、投資信託の運用成果は、市場の環境などによって左右され変動します。つまり、投資信託は株式投資と同様に元本が保証されていない金融商品であり、銀行預金とは異なります。投資リスクについて十分理解した上で投資信託による運用を始めましょう。
不動産投資
投資による運用手法の1つに不動産投資があります。マンションやアパートといった不動産を購入し、運用することで利益を得る方法であり、入居者がいる限り安定した収益を見込める点が大きな特徴です。
家賃収入があれば、公的年金に加えてもうひとつの収入源を確保でき、老後破産を回避するための最適な運用方法の1つといえるでしょう。
対策③収入を増やす
老後破産を避けるための対策の1つに、収入を増やす方法があります。収入を増やすには、現在の勤務先での昇給・昇格を狙うほか、新たな収入源を持つために副業を始めると良いでしょう。
昇格や昇給を目指す
昇格や昇給に伴って、収入アップが見込める人も多いでしょう。そのためには、日々の仕事を通して経験を積みながら、業務に関する資格を取得するなどしてキャリアを積み上げていく必要があります。
転職する
これまでに培ったスキルを武器に、新たな会社に転職することで収入が増えるかもしれません。ただし、転職先によっては年収が下がる可能性もあるため、転職先の給与水準は事前に確認することが大切です。
副業を始める
最近では、本業の傍ら副業を始める人が増えています。本業以外の収入源を持つことで収入アップが期待できるでしょう。ただし、勤務先の就業規則を確認した上で本業に支障が出ない範囲で取り組むなど、副業を始める際は注意が必要です。
対策④健康に留意する
普段から健康を意識した生活を送ることで、医療費や介護費用を抑えることができます。また、健康であれば定年後も働くことで収入を得ることができるなど、健康に留意することは老後破産を回避する方法の1つです。
健康寿命を延ばすことができるよう、適切な体調管理が大切といえます。
対策⑤支出を見直す
漠然と老後資金の不安を抱える人は多いものの、誰もが老後破産を避けたいと思うでしょう。今すぐできる老後対策として、支出を見直すことも非常に大切です。
支出の見直しとして、固定費を確認するほか、家計簿をつけるなどして使途不明金がないかをチェックすると良いでしょう。
支出を見直すことで毎月1万円を新たに捻出できたとすると1年で12万円、10年で120万円の差になり、支出の見直しにできるだけ早期に着手すればするほどその差は大きくなります。
長期目線で、老後資金が貯まる家計を目指しましょう。
まとめ:老後破産を回避すべく今からさまざまな対策を講じよう!
老後破産に陥る原因はさまざまで、老後に必要なお金を把握していない人や貯蓄・資産が少ない人ほど老後破産に陥る可能性は高いです。老後破産は、生活保護の受給につながるケースも少なくなく、老後資金準備は急務といえます。
そのためにも、私的年金への加入を検討するほか、積極的な資産運用といった対策を講じることが大切です。今回の記事を参考にしながら、老後破産に陥らないためのさまざまな対策を実践しましょう。